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シックス・ラバーズ 第5話
約9ヶ月ぶりの投稿です!!
今後もちまちま投稿するつもりなので、よろしくお願い致しますorz
体育祭も終わり、6月。
俺は、また新しいことを始めようとしていた。
それは、そう―――――
バイト!!
先日、俺はバイトの面接に行き、見事合格。
今日から俺の新しいバイト生活が始まる。
バイト先は大通りを曲った細い路地にひっそりとあるオシャレなカフェ。
高校からは徒歩20分。しかし、どちらの最寄り駅も同じ路線では無いため、歩きやバスくらいしか手段は無い。だから、知り合いにバレることもないだろう。(そもそも知り合いなんてあんまりいないけど。)
さあ、今日からバイト、頑張ろう!
「カラン、カラン」
ドアに吊り下げられたベルが鳴る。
俺「すみせーん。バイトに来た〈俺〉でーす。」
すると、奥の方から足音が聞こえてくる。
「おお!来たか。〈俺〉くん。面接でも会ったけど、店主の山木です。よろしく。」
面接でも会ったが、なんておおらかそうな人なんだろう。
このカフェ「|Sun leaF《サンリーフ》」の店主・山木さんは、見た目は50代から60代の年配の男性だ。
この店は、20年前からやっているお店で、今まではこの山木さん一人で切り盛りしていた。しかし、年も年なので一人で料理も作り、注文も取るのが大変になってしまったらしく、友達の息子である俺を雇うことになったのだと言う。
山木さんは結構フレンドリーなので、面接でこうなった経緯を全て話してくれた。
とりあえずこれは“お試し”で、人を雇わなくても働けるかどうか見極めるだけらしいので、俺が働くのは夏休み前までの期間限定だ。
まずは小一時間くらいみっちり注文の取り方などを教わってから、早速俺は渡されたエプロンを付けて、店頭に立った。
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「――あっ!ねぇここ、ここ!ずっと前から気になってたんだけど、一人じゃ入りづらくて………一緒に入ろうよ!」
「……えー、別に、いいけど………まあオシャレだし、良さそう。」
「そうそう!はあ〜《《徒歩20分》》で遠いけど、大通りの外れにあるし、良い穴場見つけちゃった!」
「カラン、カラン」
俺「いらっしゃいま……」
「………あっ。」
終わったーっ!!
俺のバイト生活終わったーっ!!
ウチの制服のお客さんが来た時点で、ここはもう俺だけの場所じゃなくなった…………
……ま、まあ、でも、相手は俺だって分かんないよな。学年違うかもしれないし。うん、うん。
「あーっ!!あなた、あの入学式の時の!!会いたかったんです!あの時はありがとうございました〜っ!」
俺「……あ、ああ………そんなことも、ありましたね……ははは。」
ほぼ忘れかけていた記憶だった。
こんな子だったっけ?
一緒に探した子の顔なんて、あやふやだ。
「こんなところで会えるなんて、運命的ですね!……ねっ、藤香!」
「す、すみません………この子、人にグイグイ来るタイプで……………」
俺「あ、いいえ。全然。気にしてないですよ。(……俺のバイト生活、完全に終わったーーーーッ!!!)」
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「――私は――|和花《わか》。で、こっちは|藤香《とうか》です!中学からの親友なんですよ〜!あの時探してたハンカチをプレゼントしてくれたのも、藤香なんです!」
俺「へー、そうなんですか。」
藤香「どうも。親友がお世話になったようで。」
藤香……さんは、丁寧に頭を下げた。
よく見ると、艶々の黒髪でまつげも長く、まさに大和撫子といった感じだろうか。
対照的に和花さんは、茶髪のすこしうねったボブで、目はくりっとしていてかわいい系だろうか。
………って!!何女子をまじまじと見てんだ!俺!!
和花「早速ですが、連絡先交換しましょ!」
藤香「こーら!和花!ナンパしない!この人が困ってるでしょ。……って、そういえば、あなた、お名前は……??」
和花「あ、確かに。名前名前!」
藤香「ちょ、あなた名前も知らない人と連絡先交換してたの!?普通順序逆でしょ!」
すかさず藤香さんがツッコむ。
和花さんは天然系なのかな……??
俺「俺は、〈俺〉って言います。」
和花「へぇー、〈俺〉かぁ…良い名前!よろしく!〈俺〉くん!」
藤香「よろしくお願いします。〈俺〉さん。」
俺「こちらこそ、よろしくお願いします。和花さん、藤香さん!」
和花「呼び捨てでいいよ~」
藤香「そうそう。」
山木「――もしかして、二人とも、〈俺〉くんの知り合い?」
山木さんがキッチンから顔を覗かせる。
和花「はい!同じ高校なんです!」
山木「そうかそうか。〈俺〉くんのお友達なら、おじさんサービスしちゃおっかな~。ちょっと作ってくるから待ってて。」
和花「やったぁ~っ♪今日の私、ツイてるー!」
藤香「あ、ありがとうございまーす!!」
恐らく、山木さんの親切のおかげ(?)で二人はこれ以降もこのカフェに通い続けるのだろう。
しかし、悪くはなかった。
この二人、悪い人では無さそうだし。
こんなバイト生活も悪くないかもしれない。
俺たちは山木さんが作ってくれたサービスのパンケーキをつつきながら、楽しく食べた。
つづく