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愛想がなさすぎて孤立した人の話。〜もっと愛想を振りまいておけばよかった〜 第一章 新学期の出来事I 記憶喪失編II
漆黒なる使者
「え…?どなたですか…?」
周りがこの言葉で静まり返ったのが分かった。
「玲奈…!お父さんがわからんのか?」
「玲奈!お母さんは?わからないの?」
お父さんがわからないか、お母さんがわからないかと聞いてくるということは、この人たちは私の両親なんだろう。
「玲奈…。俺は…?圭人だ!わからないのか?」
「けい…と?」
なんか聞いたことがあるような…。私は何を忘れてしまったの?
「あなた達…誰?」
その場にいた3人の表情が凍りついた。
「そん…な……バカな…」
3人が声を合わせて言った。
私はそんなにまずいことを言っただろうか。
過去のことと何があって今こうなっているかは覚えてる。
人の名前だけが思い出せない…。どうなっちゃうの!?
---
あれから数日がたった。
おそらく両親であろう人達と圭人さんと他にも男の子達がお見舞いに来てくれた。
一応今日は学校へ行く。
ドキドキしながら教室の扉を開ける。
「おはようございます。」
もちろん誰も返事をしない。分かりきったことだ。
私は静かに自分の席についた。
「でも、周りの人のこと全部忘れて大丈夫なのかな…?」
そんなことを考えているうちに朝のホームルームの時間が始まった。
えーと多分あの人が担任の先生…だよね?
「じゃあまず朝の挨拶をします。おはようございます。」
みんなが先生に続き、
「おはよーございます。」
と言う。
「先生から連絡があります。えーと…玲奈!ちょっと前へ」
私はなんとなく嫌な予感がした。
「…はい。」
だがまあ断るわけにはいかないので渋々前に立った。
「玲奈はこないだのことで、記憶喪失になってしまったようだ。どうやら、『人』に関することを忘れてしまったみたいだがみんな優しく接してやってくれ。以上…玲奈戻っていいぞ。」
「はい…。」
みんなは小声で何かを話してた。
多分悪口かそれとも疑ってるのか…
キーンコーンカーンコーン
色々考えているうちに1時間目は終わった。
そう思うと同時に誰かが近づいてきたのがわかった。
「ねーぇ?」
は?態度わるっ
「……えーとなんですか?」
一番無難な答え方をしたはず…。
「何?ほんとに忘れたの?」
いやいや、だからそう言ってるじゃん。
「はい…何か用ですか?」
「はーい!みんな注目!」
は!?何してんの!?
「玲奈は嘘ついてみんなの気を引かせようとしてまーす!」
はぁ?何言ってんのこいつ…ていうか誰…。
みんながザワザワし始めた。
みんなからの視線が突き刺さる。
「あの、違います。あと、あなた名前…そもそも誰ですか!?」
私は今更弁明しても無駄だと悟りながらも必死に弁明しようとした。
だって、本当のことだから。
「ほ、ほんとに嘘なんてついてません!」
「何必死になってんの?嘘がバレそうでかわいそ〜。」
「う、嘘じゃない!!」
こいつ…もう何言っても無駄だ。
「じゃあみんなは私の言うことが嘘だと思っておけばいいよ…。」
もっと周りがザワザワし始めた。
はぁ…こいつらバカだな。1人でいた方が楽だ…。
よく周りを見てみると、あいつの声は廊下まで響いていたようで教室の外に人がたくさん集まってきた。
一番ドアに近いところから心配そうに見ている|圭人《かれ》がいた。
そしてこいつもそれに気づいたようで、
「あ、教室の外にいる子達に言うね〜!(笑)」
「はぁ!?ちょっと!!」
私は全力で阻止しようとした。だが私の動きが遅かったようで言われてしまった。
「こいつ記憶喪失とか嘘ついて私たちを知らんぷりするんだよ!サイテーだよね!!」
当然教室の外の人たちもザワザワし始める。
はぁ…これじゃあ終わりがない…。
「はいはい!嘘つきはあなたでしょ!?そんなに私のイメージダウンしたい?」
あえてがっついていくか。自分が嘘つきにはなりたくない。
「そもそもあなたの名前何!?さっきから教えてって言ってるよね?教えてよ。」
|あの子《大嘘つき》との距離を段々と詰めていった。
それが耐えられなかったのかついに名前を言った。
「|響子《きょうこ》よ!|玉木響子《たまききょうこ》!!これでいいでしょ!?」
はぁ、つくづく愚かなやつ…。
「えーと、響子…さん…ね…?」
「そうよ!!」
「ふぅ…」
静かにため息をついた後にこういった。
「それで、そうゆう嘘を広めるのやめてくれる?」
響子…さんは険しい顔をしながら、
「でも、一番最初にクラス全体に言った時にそう思っとけばいいって言ったじゃん?」
といった。
私は堂々とした態度でこういった。
「それは、あの時教室の周りに人が集まってなかったらああいえば区切りがつくでしょ。」
「ふ〜ん。」
「でも私の確認不足だったわね。教室の周りには人溜まり。もっと広まってしまった…。」
響子さんは理路整然と物語る私に腹が立ったようで、
「何!?今更になって被害者ヅラ?だっさ。」
でも私はへこたれずに言った。
「私はあなたみたいに他人を蹴落としてしか、自分の居場所を確保できない愚かな人間の方がダサいと思うよ。」
響子さんはギリギリと奥歯を食いしばって
「もっ…もういいわよ!勝手にすれば!?」
と言ってからトイレに逃げ込んだ。その後しばらくは周りがシーンと静かになった。
休み時間終了の予鈴がなった。
それまでは誰も喋らず、その場で固まっていた。
キーンコーンカーンコーン
…次の授業は大掃除だ。チャイムが鳴った瞬間気まずそうに教室に入ってきた人がいた。
響子さんだ。…まだトイレにいたんだ。
「私の掃除場所は…っと。」
指でプリントを辿っていった。
『2組掃除手伝い:皐月玲奈』
そう書いてあった。2組…なんか大事なことを忘れてるような…?
気のせいか…。多分6年2組だと思うがわからないので先生に聞いてみた。
「せ…先生。」
「ん?なんだ玲奈。」
「2組掃除手伝いって6年2組ですか?」
「そうだが?何か?」
「いえ。何も。」
『6年2組』なぜかこの言葉が心に重く響いていた。
悩みながらも6年2組の教室の扉を開けた。