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焦り過ぎにはご注意を!〜2年セッターくん、先輩からの甘やかし〜
冬華
〜まえがき〜
シリーズ【甘いあなたに、苦い現実】の、最新のお知らせは読んでいただけたでしょうか?
シリーズを差し置いて、こんな短編小説を描いてしまい申し訳ありません。
正直、駄作かもしれませんが…思いつきで描いたものなので、よければ読んでみてください。
⚠作者にバレーの知識は一切ありません。
あるとすれば、セカンドシーズンまでの『ハイキュー!!』での知識のみです。
(主人公:春野玲|《はるのれい》)
今日はバレー部の練習試合。
でも、どうも朝から不調の2年セッター、颯真|《そうま》くん。
私は3年のマネージャー。
休憩時間、壁際に座り込んでしまっている颯真くんに、スクイズ片手に近寄った。
いつもはまだまだ!と、休憩時間にもかかわらず少し自主練をし、休憩時間は休め!と監督に一言言われるような彼が…今日は体育館の壁に背中を預け、タオルを頭に被せ、下を向いている。
あんなに白熱した練習試合後なのに、彼の空気は疲れや疲弊とはまた違う、もう少し重い雰囲気がある。
「お隣失礼しまーす。
…落ち込んでる?」
声をかけると、足音にも気づいてなかったらしい颯真くんは驚いた様子で顔を上げた。
それほどに自分を追い詰めていたのだろうか…それとも、自分と向き合っていたのか…。
なので私はにこっと笑いかけ、スクイズを差し出しながら言った。
「とりあえず水分補給!
試合終わってから飲んでないでしょ!
熱中症とか、脱水症状で倒れちゃうよ!
君が倒れたら困るんだからね!」
颯真くんは驚きながらも「ありがとうございます」とスクイズを受け取り、水分をとった。
その時、一瞬触れた手が私より熱かったから練習試合後なのだと改めて思う。
その後、目を伏せ一言。
「絶賛不調のセッターなんて…倒れても困りませんよ。」
「なんで…?」
彼は私を見て、少し目を見張って言った。
「チームの司令塔が…スパイカーを活かすセッターが…不調だと、全て崩れるじゃないですか!」
少し強めの口調。
その瞬間、一粒の汗が彼の顎を伝い、落ちる。
きっと、練習試合の汗だけど、今は焦りからの汗のように見える。
「…んー…。そうね。
颯真くんの気持ち、よくわかるよ。」
「玲先輩になにが…!」
「うん。マネージャーに言われても!って感じだよね(笑) それも、よくわかる。」
「…っ。」
途中、私の言葉を遮って入ってきた颯真くんは、私の言葉を聞いたあと黙ってしまった。
「…バレー部じゃないし…マネージャーだし。
試合中なんかは特に…応援しかできないけどさ…。」
「これでも私、中学の頃は運動部だったんだよ?」
と笑いかけると、また颯真くんは驚いた表情をしていた。
今日は驚いてばかりだな、と少し笑ってしまう。
「…颯真くんみたいにね、少しスランプにもなった。
絶望だよね、その瞬間。わかる。
一人じゃない。だから、一人が崩れると全体も崩れるかもしれない。
これがほんとの試合だったなら?
自分が敗因になるかもしれない。
恐怖だよ。」
そう言って彼を見ると、表情はまた曇って目を伏せていた。
でも私は続ける。
「そんなときはさ…ちょっと肩の力抜いて、諦めちゃお?」
「あきらめ…?」
うん、と私は頷く。
「諦めちゃお?
実際、今は練習試合だし、君は頑張ってる。
チームメイトもわかってる。
諦めたら…まぁ、監督にちょっと怒られるかもしれないけど…続けて、やっぱりできなくて…。
悪く行けば悪化しちゃって、自己嫌悪に陥って…。
最悪、そのものを嫌いになっちゃったり…自分を嫌いになっちゃう…。
そのほうが、辛いし…絶対後悔する。」
そんなの辛いじゃん?と問いかける。
颯真くんは少し目を見張って私を見る。
「大丈夫!
絶対にこのままできないなんてことないし、
それにね、ここまで真剣に悩んで…こんなに落ち込んでくれるんだもん。
スタメンのアイツらも嬉しいよ。」
そう言ってスタメンたちの方を見る。
彼らも、颯真くんをずっと心配していた。
まだ2年。スタメンはほぼ3年。
その中に入っているのだ。
さらに、もう少しで春高…。
それも焦りを与えているのだろう。
でも大丈夫。
「何があっても、アイツらは君を支えてくれるよ?
それは君が1番知ってるかもね?」
ねぇ、颯真くん。
「休むことも、立派な練習!
来年は君が最高学年。支える立場。
でもね、今はまだ後輩!
今は休んじゃえ!甘えちゃえ!
まだ春高までは時間もある!
今はむりです!休みたいです!!って言いな!
駄目って言われたなら私のところまでおいで!
助けてあげる!
まぁ、多分言われないけどね。
焦らなくていいよ。さっきも言った通り、君がいなくなったら困る!ね?」
「休むのは私からのアドバイス!
経験者は語るってやつ?
私は、嫌いになるのも…休んだら治るのも、どっちも経験してるから。
先輩だぞ〜?
後輩立場利用して、いろんな先輩頼っちゃえ!
もちろん、私もね?」
そう言いきる頃には、彼の目には涙が溜まっていた。
大きな目から今にも溢れそうなほど。
にこっと笑いかけると、とうとうそれはダムが決壊したかの如く溢れ出す。
直後、彼の周りにはスタメンの3年たちが集まってきた。
「あー!!春野が泣かしたー!」
なんて言いながら。
もぉー!だったらアンタらが声かければよかったでしょーが!!
俺たちじゃ逆にプレッシャーになっちゃうからって頼み込んできたくせに!
「泣くなー?颯真ー。」
「そんなに思い詰めんなよ!(笑)」
「自分で自分を追い詰めすぎんな〜。」
なんて言われながら頭を撫でくりまわされている颯真くんを見たら、私は思った。
「ま、いっか。」
それから少しして、涙も落ち着いた颯真くん。
そして、颯真くんは3年スタメンと向き合った。
「あの…今日は…ミスばかりで…
その…すみませんでした。」
と頭を下げる。
「気にすんなよ。練習試合だし、それに…
いつも自主練とか、颯真が誰よりも頑張ってるのは、みんな知ってる。」
そういうと、颯真くんの目には収まったばかりの涙がまた少し顔を出す。
「…で、その…」
うん、とみんなはゆっくりと颯真くんの次の言葉を待つ。
「…迷惑だって、セッターが抜けるなんて…ッと、思うかも知れないんですが…」
うん、とまたみんなは彼から紡がれる言葉を待った。
「少しッ…休ませて…ほしい、です。」
やっと、颯真くんはその一言を言えた。
スタメンはというと、
「おう!ゆっくり休め!」
「…え?」
颯真くんは驚く。
スタメンたちは
「だって、そろそろ止めねーと、今度はできなかったからって自主練して、オーバーワークするだろお前!」
「ほんとだよ、颯真は自分に厳しいから。。」
「ストイックなのは颯真のいいところだけど、たまには自分を甘やかしなさい!!
そこにいる藤夜|《とうや》を見習って!」
「そうそう俺みたいに〜!って!え?!」
「あ、いや…藤夜ほどはダメだな!
颯真がダメになっちゃう!」
「え゛ー!!雪|《ゆき》ひどい!!!」
なんて少し茶番を繰り広げていた。
それを見て颯真くんは笑った。
「あ!やっと笑ったなー!颯真!」
「え…?俺…笑ってなかったですか?」
「おう!今日は一発目からすんげー怖い顔してたぞ!」
「え゛?!」
驚くから無自覚だったのかよ、とスタメンたちは爆笑。
「はぁ〜笑った(笑)…とりあえず!
お前は休め!颯真!!
そして、しっかり復活したら、またいつものトスを上げてくれよな!」
「はい!ありがとうございます!!」
勢いよく頭を下げるものだから、またスタメンたちから笑いの渦が生まれた。
よかった、と私は1人安心していたら…
「玲先輩も、ありがとうございます!
あと、ひどいこと…言いかけて、すみません!!」
と颯真くんが頭を下げてきた。
だから私は慌てて、
「そ、そんな!
いいよ!私…そんな大げさな!!」
すると、
「いや、俺たちからも、ありがとな!」
「ホント感謝!ありがとー春野!」
「いやまじ、颯真をここまで復活させるのはスゲーよ!!」
とかなんとか、感謝を述べてくるのだ。
「もぉー…いいって!
私はそんな大きなことやってないし、ほぼ経験談語っただけだし…!」
とか、また練習試合後とは思えないほどの明るい日常に戻ってくるのでした。
その後は長いから割愛させてね?(笑)
〜あとがき〜
お疲れ様です!
おかえりなさい!
⚠途中で出てくるスタメンの中には、名前が出ていないキャラクターもいます。
誰が喋っているかは、名前が出ている&「この人が喋ってる」と書かれている部分以外は、想像で大丈夫です!
読んでくださり、ありがとうございます。
「ここ、こうしたほうがいいんじゃない?」などのアドバイスも大歓迎です。
それでは、また。
[https://tanpen.net/novel/cb98eaea-9ae0-4390-8a4e-551732d30c72/]
これも確認していただけると幸いです。