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第4話 犯罪者なんて嫌です!
「…」
うぅ、気まずい。
昨日、わたしは聖徳太子の肉体にタイムスリップしてしまった。この間は卑弥呼の肉体に。
前科2つ持ちのわたしは、下手すれば犯罪者同等。まだ突発的歴史旅行者(意思と関係なくタイムスリップしてしまう人のこと)だから罪は軽くなるらしいけど…
そんなの嫌です!
ちなみに今は、橘先輩から呼び出しを食らって、校門前で待っている。うっ、視線が痛い。
「お待たせ」
さらりとした髪をボブヘアにきっちりセットしている彼女・橘紫先輩は言った。
「インディゴ・バーガーに行って、話そう」
インディゴ・バーガーといえば、ショッピングモールの近くにあるパン屋。パン屋の中で、特にハンバーガーが専門のハンバーガーショップ。
「はいっ」
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自転車をかっ飛ばしてインディゴ・バーガーに向かうと、すでに橘先輩と赤ちゃんがついていた。
「あの、あなたのこと…」
「普通に赤でいいですよぉ〜」
と言ってくれたので、これからは呼びすてでいく。
青っぽい内装で、わたしはナゲット、橘先輩はインディゴ・バーガー、赤はチーズバーガーを注文。
「お待たせしましたぁー」
小柴と書かれた名札を持つ店員が、青トレーにバーガーとナゲットをのせて渡した。
「それで、歴暦。あなたはいつ逮捕されてもおかしくない。わかってるわよね?」
「…はい」
「なるべく、偉人になったら、何かしないでほしいです。何か迫られたら、史実通りにお願いしますっ。歴史って、詳しいですか…?」
「もちろんですっ」
わ、つい大声で…
赤が美味しそうにチーズバーガーを頬張り、わたしは言った。
「あの、突発的歴史旅行者…でしたっけ。どんくらいの罪の重さになりますか?」
「あー」
橘先輩はポテトをつまみ、
「うーん…罪状によって違うな。歴史を大幅改変したら、存在自体なかったことになる。例外はあったみたいだけど…少なくとも、タイムスリップしただけなら、罪に問われることはない。《《タイムスリップすること》》じゃなくて、《《その先で何かすること》》がタブー」
「歴史警察って、どこの時代が本部なんですか?橘先輩って、なんでタイムスリップできるんですか?」
「あ、そのへんはタブー。言った側も捕まる」
けっこうシビアだな。
「じゃ、わたしは…」
「逮捕されない。今のところね」
ほっ、よかった。
ナゲットを口に放り込む。
「あっ、これはタブーじゃないですよねっ、なんでわたし、タイムスリップしちゃうんですか?」
「うーん…田町に聞かないと」
「誰ですか、タマチって…」
また新しい人が出てきた。
「また言うわ。じゃあ、支払いはこっちで」
いや、校則でおごり禁止なんですが。