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誰が為?
切り裂き魔の子…()
「こんな結末になっても、あなたを愛している。」
最愛の人はそう言った。でも私はそうは思えなかった。
血の匂いのする部屋。赤く乱れた鮮血。揺らぐ視界とついさっきまで生きていた私の最愛のあなた。
とある危険な世界、とある区画で。そこは時折権力など無差別に送られる命令に従うとお金をもらえて、従わないと執行者に殺されるという理不尽ともなんとも言えない場所だった。
そんな場所で、私に下された命令は「19時までに大切な人の命を奪う。出来ないなら自分の家の窓や屋上から飛び降りる」なんて、バカみたいな命令だった。私はまだ生きたかった。
ずっとあなたと居たかった。いつかここでは簡単に死ぬだろうと知っていても、お互いを信じて愛しあえた。自分の家族からも、生みの親ではないけど育ててくれた人からも捨てられて、本当に大事に出来たのはあなただけだったと思う。
あなたの人生を終わらせないといけないことなんてなかった。私なんかが生きるよりも優しいあなたが生きればいいのだから。
でも、たとえあなたを殺してでも、私は生きたかった。
きっと部屋の窓を開けて、流れ出る血の匂いに誰かが気付いたとしても何もしないし、優しい誰かが取り締まる人を呼ぼうとしても反応しない。こんな場所にいる時点で、罪も罰も救いも何もあってないようなもので、私を裁いてくれるものはあなたが死体以外に唯一遺した罪悪感かあなたを殺した私の手でしかないのだ。
乱雑に出された命令に従うだけの全てを、自分を。あなたを殺した手で終わらせてしまいたかった。
過去を振り返りながら前に進む人生は一度進めば何も知らずに戻ることはできない、一冊の本のようで。
その本を読まないよう、醜い世界を見ないよう、目を閉じるのは簡単でも一度得た記憶が消える事はなく、消えない罪を裁くことも出来なくて生きるしかない。だから、誰が為とも知らぬ命令に従うしかできずに生きるのだった。
語彙力なくなっちゃった((