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1. 鬼さんこちら、推しのいるほうへ
オタクな百鬼ちゃんと、女装男子の糸保くんの話
とある日、皆仕事や用事で家には百鬼と糸保しかいなかった。
ふたりきりの静かな部屋で、最初に口を開いたのは糸保だった。
「そういえばさ、俺の後輩がグッズ処分したいから引取先探してるって言ってたけど…どう?」
その言葉に、予想通り百鬼は食いついた
「界隈による。何?」
「アニメ」
「なんて題名?」
「『ブルーロック』と…なんだったっけ…なんか…。なんちゃらホスト…みたいな?」
「『えぶりでいホスト』?」
「それ。」
現世のアニメが地獄でもやっていることこそ驚きだが、地獄に住んでいる者はもう慣れ切っていた。
地獄の赤鬼の拷問官、茨木百鬼は妖怪になる前…人間の頃からアニメ、ゲーム、ボカロ…様々なオタク文化のものが大好きだった。
「全部貰うって言っといて」
「了解〜…てかさ、百鬼っていつからこういう…アニメとか好きなん?」
百鬼は糸保の問いに、少し顔を伏せた
答えづらそうにしている百鬼に糸保は「嫌ならいい」と言おうとするが、その前に百鬼が口を開いた
「えーとね、「辛いことから逃げるため」。言わば現実逃避!」
明るく言うが、目が笑いきれていない
そんな百鬼は糸保に「じゃあなんで糸保は女装してるの?」と問い返す
糸保は若干苦しそうな表情になりながらも返す
「……大切な人に、見つけてもらうため。」
「…そっか、やっぱ私達、過去が関係して今こうなってんだね」
「…百鬼は、勝手にいなくなるなよ」
「わーった、わーった。糸保が罪を償える日まで待ってるから。糸保も待っててよ」
「たりめーだろ」
--- 俺ら、親友だぞ? ---