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episode1
ドズルSide
「ドズル。この方たちが、お前の主だよ。」
僕が4歳のとき、父さんはおんりーたちのもとに連れて行ってくれた。
僕が仕える、【三貴子】のもとへ。
最高の魔力、能力を秘めていると言えど、まだ彼らは3歳。
僕よりも下の子。多分状況が飲めていないのだろう。
こちらの方を不思議そうに見ている。
「………ちょーかわいい。」
「ちょ、ぼんさん!?」
おらふ王子の頬をぷにぷにと触りだした少年は、ぼんじゅうる。
僕の幼馴染にして隣に住む、僕より一つ年上の治癒師の息子。
彼もちゃんと魔法使いなんだけど、魔力が少なくて、いまだ魔法を使ったことがないらしい。
この時くらいから彼の両親が戦に出払って、なかなか帰ってこない日が続いたので
僕の家で一緒に暮らしていた。
「いいじゃん。俺もいつかこの子たち専属の治癒師になるんだろうな〜。」
王子の頬の感触が気に入ったのか、触りながら彼は笑う。
ぼんさんはポーションづくりが幼い頃から得意だった。
材料は僕が取ってきたり、父さんや母さんが持ってきてくれたり。
ぼんさんの両親も帰ってくると珍しい材料をくれたりした。
僕は回復魔法とかが得意だったから、父さんたちが戦いに出た時は、2人していつ帰ってきても手当ができるように夜ふかししたものだ。
2人でいろんなポーションを作って、いろんな魔獣で実験するのは今でもやる。
「ドズル、ぼんくん。御三方を任せたぞ。」
「はい!父さん!」「任せてくださいっ!」
父さんに返事をして、3人の顔をもう一度見てみる。
みんなかわいい。この子たちを、僕らはこれから守っていくんだ。
ぼんさんと一緒に3人と遊んだ。すっごく楽しかったのを思い出す。
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「ドズさん!どーずーさんっ!」
誰かが僕の体を揺らしている。この声は、おんりー?
いきなり思い出から現実に引き戻されてしまったのに、少し寂しさを感じる。
そうだ。もう僕は5歳ではない。現在僕は16歳。あれから12年経った。
僕らは今日、大魔法学校に入学する。
「ん……おんりー?」
「起きましたか?」
目を開けると、僕は箒にまたがったまま地上50センチ上で浮いていた。
下でおんりーが僕を揺らしていたらしい。体幹鍛えてなかったら落ちてたな。
前には学校。目的地に向かいながら途中で寝てしまったらしい。
「うん、あれっ!?ぼんさんは?」
「今MENが起こしてます。また2人で夜遅くまでポーションの実験してたでしょう?」
そうだった。
昨日は新しい毒のポーションを実験するために
実験用魔獣(でかいネズミ魔獣)と格闘してたんだっけ。
意外と良いデータが入ったから、2人で寝る暇もなしに改良して……。机に突っ伏して寝ちゃったのか。
地面に降り立つと向こうにぼんさんの愛用の箒、
改造ファンカーゴを持っている白髮の少年が見えた気がした、
「「ドズルさん!」」
「あ、おらふくん。MENも!」
走ってくるMENに背負われているのはぼんさん。
寝起きが悪いぼんさんらしく、MENの爆発でも起きなかったようだ。髪の毛がチリチリになっている。
「ぼんさぁん、起きて!もう学校着いてるよ!!」
「ん………。どずさ……ぁ……。」
やはり寝ぼけているのか僕を探してMENの頭を叩きまくる。
普段僕が担いで起こすからかな……。なんかごめんね、MEN。
「ぼんさーん、それ俺の頭ですー!」
「ん……めん……MEN!?」
MENの声が想定外だったのか、ぼんさんは一気に目が覚めたようだ。
すぐにMENの背中から飛び降りると、ずり落ちていたサングラスを掛け直していた。
そして自分が爆発に巻き込まれたのも薄々理解したのか、
治癒のスプラッシュポーションを取り出し自分にかけた。
「おはよー、ドズさん。」
「おはようございます。ぼんさん。」
それでもまだ体は覚めないらしい。
ふらふらとした足取りで入学式の会場へ向かっていく。
待って待ってと僕もぼんさんを追いかけて歩きだす。
「おいてかないでください。」
「待ってー!!」
みんなも走ってきた。
やっぱりこの5人でいるのが一番僕は好き。