公開中
何があっても幸せで、在れますように。【後編】
前編↓
https://tanpen.net/novel/92a28a85-def9-4577-8dfe-1da946dcc4b5/
友達に勧められ、歌い手を見始めてから世界が変わった。
部活をやっていない私は、部活動の代わりのようにインターネット上に住み着いた。
私が目を奪われたのは……「すとろべりーぷりんす」通称「すとぷり」。
私のハマり具合は凄まじいものだった。
今まですとぷりを知らなかった人生が損に思えるほど。
1番はメンバー4人……6人の個性。
私が推し始めた時、すでに4人体制だったけど過去の動画を見えれば見るほど6人の魅力に取り憑かれていく。
リスナーさんも多種多様で。楽しみ方も沢山あり、やっぱり年代的には私たちくらいが1番多いけど、老若男女問わず愛されているとはこのことかと実感する。
推し始めて短いながらも6人の絡みがリアルタイムで見て見たいと思う。
まぁ、推しができたところで夢……未来夢って言うか。そのことは変わらない。
ライブに行った夢を見たけど、記憶が薄いため未来夢ではないのだろう。
本当に夢も未来夢も、現実も理不尽だと思う。
でも辛い時は動画を見れば元気になれたし、曲を聞けば背中を押してもらえた。
すとぷりは、当たり前が当たり前じゃないことを教えてくれた気がする。
いつの間にか「ふぁみりー」にもなっていた。
リスナーさんのことも家族と言ってくれる暖かい場所。
そこが私の居場所になっていた。
元親友がつけていたキーホルダーのキャラは、すとぷりメンバーだった。
これをきっかけに元親友と仲良くなれないかなとか思ってしまっている。
でも、仲良くなるためだけに推しているのか。という疑問が湧いてしまった。
今は、すとぷりが心から好きと言える。それが崩れてしまう時が、いつか来てしまうのだろうか。
なにがどう最後になるのかは分からないけど、最後には好きで居れてよかったと思えるのだろうか。
そもそも私は推しがいることを楽しめてるのだろうか。
考えても分からない。なのに分からなくてもいいことは分かってしまう。
でも、好きと言う気持ちは溢れるばかりで、毎日見れば見るほど魅力に落ちていく。
---
今日も親友の夢を見た。親友は1人で居た。私は友達と。
手を伸ばせば届く距離。なのに……私は手を伸ばさなかった。
1人で居る親友と目が合い、そっと目を逸らした。
あぁ、なんで私は手を伸ばさなかったのだろう。これは現実になってしまうのだろうか。
これまで「また仲良くしたい」と思っていた気持ちさえも嘘なのだろうか。
本当に何もかも分からない。
いっそ「もう無理」と逃げ出してしまった方が楽なんじゃないか、何度考えたか分からない。
でも、無慈悲にも毎日何も変わらないまま、似たような日々を繰り返す。
---
最近は友達といる時間も苦しい。それは……元親友が1人でいることが多いから。
前までは休み時間になる度にすぐ友達が寄ってきていたのに。
彼女の方を見るとすぐに目を逸らされてしまうけど、最近は「助けて」と言うような思いも感じる気がする。
まぁ、私の無駄なお節介なのだろうけど。でも違和感を感じるのも事実だった。
この前見た未来夢の「親友が1人でいる」と言うのは真実になっているし、「手を伸ばさない」も事実になりつつある。
怖かった。ただ元親友と離れてしまうことが怖かった。
いつの間にか季節も流れ、2学期も終盤に差し掛かろうとしていた。今年度中に仲直りできなければ、もう無理だろう。
神様がくれた唯一のチャンス。同じ学校で、同じクラスになる。それを逃すわけにはいかないのに踏み出せないもどかしさ。
勇気が無かった。そんな時にまた未来夢を見た。
---
少し前に見た夢と似たような夢。
親友とスマホを覗き込んで笑っていた。
スマホの中で動いているのはバーチャル姿の「すとぷり」だった。
「〜〜〜〜〜〜しました!!」
親友と目を合わせて笑う。
今度は、親友の顔がぼやけている。
最近はあまり親友の顔を見ていなかったかもしれない。
確かに思い出そうとしても思い出せない。
親友との記憶は小学生で止まったまま。
でも、目を合わせることも、笑い合うこともできた。
どうか、これが現実になりますように……。
---
6時間目が終わった。昨日見た願いも込めた未来夢が頭で渦巻いていたせいで、上手く授業に集中できない。
書き終わらなかったノートにペンを走らせてなんとか書き終える。
はぁ……。声にならないため息を吐く。
HR終了から5分ほどしか経っていないのに、もう誰もいない教室をあとにした。
昇降口ではニヤニヤしている友達2人がいた。
「ねぇねぇ!めっちゃビッグニュース!」と言って、そこで見せられた動画は……、
--- 昨日未来夢で見た動画と同じだった。 ---
「紅白歌合戦に出場する事が決定“しました!!“」
間違い無い。文末が昨日見たものと同じだから。全文までは分からなかったけど、メンバーの並び方、このバーチャル姿も見たものと同じ。
正門の方から視線を感じて顔を上げると……元親友がこちらをじっと見ていた。
一緒に元親友と笑い合った夢も正夢にしたかった。
2人には「ごめん」とだけ伝えて、上履きのまま何も考えずに彼女へ向かって走った。
元親友は私から逃げなかった。正直逃げられちゃうと思ってたけど。
「私のこと……覚え……てる……?」と、息を切らしながら聞いた。
何を聞くか全く考えていなかった。仲を取り戻そうとした会話の一発目。なんてロマンチックじゃ無いんだろう。
--- 「忘てるわけないじゃん。」 ---
同じクラスだから、覚えていることが普通だけど、その言葉が何より嬉しかった。
鼻の奥がツンとする。泣いちゃダメ。
そしたら、ぽつりと親友が語り始めた。
親友も未来夢が見えること。私も未来夢が見えると知って安心したはずが、次の日に私に裏切られる夢を見たこと。どう思われているか分からなくなって、怖くて、私から逃げてしまったこと。自分が裏切ったようなものなのに、追いかけてもらえるのを期待してしまったこと。謝ることをしなかったり、1人で居ても知らんぷりしたりして「本当に申し訳ない」ということ。
全て私の知らない親友だった。そりゃそうだ。空白が5年近く、5年以上あるのだから。
最近1人でいるのは「ゲーム」の仲間はずれらしい。
それは「しょうがない」と言っていた。
そこには首を突っ込まなかったけど、私は何より感謝を伝えたかった。
キーホルダーのキャラクターに目を奪われたこと。その持ち主が親友だったこと。すとぷりに出会ったこと。もっと早く声をかけたかったけど1歩踏み出せなかったこと。未来夢が背中を押してくれたこと。素敵な推しと出会わせてくれて「ありがとう」ということ。
私にとっての今の1番の幸せはすとぷりだから。それに出会えたのは、彼女のおかげだから。
「感謝されることじゃないよ。運命だよ。」と親友ははにかんでいた。
私はスマホを出して、再生途中だった動画を0秒へ戻して再生ボタンを押した。
--- 私と親友の小学校で止まっていた物語をもう一度始めるように。 ---
「紅白歌合戦に出場する事が決定しました!!」
親友と目を合わせて笑う。
これは夢じゃないよね?
いや、これは現実だ。
なんの確証もないけど言える。
私も、親友も同じ夢の中で囚われていたのだから。
夢だったとしても、別に良い。
夢と知らないままずっと覚めなければそれでいいんだ。
これは幸せで在れるように願って、“夢”を叶えた少女の物語。
END.