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#05
--- 翌日 ---
授業中、琥珀は真剣な表情でノートパソコンに向かっていた。隣の席の男子生徒と顔を寄せ合い、画面を見ながら何やら話し込んでいる。
「なぁ、ここのデータ、どうやって入力するん?」
「えっとね、こうやって、ここに数字を入れて……」
二人は時折楽しそうに笑い声を上げ、簓はちらりと視線を向ける。
簓は琥珀から少し離れた席に座っていた。いつもなら、休み時間になれば真っ先に琥珀の元へ駆け寄るのに、今日はなぜか足が動かない。琥珀が他の男子生徒と楽しそうにしているのを見て、胸の奥がざわついた。
「簓、どないしたん?なんか元気ないやん」
同じクラスの友人が、心配そうに声をかけてくる。
「いや、なんでもない……」
そう答えながらも、視線はまた琥珀の方へと向いてしまう。
休み時間になっても、琥珀は男子生徒と話している。
「琥珀、この後、ちょっと時間ある?」
「うん、大丈夫だよ」
「じゃあ、この続き、一緒にやろか」
「うん!」
嬉しそうに頷く琥珀の姿を見て、簓は胸が締め付けられるような感覚を覚えた。
--- 夕方 ---
下校の準備をしている琥珀の元へ、簓が駆け寄る。
「琥珀!な、なぁ、今日、一緒に帰らん?」
簓が声をかけると、琥珀は少し困ったような顔をした。
「あ、ごめん、簓。私、今日、この後の課題、友達とやる約束してて……」
「そう……か」
琥珀の言葉に、簓は肩を落とす。
「ごめんね、簓」
申し訳なさそうに謝る琥珀に、簓は「ええんよ」と無理やり笑顔を作る。
「ほな、また明日な」
そう言って、簓は琥珀に背を向け、一人で下校する。
--- 帰り道 ---
「なんでや……」
一人になった簓は、ぽつりと呟いた。
「俺、琥珀と会えんの、楽しみにしてたのに……」
胸の奥で渦巻くモヤモヤとした感情。それは、たこ焼きパーティーの後の幸せな気持ちとは真逆のものだった。
--- 翌日 ---
学校に来ても、簓は琥珀を避けてしまう。
琥珀はそんな簓の様子に気づき、心配そうに声をかける。
「簓、どうしたん?なんか、元気ないやん」
「なんでもない」
冷たい声でそう答えると、琥珀は少し寂しそうな顔をした。
「……怒ってる?」
「別に」
そっけない態度に、琥珀はそれ以上何も言えなくなってしまう。
--- 放課後 ---
簓は一人で下校しようと、校門を出る。
「簓!」
後ろから、琥珀の声が聞こえた。
「なんで、私と話してくれへんの?」
琥珀は簓の隣に並び、簓の顔を覗き込む。
「別に、話すことないし」
「そんなことない!簓、私といるの、嫌になった?」
琥珀の言葉に、簓は思わず立ち止まった。
「なんで、そうなるねん」
「だって、ずっと冷たいし……」
琥珀の声が、少し震えている。
「ちゃうねん……」
簓は言葉に詰まる。
「……わかった。もう、いい」
琥珀はそう言って、簓に背を向けようとした。
「待って!」
簓は思わず、琥珀の手を掴む。
「ごめん……ごめん、琥珀。俺、寂しかってん」
「え……?」
琥珀は驚いて、簓の顔を見つめる。
「琥珀が、あの男とばっか話してて……俺のこと、構ってくれへんから……」
簓は、まるで子供のように拗ねた表情で呟いた。
「簓……まさか、嫉妬してくれたん?」
琥珀の言葉に、簓は顔を赤くする。
「な、なんやねん、それ!ち、違うし!」
「ふふ、可愛い」
琥珀は、愛おしそうに笑いながら、簓の頬にそっとキスをした。
「なっ……!琥珀!」
「ふふ。簓、大好きだよ」
「も、もう……!」
拗ねた顔の簓と、嬉しそうに笑う琥珀。
二人の間に流れる空気は、またいつものように、温かいものに戻っていた。
終