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#13 九十九家の当主
「メイド…ですか」
「そうだ。まずは主に会ってもらう。まだ確定したわけじゃねぇからな」
玄関のドアは重そうで、アニメかと思うぐらいです。床は綺麗にワックスがけされており、つやつやと光を放っています。
広い室内をまわり、その後、ひとつのドアにつきました。男がノックをして、ドアを開けます。
「君が新しい…井田のところのアンドロイドか」
井田。ああそうです、インターの本名は井田彩音です。
「はい」
「そうか」
四角いメガネに、あったかそうなニットのセーターを着ています。髪の毛は少し茶色寄りの黒色で、長すぎず短すぎずの長さに切られています。20代ほどの男性のようです。
「メイドというのは」
「僕は|九十九律《つくもりつ》、|九十九萬《つくもよろず》の息子だ。九十九家八代目当主だ。聞いたことがないか?『九十九情報網』」
そういえば。インターが使うパソコンは、『九十九情報網』の子会社、『九十九情報機器』製品です。有名なものです。
「九十九…ええ、聞いたことがあります」
「君には今から、ここで働いてもらおうと思う」
「…何故」
「君ほど興味深いアンドロイドは見たことがない。高度な人工知能、滑らかな動き、まるで人間だ。クラック・キング家と知り合いでね。彼らも情報機器を取り扱うからさ」
ふかっとした赤いソファは、なんとも座り心地が良さそうです。しかし、彼・律はそんなことお構いなしです。まるで、これが普通とでも。
「僕のメイドをしてもらいながら、君のことをもっと知ろうと思うんだ。井田氏に訊いても、どうせ何も返ってこないと思うからね。企業秘密だ、と」
「…何故そんなに私を求めるのですか」
「君の仕組みをもっと知りたいんだ。売り出したら、きっと大儲けできるだろうから」
「九十九家の一員として、恥ずかしくないんですか」
「さあね?」
へらへらと調子の良いことばかり言います。
「…貴方たち一家は滅ぶでしょう。そんな教育を受けているんですから」
「そんなこと言っていいとでも?少ししたら君は帰ることになるし、お金だってたくさん払うさ。契約書を作成してもいい」
「メイドなんぞいくらでもいるでしょう?」
「君だからいいんだよ。君の人間性を評価したんだ」
「誘拐されたと訴えます」
「いいよ。警察は名高い九十九家の一員と、無名に等しいロボット作家、どちらを優先するかな?」
彼をきっと睨みつけます。こんな奴が九十九家の当主など、本当におかしなことです。