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死歿の歌 四話
らるらりら らるらりら
誰かが私を呼んでいる
るらりらら るらりらら
誰かが私を呼んでいる
らりららる らりららる
誰かが私を呼んでいる
りららるら りららるら
誰かが私を呼んでいる
ああ閻魔様が呼んでいるのか?
歌を歌いながら 僕は閻魔様を待つ
ああでも僕はあの人に あの人に
呼んでほしいんだ
ららるらり ららるらり
誰かが私を呼んでいる……
人間は誰もが愛を求めている。
愛は人間を嫌っているかもしれない。
人間から愛は、僕らにとって、救済者だと思っているだろう。
四話『暗闇』
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洞窟の入り口、大きな穴のそばを離れた自分と|女性《にょしょう》の邏卒は、地面に座り込み、そのまま会話が生まれない時間を過ごした。
自分は正直にいうと、女性の邏卒と仲間なんて、絶対に無理だと思っている。正義感が強い、自分とあったらすぐに睨んでくる、本当に邏卒か?と思うほどだった。
そして、女性の邏卒が口を開き、自分に対して喋った。
女性の邏卒「仲良くなるって…本当なの?」
まさか、とは心の中で思ったが、そんなこと言ってしまったら、その場で捕まるだろう。勿論嘘をついた。
『うん。君と同じ邏卒に裏切られたんだろう?まあ可哀想だからね。』
女性の邏卒が黙ると、自分は女性の邏卒に言った。
『市電に乗って、どっかいこう。誰にも気づかれない場所へ。』
自分は女性の邏卒の手を掴むと、一緒に駅に行って、市電に乗った。
乗っている時に、一緒にお話をした。
最初に話しかけたのは、女性の邏卒だった。僕のことを知りたいらしく、僕のことについて質問をしてきた。名前は?年齢は?何であの人たちを殺したの?など。だが、自分はどれも答えなかった。
女性の邏卒はムカっとしたのか、外の方を向いた。
自分は特に話そうともしなかった。話すことがないのは当たり前だが、自分のことを答えると、僕が不利になるではないか。だから答えなかった。
市電から降りると、何もない平凡な道を二人で歩き始めた。歩いている途中、|女性《にょしょう》の邏卒が自分に話しかけた。
女性の邏卒「あなた、本当にどこへ行くの?」
『誰にも気づかれない場所、そこに連れて行ってあげる。』
そう言ったら、自分は山の奥を目指して歩き始めた。
そして、だいぶ時間が経った時、山を登りきった。女性の邏卒も息切れをしている。よほど辛かったろう。
頂上は、少し薄暗く、自分にとってあまり好みではないところだった。きっと、人間もあまり好きなところではないだろう。だから、誰にも気づかれないだろう。
だが、山を登りにきた人が気づいてしまう。自分は、この山の頂上への入り口を立ち入り禁止にした。ロープを使って、入れなくなるようにした。
そして、自分は女性の邏卒に言った。
『君は何になりたい?』
単刀直入に言ったが、女性の邏卒は答えてくれた。
女性の邏卒「は、はあ?何になりたいって急に…しかも、私は邏卒よ。子供の頃から邏卒になりたかったの。」
『甘いね甘いね〜。規模が狭い狭い。』
女性の邏卒「な、何よ。夢は何でもいいじゃないの!」
『例えば太陽になりたいとか、神様になりたいとかあるじゃないか。自分はあれを求めていたんだけどな。君にお似合いなのは…天使とか?』
女性の邏卒「馬鹿にしないで!」
そう言って、女性の邏卒はそこら辺にあった石を蹴った。
女性の邏卒「なんならあなたの夢は何なの!」
『僕の夢?僕はね…お友達を作ること。僕も規模狭いよねw』
そう笑うと、女性の邏卒が揶揄うように喋ってきた。
女性の邏卒「はっ…人のこと言えないじゃないの。」
女性の邏卒の一言から、僕は嘘をどんどんつきはじめた。
『僕は規模狭くていいの。ただ、君がどんどん上に進んでいくのが楽しみなんだ。』
女性の邏卒「えっ…?一体何…!」
『だって、僕と君は"友達"だよ。』
過去最大の嘘をついてしまったかもしれない。今まで数えられないほどの嘘をついてきたが、友達という嘘をついたのは初めてかもしれない。
そして、女性の邏卒に問いかけた。
『さあ、決まった?今の夢。』
女性の邏卒「…あなたと友達ねぇ…わかった、あなたは私の夢は天使になることがお似合いって言ってたわよね。じゃあその真逆で悪魔とかどう?面白そうじゃない。」
『真逆かぁ。面白いね。』
女性の邏卒「ありがとう。どこからか勇気が出たような気がするわ。」
『うん。じゃあ僕が"今から"君の願いを叶えてあげるよ。成功するかは知らないけどね。』
女性の邏卒「え?」
気付けば、女性の邏卒の背中には、僕の愛用しているナイフが刺さっていた。刺したところからは、紫色の血が出てきた。ナイフを抜くと、女性の邏卒はその場で倒れた。
騙した、人間を騙したんだ。人間ってこんなにちょろいんだと思った。
女性の邏卒「だま…したな…!」
『エスぺランス、期待しているよ。』
そう言ってから、意識を失ったのか、それとも死んだのか、何も喋らなくなった。
こんなことをしている間に、もうすっかり夜になっていた。暗闇の中、自分は女性の邏卒を置いて行って、山を降りた。
この時、あんなことに気づかなかったことが馬鹿だった。
もう既に、この世界は異変が起きていることに。
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--- 『愛』 ---
それはとても恐ろしいもの。
愛のせいで、明日が来ない人間もいただろう。
恋愛は、人生には必ずしも必要ではない。
でも、人間は人生に必ず必要だと思っている奴が何人かいる。
でも、愛はこう言った。
【其方らは愛が必要。】
愛を止められる人は誰もいない。
エスぺランス=フランス語で、希望、期待。