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焔凍不鉄-4
「『来る外来は、何れの日か再帰なる、我等封印のみ。な時、我等に呼びに来るよし』、か……」
独り言を呟いた。
辞書、ノート、古文の参考書に本。
「なんでこんな大事そうな話が古文で書かれてんだよ…!!」
机は菓子谷に叩かれ、物を跳ね上げた。
ノートには、その古文の現代語訳が手書きの汚い字でメモと共に書かれている。
“「さっき来た外来は封印しただけだから、いつか帰ってくる。その時は、私達を呼びに来てくれ。」”
「うわぁぁぁあぁ!!!クソが!!!!」
菓子谷はベッドに身を放り投げ、足を暴れさせた。
「勇也うるさーい!」
「おめーのほうがうるせーしおめー叫んだら喉壊すだろ黙ってろ!!__ちっ、馬鹿母がよ!!__」
焦燥感に似た何かが押し寄せてくる気がした。
だがその理由は1つも分からなかった。
「ただいま。5時間授業だったぜ…!!瀬野は?」
「彼女とイチャついてんじゃね?」
「は?」
菓子谷がキレ気味に問うと、神主兄はトランペットを吹くモノマネをした。
ああ、と合点したように菓子谷は頷く。
少し前までは夏を捨てきれなかった風も、心なしか涼しくなったような気がする。
「これから寒くなるな、風邪引くなよ」
「わかってるよ。俺寒さに強いし大丈夫。……兄貴は置いといて、な。」
「え?呼んだ?」
神主兄は掃除の手を止めた。
「……手伝うよ」
「えー勇也やっさしー!!兄貴も喜ぶわ!!」
「いいのかよ?結構だるいぞ?」
「十分承知してるよ。瀬野が来るまでの暇つぶし。」
「……へくしょん!!」
「先輩風邪っすか?」
「いや…そんなことないと思う…誰か俺の噂でもしてんじゃない?」
「和田原先輩と付き合ってるっていう噂ですかね?」
「は?」
トランペットパートは今日も、2つの意味で騒がしい。
「そういえば帆乃パイセン、告白した?」
にやにやしながら瀬野が聞く。
「あのさーまじであいつやばい」
「どうした…告られた?」
「違えよ!!」
|高園帆乃《たかぞのほの》が即座に否定する。
「あいつさ…こっちジロジロ見てくんだよ!!まじでさ…」
「先輩それ脈しかないっす」
「大静脈どころか左心室だよそりゃ」
「………はぁ?」
高園は疑うような視線を向けた。
「ほら、俺達が結婚行進曲送っただろ?それに左心室だし、早くこくは…」
「はーい練習練習、奏架君も早く吹け。」
えぇー…と言いたげな後輩と瀬野を無視して、高園は練習を再開した。
「ん…?」
「どうしたんすか瀬野先輩」
「いや…なんか忘れてる気がして…なんだろ」
と、瀬野は楽譜入れを片っ端からめくり始めた。
すると一枚のプリントが宙へ舞い上がる。
「あ…!?あれだ!!嫌すぎてサボってた国語のレポート…〆切明日!!」
「先輩お疲れ様っす…」
風で舞ったプリントを追いかけて、瀬野は廊下へ飛び出した。