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第27話 記憶〜イオ編〜
キャラ設定集です!
https://tanpen.net/novel/series/71e01e24-d6a8-43aa-a364-8348f3326862/
ちなみにまだ登場していないキャラも入っています…
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今回はイオくん視点でお話が進んでいきます。
《エピソード.イオ》
星ひとつない漆黒の夜空の下、『ドルチェネーロ』のアジトであるコンクリートの建物に背中を預けてうずくまる影があった。
彼の名はイオ・フィリベルト・バイオ・ドリーム・エリザード。
空と同じく真っ黒な軍服を着た、ごくごく《《普通》》の青年だ。
彼は首にかけたペンダントのふちを右手の親指でなぞる。
イオ:「レオ…」
誰のものかわからない名前を呟く。その声は寂しげな野原に吸い込まれて消えていく。
冷たい風が彼を責めるように吹きつけてくる。
イオは立ち上がり、アジトの中に戻っていった。
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翌日。
イオは昼過ぎに起き、その後街へと繰り出した。
イオ:「なーんかおもしれーことねーかなぁ」
独り言を言いながらぼんやりと歩いていると、街のゲームセンターで何やら盛り上がっているのが目に入る。
イオ:「お!なんだなんだぁ?」
近づいてみるととある人物の後ろ姿が見えてきた。
ニット帽を被ったマゼンタ色の髪の人物。
リフ:「いけ!そこだ!」
ゲーセン客:「うっわ!また負けた!兄ちゃんつよいね〜」
リフとゲーセンの客は立ち上がって互いに握手をする。スポーツマンシップというやつだ。
イオはその様子を見て周りの観客と同じように拍手をする。
イオ:「リィ!キサマやるじゃねぇか!」
リフ:「お!イオじゃん!なんでここに?」
リフは驚いた顔をしてイオのもとに来る。
イオ:「偶然通りかかってな。つかリィ、俺とも対戦しろ。飴細工にしてやるからな☆」
イオがおちゃらけた様子でゲーム機へ向かって爪先を向ける。
リフは困ったような表情で
リフ:「実は先客がいてさ…ほら、あの人。」
リフが指差した先には薄紫色の背中まである髪をもつ女性がいた。
イオはその後ろ姿にどこか懐かしさを覚える。
すると彼女が振り向いた。
???:「あの…そろそろ…お手合わせ願えますか。」
リフの方を見て真剣な表情で立っている。
リフはもちろん、と言って自己紹介をする。
リフ:「俺はリフ!」
ホルン:「私はホルン。ホルン・フローリア」
ホルンはそう名乗るとイオの方を見る。
ホルン:「貴方は…えっと…」
イオ:「ボクはイオだ!よろしくな☆」
イオが明るく名乗るとホルンは何かいいたげな顔をしたが、よろしくお願いしますとだけ言って再びリフの方に向き直った。
ホルン:「この勝負に勝てたら、あの商品がもらえるって本当なんですよね?」
彼女はゲームセンターの目立つところに置かれたショーケースの中のドーナツを指差す。
どうやら商品目当てでリフに勝負を挑んだらしい。
リフ:「そうみたいですね。俺もドーナツ食べたいんで絶対負けない!」
ホルン:「こちらこそ…」
二人の間に闘志の火花が散る。
イオ:「二人とも頑張れー」
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二人は音ゲーで勝負をすることになった。
ルールは一発勝負。リズムに合わせてボタンを押し、スコアの高い方が勝者だ。
リフとホルンは音ゲーの機械の前に立ち、両手を構える。
観客たちは賑やかな様子で喋っていたが、二人の放つ真剣なオーラに黙って息を呑む。
「それでは、はじめ!」
合図とともに曲が流れ出し、緊張感もマックスになる。
最初の音符が流れてきた。
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結果は僅差でホルンの勝利だった。
ホルン:「やった…!勝った!」
ホルンは嬉しそうに賞品のドーナツを抱えている。
リフは意気消沈して魂が抜けたようにぼーっとしている。
リフ:「初めて負けた…あそこでこうしていれば…ぶつくさ…」
何やら一人反省会を開いている様子だが、気を取り直してホルンのもとにやってきて握手をする。
リフ:「楽しかった!またやりましょう!」
リフは少し悔しそうにドーナツを見たが、
ホルン:「私、絶対音感なんです。だから勝てたのかも。」
ホルンは賞品を鞄にしまいながら照れ笑いを浮かべる。
するとイオはずっと気になっていたことをホルンに聞いてみる。
イオ:「キサマ、以前にどこかで会ったことないか?」
イオは記憶を辿ろうとして顎に手を当てて考え込む。
ホルン:「キサ…いやまぁいいんですが……というか確かに…どこかで…」
ホルンはハッとしてイオの顔を見上げる。
ホルン:「…もしかして…え…?じゃあ、なんでここにいるの!?貴方…自分の国の戦争で、兵士として、出兵したはずじゃ···!?」
ホルンは何かを思い出したらしく、混乱した様子で言葉が途切れ途切れになっている。
その言葉を聞いてイオの記憶の蓋も開いたようだ。
イオ:「あぁ!もしかしてあの時のか…?」
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今から4年前のある日のことだった。
アドバンポリスの外にある国で二人の兄弟が暮らしていた。
兄の名前はイオ、弟の名前はレオといった。
15歳のイオは13歳のレオとともに戦争の激しいこの国で兵士として活躍していて、上層部からも認められるほどの強さを誇っていた。
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レオ:「にいちゃん!今日も倒した敵の数で勝負しようよ!負けたら料理当番ね!」
レオが無邪気な顔で物騒なことを言いつつ兄に駆け寄る。
イオ:「ボクに勝てると本気で思ってるのか?その提案…後悔すんなよ?」
イオはニヤリと笑って倒した敵の数を言う。
結局負けたのはレオで兄は誇らしげに胸を張る。
イオ:「やっぱりこのボクにはまだまだ追いつけないようだな☆」
はっはっはと高笑いするイオを、膨れっ面で見あげてレオは悔しそうに唇を噛む。
すると、近くで乱戦の音が聞こえてきた。
イオ:「ボクたちも助太刀に向かうか!よし、ここでの成果もさっきの勝負に反映させよう!ゲーム開始だ!」
イオは未だ膨れっ面のレオを見て、鼓舞させる言葉を放ってから戦場に向かう。
レオ:「よぅし!今度こそぼくが勝つ!」
二人は荒れ狂う戦場の地へと赴いた。
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戦場に着くとあちらこちらで首領蜂火花が散らされていた。
イオとレオは武器を構えてニヤリと笑う。
イオ:「それじゃ、はじめだっ!」
レオ:「望むところだ!」
二人は縦横無尽に戦場を駆け回り、どんな巨漢でも易々と薙ぎ倒していく。
あっという間にここら一帯は血の海へと変貌した。
二人は一息ついて合流する。すると、
???:「たす…けて…」
どこかから少女のか細い声がかすかに聞こえてきた。
イオとレオは顔を見合わせて、その声の主を探し始める。
声を頼りに歩を進めていくと、肩を抱いて一人でうずくまっているイオやレオとあまり変わらないくらいの年頃の少女を見つけた。
イオ:「おい、キサ…キミ、大丈夫か?」
二人が近づくとその声に気がついた少女は途切れ途切れの声で何かを伝えようとしてくる。
???:「あ…あの、あの…」
その少女は二人の顔を見ずにただボロボロと涙をこぼして泣きじゃくっている。
その近くには大人の死体が二つ転がっていた。
イオ:「……。ちょっと待ってろ。大人を呼んでくる。」
もしかしたら少女の両親かもしれない、そう思ってイオは周りの大人に助けを求めにどこかへと走っていった。
レオは泣きじゃくる少女を泣き止ませるため少し話しかけてみることにする。
レオ:「キミ、名前は?」
ホルン:「…わた…私は、ホルン。ホルン・フローリア…貴方は?」
ホルンは涙を堪えようとして益々大粒の涙をこぼしながらも名前を言う。
レオ:「俺はレオ。…よかったらこれあげるよ。」
そういってレオは一つのドーナツをホルンに手渡した。シンプルで素朴な見た目のドーナツだ。
ホルン:「ありがとう…」
ドーナツを受け取ると、ホルンは少し落ち着いた様子で泣きじゃくるのをやめた。
レオはホルンの隣に座って空を見上げる。
レオ:「さっきの人はぼくのにいちゃん!名前はイオって言うんだ。ちょっとぼくの名前と似てるでしょ?戦場ではめちゃくちゃ強いけど、家ではとんでもなく優しくて。」
さっきまで人が大勢戦っていたとは思えないほど静かになった戦場を見て、レオは少しため息をつく。
レオ:「ぼくもあんなふうになりたいな。」
そんなレオを見てホルンは涙声で呟く。
ホルン:「貴方も強いわ…こんな戦場で人に優しくするのは難しいこと…それができるのは強い証だと思うの…」
貰ったドーナツを両手で持ってホルンはうずくまる。
ホルン:「私は…弱い。」
悲しみに暮れるホルンをどうしたものかとレオが戸惑っていると、イオが数人の大人を連れて戻ってきた。
イオ:「コイツらが避難所まで送っていってくれる。キサ…キミは安心してついていけ。」
イオが連れてきた大人たちは満身創痍のホルンに優しく声をかけて避難所へと向かっていった。
ホルンは時折後ろを振り返りながらレオからもらったドーナツを大事そうに抱えているのであった。
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一年後、イオとレオは二人きりでアドバンポリスに移住した。
戦争が激化したので平和な地で安息を取ろうとしたのだ。しかしその数日後。
__レオは死んだ。
不運な事故だった。
新しく見つけた住処で少しずつ非常食の飴をつまんでいる時だった。
突然窓が怪物に破られ、レオの頭部を掻っ攫っていったのだ。
あまりに急な出来事だったのでイオの反応は遅れて目の前で最愛の弟を失ってしまった。
イオ:「…は?…レオ?…何がどうなって…」
突然部屋に飛び込んできた透明な怪物は牙を剥き出しにして三本の足で立っている。
背中から伸びる触手はレオの頭部を持ったまま。
イオ:「キ…サマ……ボクの弟に…何しやがるんダァッ!!」
鬼のような形相で舐めていた狐の形の飴を噛み砕き、イオはこの世のものとは思えない咆哮を放つ。
透明な化け物も大きく唸り声を上げてイオに立ちはだかっていく。
イオ:「『飴細工』」
出現した飴細工の狐はイオの思いを汲んだように透明な化け物をあっという間に粉々に粉砕した。
イオ:「…レオ。…クソッッ!!」
イオはなき別れになったレオの頭を優しく持ち上げて抱きしめる。
その瞳には黒い光が宿されているのであった。
ホルンの設定(キャラ原案:奏者ボカロファンさん)
https://tanpen.net/novel/f1ef6cc9-18c6-40f0-baa3-4c55b7044a00/
ホルンちゃんの登場ながらくお待たせしてすみません!ご参加ありがとうございます!
あと更新もしばらくぶりですね。少しサボっただけで文を書く勝手がわからなくなり、かなり苦戦しました…継続って大事なんですね…
キャラの過去編や深掘りのお話を書き終えたらそろそろクライマックスに入れそうなので最後までお付き合いいただけるととても嬉しいです!
(*ちなみに少し文の書き方を変えてみたので、以前の書き方の方が良かったと感じたら教えてくださると嬉しいです!何もなければこれからはこの書き方でいこうと思います!
ちょっと文章の雰囲気変わるかもしれません!)