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無くし物は何処
放置してすみません!!!!!!!
いやぁ...なんか全体的に暗いです()
なんかもうすっごく暗いです()
「あーっと...質問いいか?」
記憶を失った”マーダー”が、少し申し訳なさそうな笑顔を浮かべながら尋ねる。彼にとって、誰一人として記憶にある人物(骨)がいないという事実が、そんな表情をさせるのだろう。仕方ないと言えば仕方ないが、それでも少し、___いや、今はどうでもいいか。
「オイラのいた世界と、ここは別の世界なんだよな?」
「あぁ...そうだな」
ナイトメアの答えに、サンズはだったら、と続ける。
「オイラの世界はどうなったんだ?」
それは、ひどく残酷な問いだった。
彼の、”マーダー”の世界は、彼が殺したモンスターの塵で溢れている。まさに、|Dust Tale《塵に塗れた世界》。”マーダー”は、虐殺を繰り返すニンゲンを止めるため、自らその道に進んだサンズだ。アイツは、”サンズ”だった頃と変わらない、変わることのできなかった変な優しさのせいで、罪の意識に苦しめられていた。
__僕のように、割り切ってしまえばよかったのに。
なんてこれも、残酷な願いでしかないのだが。でも実際、他の奴らのように心の底から狂ってしまえば、その状況を楽しむことで自分自身を誤魔化す術を見に付けられれば、アイツはあそこまで狂気に呑まれずに済んだのかもしれない。
話が逸れた。とどのつまり、アイツの世界は、無人だと言うこと。その原因は、アイツ自身にあるということ。そしてそのことを知れば、純粋な”サンズ”である彼は、きっと苦しんでしまうということ。
「あー...お前の世界はな...」
同じことを考えてか、言いにくそうにホラーが口を開く。泳ぐ視線は、きっとこのあと何を言って誤魔化すか、考えているんだろう。
「ぜ、全員で旅行に行ってるんですよ!それでマーダー先輩は......、あ」
苦しすぎる言い訳を述べるクロス。それを聞いて”サンズ”は疑わしそうな瞳を向けた。その様子を見て、引き攣った笑みになるクロスとホラー。汗が頬骨を伝った。
「Hehe...そんなに言いにくいのか?嘘吐かなくていいんだぜ?」
流石の勘の良さ。手をひらひらさせながら、”サンズ”は人当たりのいい笑みを浮かべた。
嘘を吐くなと言われても、正直に言えばお前が壊れてしまうのに。だから、誰も何も言えないのに。勘も頭もいい癖に、そんな簡単なことにも気づけないコイツが、心底憎らしい。絶望してほしい訳じゃない。ただ、この空間をどうにかしたくて、コイツが恨むなら僕がよくて、気付けば僕が口を開いていた。
「お前の世界には、誰もいないよ」
「おイ、キラー!!」
エラーの制止する声が聞こえたが、僕は構わず続ける。
「__お前が殺したから、お前の世界には塵ばかりだ」
「っ、は...?」
貼付けた笑顔をそのままに、”サンズ”は影の落ちた瞳で僕のことを見つめていた。
「そ、んな...嘘だろ?オイラが...アイツらを...?」
顔を真っ青にしながら、どうにかして言葉を繋ぐ”サンズ”。その希望を、僕は間髪入れずにぶった切った。
「嘘吐くなって言ったのはお前だろ?事実だよ、紛れも無い」
「...っ、......!!」
僕の冷たい言葉に、”サンズ”は一瞬だけすごく悲しそうな顔をしたあと、どこか合点が言ったように力無く笑った。
「不思議と高いLvとHP...その他ステータス...」
「そして、お前さんらが呼んだ”|マーダー《殺人鬼》”という名前...そうか、そういうことかよ」
頭に手を当て、ひどく憎らしげに呟いたあと、”サンズ”は両手をポケットに突っ込んだ。
この仕草は見覚えがある。サンズが、”ちかみち”する時の仕草だ。
それに気付いたナイトメアが、”サンズ”を引き止めようと口を開く。
「おいお前____」
しかし、待てど暮らせど、”ちかみち”が発動することはなかった。
代わりに起こったのは、耳をつんざくような彼の、”サンズ”の悲鳴だった。
「っ、あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ッッッ!!!!!!!!!!!」
『!?』
空洞となった左目を押さえて、うずくまる”サンズ”。目を押さえる手からは、赤と青の混じった液体がだらだらと垂れ落ちる。
「ハ、どウしタ!?」
「…、まさか!」
僕は驚く面々を背に、”サンズ”に駆け寄る。そして、頬を伝うその液体を舐め取った。
「……魔力だ、コレ」
僕の言葉の意味に気付いたのか、ナイトメアは少し青ざめた顔で口を開く。
「そうか…今のコイツには”左目”がない」
以前も言ったが、僕ら”サンズ”の名を冠するものにとって、左目は命だ。左目によって、重力操作や瞬間移動などの魔法を可能としてきた。左目は言わば、魔力の制御装置。左目を介すことによって、僕達”サンズ”は魔法を行使してきた。
__今の彼には、左目が存在しない。つまり......
「この”マーダー”は、魔法が使えないんだよ」
色の抜け落ちた瞳が、ひどい絶望を滲ませて僕らを見上げた。
「...今のオイラに、左目はないのか」
クロスが持ってきた水を一口飲んで、”サンズ”は小さく言った。それは確認のようにも、どうか嘘だと言ってくれともとれる。
大量の魔力を吸った眼帯は、エラーによって真っ白なものにかえられている。ただ、一度溢れてしまった魔力は収まらず。今も、彼の頬骨を細く伝っている。
貸した服が、僕の物でよかった。
__なんて場違いなことを考えたくなってしまうくらいには、”サンズ”の憔悴しきった様子は酷かった。
「そう、だな...事故があって...」
そんな”サンズ”の背をさすりながら、ホラーは彼の問いに答えた。
「おれもその場に居たんだ。助けられなくて...すまん、」
うなだれるホラーに対して、”サンズ”は優しく言った。
「いや、いいんだ。そーゆーもんだろ」
責めることもしないのか。”サンズ”とは、そう言うものだが。
いつもの諦め癖で、自分が助かるのすら諦めてしまう。あぁ、そう言うところ、本当に________大嫌いだ。
「トりアえズ、状況を整理スるカ」
エラーの言葉に、全員がこくりと頷いた。
「えーっと...マーダー先輩は事故にあって...」
クロスの言葉を、ナイトメアが続ける。
「左目を失った...その影響かはわからんが、記憶も失っている」
「左目がないせいで魔法も使えない...と」
僕がそう締めくくると、六人(骨)の間には沈黙が流れた。
仕方ないだろう。たった数時間の間で、ここまで環境が変わってしまったのだから。情報を整理すると、その異常さが浮き彫りになる。
前みたいには戻れないのかな、なんて考えると、頭がくらくらする。
ひどい沈黙を破ったのは、ナイトメアの声だった。
「とにかく、コイツはサイエンスのところに連れてく」
まぁそれが妥当だろう。他の奴らも、こくこくと首を縦にふった。
「ね、この”サンズ”の呼び方決めない?」
僕がそう言うと、エラーが疑問を口にした。
「なンデだヨ?」
「いやー、コイツは”マーダー”じゃないじゃん?かといって純粋な”サンズ”でもないし...」
「コイツのAUサンズ名を決めるってことか」
「さっすがボス!」
この”マーダー”は、既存の”マーダー”から道を外れている。かといって、”サンズ”とも言えない。AUの観点からいけば、これは”マーダーサンズ”とは別物なのだ。
「ということで名前をつけよーう!」
「何か...キラー先輩テンション高いですね」
訝しげな...いや、これは不信感か、はたまた嫌悪か。そんな瞳を向けて来るクロス。
「あは、こんな状況、こうでもしなきゃやってられないでしょ」
僕がクロスに笑いかけると、クロスは少し青ざめたような表情になった。
...そんなに、下手な笑顔だっただろうか。
「じゃ、オイラにいい感じの名前付けてくれよー」
そう言って、ひらひらと手を振る”サンズ”。もうこの現実を受け入れたのか。相変わらずの諦めの早さだ。
「...じゃあ、___」
そこから、色々と名前の案を出し合う僕達五人(骨)。たまに茶々を入れて来る”サンズ”。この空間が、前のようで少し嬉しかった。
「___記憶喪失...失くす...ロスト...」
僕は続ける。
「あ、ロストでどう?」
「...いいぜ」
僕の問いに答えたのは、意外にも”サンズ”だった。さっきのことも含めて、好感度は最悪だと思ったのだが。よりにもよって、僕のにOKをだすとは。
「じゃ、オイラのことは”ロスト”って呼んでくれよな」
ポケットに手を突っ込んで、へらりと笑う”サンズ”...いや、”ロスト”。その姿が、まるで蜃気楼のように揺らめいて見えた。
*To be continued...*
あああああ...前回の更新から一ヶ月くらい経ってる気がする...
リアルが忙しく...そしてネタにつまり...更新が遅れてしまい申し訳ございませんでした!!!!
とりあえず、第三話終わりです!!
あと二話くらいで終わるかなぁ...終わったらいいなぁ...()
相変わらず重たくてすみません!!!
では、次回、愛の意味を思い出せますように!!