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再会
突然、彼女の電話が鳴った。画面には、なにやら旧友らしい人の名前があった。
「ごめん電話、出てもいい?」
彼女が申し訳なさそうな顔でそう言うので
「どうぞー」
と軽い調子でこたえた。そうすると、彼女は席を外して少し遠くの方で電話に出た。
「もしもーし!」
「久しぶりだねー!てか、あんたからかかってくるとか珍しーね!」
「うんうん、あーわかる慣れた頃にさ寂しくなんのよ〜〜!」
「うんうん!え?………感激して泣いちゃったん?へへへ」
「っ……うん………そうかー」
「えー?あー言われちゃったかー」
「影で?それとも聞こえるところで?」
「あー……」
「あんた、モテてたもんねーあの頃。そりゃびっくりするよねー」
「うん……うーん、ん?えそれさ悪口言ってる方が悪いんじゃない?」
「絶対そうだよ!!悪口言う奴なんてね大抵ド級のブスしかいないんだから!!」
声を大きくして彼女が言った。
これだけ離れていても、店内は静かだし、人も少ない上に彼女の声はよく通るので、丸聞こえだった。
まあ、声の大きさはともかく、そんな偏った意見を意図せず言ってしまう彼女の豪胆さに少しだけ、笑いがこみあげてきた。
「……あんたが一々、気にするこたないって!!そんなブス達放っといてさ!今度、気晴らしにでも一緒にあそぼーよ!」
彼女の友達にまっすぐ向き合うような人柄は高校時代から変わらない。そんな彼女がみんな好きで、大事なんだ。
きっと電話口の子も彼女と長らくの仲なんだろう。何があったかはわからないが、僕はその人に今後いい事が起こりますようにとささやかながら願った。
「ごめーん!おまたせー」
意外にあっさりと切りあげてきた彼女が言った。
僕が触れるべき話題なのかも微妙だったので、視界の端にあったメニュー表をラックから取り出した。
「ううん!何か頼む?」
「おーいいね!」
そうしたら、彼女はパラパラとページをめくりながらさっきの電話の話をし始めた。
「さっきの電話ねー高校の親友なんだー」
「へー」
「でもカズノリは知らなそー、転校生だったし」
「あーそうなんだ」
彼女の感じからして、どうやらそんなに重い話にはならなそうだ。
「でね!その子、実は中村のこと好きだったんだよー!!」
となんだか嬉しそうに彼女は言った。
「うわ!懐かし!」
中村か。懐かしいな。あいつは誰に対しても人当たりが良く、友達思いだったから当時、生徒だけでなく教師からも好かれていた。
それに、
「あいつ、ほどよくイケメンだしね〜」
納得してしまうくらい、あの頃の中村はモテていた。
「そう!キラキラしてるし可愛いんだけど緊張しないの!ま、だからイケメンなんだけどね〜」
と彼女が熱弁しはじめた。
「うわ、真理」
と、ほどよくツボに入って一人で笑っていたら、いつのまにか注文をとりに店員がこちらにきていた。
「お待たせいたしました」
「このコーヒーと……」
「ああ、カフェオレで!」
僕は昔からコーヒーが飲めなかった。一通り、注文していくと
「当店はカップル割もございますが」
と店員に言われたので、すかさず僕が
「ちがいます」
というと店員は彼女を見て「ああ、フラれたなこいつ」と言わんばかりの表情を一瞬見せると
「失礼しました」
とすぐに柔らかい笑顔に戻り、颯爽と厨房へと去っていった。
「ねえみた?カズノリ!ふられたなこいつって顔してたよあいつ」
「ふはっ!そう?」
当然、僕たちはカップルでもなんでもないただ高校から大学まで同じ同級生の仲良しってだけだ。
それに僕はゲイなので絶対にありえないのだ。
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「ありがとうございましたー!」
ドアを開けると、チリンとドアベルが鳴った。
「「ごちそうさまです」」
店を出ると、空は少し曇っていた。
「じゃあ、カズノリ!私このまま大学寄るから!」
「はーい!またねー」
そうして別れて僕は家路をたどっていくと、近所のコンビニまでたどり着いた。特に用もなかったけど、寄ることにした。
コンビニ特有の来店音が店内に響いたが、奥の方の棚では何やら男女が揉めているようだった。カゴを手にすると、女の怒号が来店音をかき消すように轟いた。
「いい加減にしてよ!!ユウキ!」
ユウキ。懐かしい名前だ。いや、さっきも話題に出た男の名前だったのでさほど懐かしさは感じないけれど。
「今回ばかりは勝手がすぎるって!!アタシ言ったよね?家にあがるんなら、事前に連絡しろって!!」
女の方がヒートアップしていく様子が、実物を見ずともよくわかる。用もなかったので、このまま帰ろう。帰って、勉強でもしよう。そう思って、店を出ようと踵を返すと、**バチンッ**という大きな音が背中越しに聞こえた。振り返ってみると、店内にいた多くの人がザワザワと騒ぎはじめていた。近くの人の会話から察するにどうやら女の方が男に手をあげたらしかった。流石に店員も黙ってられない状況だった様で、レジの奥のドアから数人出てきた。
「こわ」
自然と漏れた声が、思いの外大きくて周りの視線が一瞬だけ自分に集中した。肩がビクッと跳ね上がってそのまま店を後にした。
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気づけば、夜になっていた。どうやら家に帰った後、パソコンを立ち上げたもののそのまま寝落ちしてしまったらしい。
「腹が減った」
机に散らばった財布とスマホをポケットに放りこみ、家を出る。歩いているうちに、昼間の男女のことを思い出した。ここまで来たものの、流石に嫌になった。そうは言っても腹の虫は収まるわけでもないので、ためらう事でもないだろうと言い聞かせ、コンビニの駐車場まで着くと、大柄のスーツを着た男が喫煙スペースにいた。
スーツが似合う男だった。ちょっと好み。
そのまま、店に入るといつものように来店音が鳴る。カゴを持って雑誌コーナーを横切って、ドリンクコーナーまで来ると期間限定の割引価格の商品があったので、カゴに数本ペットボトルを入れた。店内には会計レジの音声とBGM、来店音だけが聞こえている。もう、あんな修羅場みたいなことは無さそうだ。あ、そうだ。この際、酒も買ってしまおうと、後ろに人がいるかどうかの確認もせずに勢いよく振り返った。
ドンッと鈍い音と痛みが頭の中心に反響した。どうやら、誰かの身体に顔面からぶつかってしまったようだった。
「いっ!!あ、ごめんなさい!」
「こちらこそ、ごめんなさい!大丈夫ですか?」
反射的に謝ると、思いの外落ち着いた声色で謝られた。ぎゅっと閉じていたまぶたを開くと、そこには先程のスーツ姿の男がいた。顔を見ようにも、目線がネクタイにしか合わない。
見上げると、そこには顔に擦り傷があるイケメンがいた。
「え!?あ、ごめんなさい、怪我!?……」
パニクって大きな声が出てしまったが、もはやそれどころじゃなかった。
「ああ!大丈夫ですよ。これは今、怪我したやつじゃないんで」
「あ、でもすみません」
やってしまった。自分の不注意だったのにフォローされている。どうしよう。
「と、いいますか!」
突然、にこやかな表情になって明るい声色で話し始める男が怖くなった。社会人だろうし、お金とか請求されるんだろうか………
「え?」
「カズノリだよね!」
「え?」
名前を呼ばれて、自然と目が合う。よく見れば知っている顔のように見えてきた。
「覚えてる?高校ん時の!!」
まさか、え?
「中村!?」
「そー!」
え、どういうこと?
もうこの時は思考がとっ散らかって余計にパニクっていた。中村、スーツ似合うなとか、高校の時でもイケメンで有名だったのにさらに垢抜けたな〜、とか色々情報過多になっていたけど……
「まじか!!え!?久しぶりー!」
「久しぶりー!!カズ〜!」
今はとにかく再会が嬉しい!