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ぼくらは青春ボディーガード①
天空ちさゆ
スポーツ以外、どこにでもいるような才能の俺。
でも、恋愛だけはボディーガード級でした!?
自信作✨です!
では、本編へどうぞ(*・ω・)/
第1話「はじまり」
「今日から2学期か~」
中学校生活に慣れてきた俺・|青陽颯《あおひはやて》は、校門をくぐり、教室へと向かった。
天気はこの日にふさわしい晴れ。
「なんか自然と明るくなるよな。太陽って」
俺の学校は、|小中一貫校《しょうちゅういっかんこう》で、ものすごく人が多い。
そのせいか、たくさんの人で靴箱は混みあって制服がくしゃくしゃになりそうだ。
そして、しばらく廊下を歩いていると、誰かがポンと俺の肩に手を置いた。
「おはよ、颯~」
2学期一番に声をかけてくれた彼・|絹谷凛空《きぬたにりく》は、柔らかな笑みをうかべた。
彼は俺とは幼なじみで、成績優秀を目指している俺からしたら、あこがれの人。
普段眼鏡をかけていて成績優秀だけど、実はイケメンで、先輩だけにモテている。
おかげで、|下駄箱《げたばこ》や家の近くで、毎日欠かさず|先輩方《せんぱいがた》の目線や|叫び声《さけびごえ》を|浴《あ》びている。
眼鏡をはずすとイケメンがバレて(先輩方には分かるらしい)恥ずかしいらしいから、クラスメイトは一切凛空が眼鏡をはずした姿を見たことがない。
プールのときもずっとゴーグルをつけているし、林間学校での温泉のときもゴーグルをつけていたし。
ゴーグルから眼鏡に変えるときはどうしてるのか分からないけど、いつのまにか眼鏡に戻っている。
そんな理由で眼鏡をつけているから、ダテ眼鏡説もある。幼なじみでイケメンの顔を見たことがある俺が聞いても、はぐらかされたりする。
そんなナゾ多き人物だけど、その|痕跡《こんせき》もないぐらい趣味には熱心。
|鉄道模型《てつどうもけい》が安売りで売られてるときは学校を休んでまで買いに行くし、期間限定のやつが買えなかったりしたら、この世の終わりみたいな人相で学校に来る。
まあ、みんなからしてはカンペキな男子だけど、俺からしたらよくわからんオタク。
「おはよう、凛空。今日はおしつぶされずにすんだ?」
「うーん、まあまあかな。」
凛空の|額《ひたい》には、|汗《あせ》がにじんでいた。
……相当毎日苦労してるみたいだな。
「そういえば、今日は期末テストがあるんだっけ?」
「え゛っ゛、そうだっけ!?」
うわ~、算数の記憶なんか夏休みですっからかんになってるよ!
「えっと、凛空は自信あるの?」
「うっ、うん、まあまあかな。特に英語はこの夏休みで|基礎《きそ》は覚えてきたし」
ああ、そっか。凛空って英語が苦手なんだっけ。
たしかに、去年はパフォーマンステストやローマ字の書き取りテストがひどかったっけな。
ソーダをそばって読み間違えて、みんなで大笑いした経験があるし。
「みんな、あのときはびっくりしてたな」
「は、颯は言えないだろ?体育なんか、100メートル10秒台だしさ」
「ま、まあね」
凛空に言われるとなんだかくすぐったいな。
「凛空も球技だけは技を|磨《みが》いてるだろ?」
「ああ、あれは眼鏡の安全を確保するためだけにね」
「ははっ、眼鏡命~」
「ちょっ、しーっ!」
凛空と話してると、やっぱり楽しい。
だって、いつの間にか教室についていたから。
教室のドアを開けると、クラス中に歓声が|響《ひび》き|渡《わた》っていた。
黒板には、『今日から新学期です!期末テスト頑張ろ!☆』と、ハデな色で書かれてあった。
誰が書いたのかは、すぐにわかる。
俺は、たくさんの人だかりのど真ん中に目を向けた。
「|優空《ゆあ》!」
視線の先には、|机《つくえ》にもたれかかって、片手にチョークを持った超美人女子がいた。
「あ、おはよ~颯!元気?」
「元気だけど…ていうかなにやってんだアレ!」
「あぁ、アレ?」
彼女は|七瀬優空《ななせゆあ》。うちのクラスの元気なムードメーカーで、ちょっと有名な芸能人をしている。
自分は芸能人をやる気がなかったらしいが、演技力や美人オーラがすごかったらしいから、小5でスカウトされたらしい。
おかげで委員会やクラブでは「優空ちゃんが入ったら人気出るから」といった理由で、毎日ひっぱりだこだ。
「モテる女は困る」っていうのは本当なんだな。
まあ、|購買部《こうばいぶ》と|演劇部《えんげきぶ》と放送部とダンス部を|兼部《けんぶ》してるわりにはすごいと思うが。
そんな彼女の特技は、絵を描くこと。
優空は、何度も絵画コンクールに出展したり、毎回表彰台にのっているから、テレビや雑誌によくでる。
その才能は、大人顔負けだ。
でも、そんな優空でも、失敗はする。
家庭科の時間に、おなべをひっくり返して班のおかずが|一品《いっぴん》減ったり、算数の時間なのに理科のノートに内容を写してしまったり。
そんなことをやらかしてしまうくらい、はっきりいってドジ。
「アレはね、みんなが元気でるように書いたやつ!上手でしょ?」
優空は、クルクルっとチョークでペン回しをした。
たしかに、ドジなわりにはとても上手い。
ハデだけれど、文字もくずして書いていないし、周りには絵が描かれてある。右下には、優空のサインもあった。
「黒板アートってやつだな」
と、凛空が感心したように言った。
……って!
さすがに怒らなきゃダメだろ。
だって、1,2学期連続でこの様だし。
颯の心の中が悟られたのか、凛空がコホンとせきばらいをして、口を開いた。
「1学期にアレ書いて怒られたの覚えてないのか?」
凛空は、|壊《こわ》れたロボットのように苦笑いする。
なんか、結果が見えてきたような………
「えー!? 今回はちゃんと『です』って書いたよー!?あと、チョークも|割《わ》らなかったし!」
気にするとこ、そこじゃないだろ。
気が付くと、クラス中が笑いの輪に|包《つつ》まれていた。
お腹を抱えて笑っている子。優空と|肩《かた》を組んで笑っている子。
せっかく描いた優空の黒板アートの右下に、らくがきしようとしている子。
それをすかさず優空が見つけて、怒られてるけど。
みんな、バラバラだけれど———
俺は、このクラスが大好きだ。
うちのクラスは、ほかのクラスとちょっと違う。
おもしろくて。
協力が好きで、ピンチに強いクラスなんだ。
まだ中学1年生だけど。
新学期もみんなと一緒に頑張りたいって、強く思った。
中休みのことだった。
「なあ、久しぶりにみんなでバスケやらない?」
俺は、みんなに活き活きと声をかけてみた。
「いいじゃん、やろうやろう!」「ボール、まだあるかなあ」「バスケは人気だからね」
女子、男子構わず『やる』って言えるところが、また俺のクラスのいいところなんだよな。
みんなは|廊下《ろうか》に飛び出して、早歩きで移動し始める。
「あれ、颯から誘っておいて、颯は行かないの?」
「へっ!?い、いや、俺日直だからさ」
「ああ、そっか。じゃ、先行っといて|陣取《じんど》っとくわ」
「ありがと~」
みんなを観察して、ボーっとしてたから余計にびっくりしてしまった。
できれば、俺も早くいきたいけど、日直だから黒板を消さなきゃなんないし。
俺の|苗字《みょうじ》は『青陽』だから、初日なんだよね。
俺はさっと消して、廊下に飛び出し、みんなの後を追った。
グラウンドまで来たところで、俺は首を|傾《かし》げた。
みんな、なんだか悲しそうに目を伏せている。
「あれ?みんなどうしたの?」
「それが……3年生の|蹴《け》ったサッカーボールが和田さんの顔に当たってしまって」
「そしたら、3年生が、へらへらして笑ってるの」
「それを見て、和田さんが『そんな態度はないだろ』って言ったら、『1年生のくせにいばるな』って言われて……」
「俺が|突《つ》き|飛《と》ばされたっ……」
最後に、|和田功助《わだこうすけ》が半泣きになりながら颯に訴えた。
「ひどい……」
俺は、耳を|疑《うたが》った。
和田功助。俺の次に来るリーダー的|存在《そんざい》だ。
よく見ると、功助の額が赤くなっている。
……許せない。
「ちょっと言ってくる」
「あっ、待って!」
「颯までケガするよ!?」
俺は止めるみんなを無視して、サッカーボールを
「|謝《あやま》ってほしいんですけど」
「はあ?なんだこのガキ」
「まだ1年のくせに、生意気だなぁ」
3年生の一人が、手を突き出した。
また、突き飛ばすつもりなんだ。
俺はすかさず、突き出した手を受け止める。
「あ?なんだこいつ」
「さわんなクソガキっ!」
3年生が手を|振《ふ》り|払《はら》った。
「ボールが当たっても謝らないなんて、生意気なのはそっちじゃないですか」
「こいつっ……」
颯が冷たく吐き捨てると、意外そうに眉を引きつらせる。
そこへ、体の大きい3年生が、一歩前へ出た。
「なら、オレたちとサッカーで勝負しようぜ」
「勝負?」
「颯っ……」
「青陽くんっ……」
後からみんなが走ってきた。
「お前とオレ達3人で、勝負するんだ。お前が勝ったら、謝ってやる。オレたちが勝ったら校長に向かって『ハゲー!』って叫ぶんだな。どうだ?」
ふうん、面白い罰ゲームだな。
でも、そのことが井田先生に伝わるなんてことはイヤに決まってる。
「引き受けるよ。その勝負」
「は、颯!大丈夫なのか……?」
「いくら颯でも、無理があるんじゃない?」
「大丈夫。俺に任せてよ」
ボールは……全然はねる。
3年生3人は、やたらとニヤニヤしてる。きっと、勝てるって思ってるんだ。
いける。
「キックオフ!」
最初は細かいドリブルから。
フェイントもいれながら、一瞬で3人を|追《お》い|越《こ》す。
試合より全然人がいないし、たくさん動けるから楽勝かも。
ゴール前まで近づいて来たとき、追い越した3人も追いついてくる。
まあ、相手は中学3年生だしな。足の速いのもトーゼンだ。
そのうちの1人が、いきなり颯に向かって|突進《とっしん》してきた。
ケガをさせてでもボールを取ろうってわけだな。
でも、そんなルール|違反《いはん》、俺はきらいだ。
ここからは、つま先でドリブル。
つま先でドリブルすると普通の人はボールが遠くに飛んで行って、追いつけなくなってボールを取られるけど、俺は違う。
なんてったって俺は————3年生より足が速いから!
|一瞬《いっしゅん》で3年生の間を突き抜け、一瞬でゴールキーパーの前までくる。
ゴールキーパーが目を丸くしてる|隙《スキ》に————
決める!
ドサッ
「ゴーーール!」
あっという間に、グラウンドは|歓声《かんせい》に包まれていた。
「颯くんっ……!」
「青陽、やったな、やったな!」
「う、うん」
さっき額をケガした功助は、俺の|肩《かた》をつかみ、ぐわんぐわん|揺《ゆ》らして喜んでる。
……でも、元気になってよかった。
「俺たちが勝ったから謝ってもらえますか、先輩」
俺が3年生を見回すと、目をそらしてつぶやいた。
「……ごめん、オレたち、調子に乗ってた」
「悪かった…」「ごめん……」「オレも……」
勝負を持ち掛けてきた大きい先輩が謝ると、周囲の人が頭を下げた。
「大丈夫です。俺、先輩と勝負して楽しかったです」
「私も、見てて楽しかった」「オレも!」「僕も、見ててハラハラしたな」
みんなが、楽しそうに口々に言う。
俺も、心の底から、楽しいって思ったかも。
その昼休みは結局、3年生とバスケをすることになったのだった。
終業式と大掃除が終わって、昼休みに入るころ。
「颯、凛空。」
薄暗い廊下に教室から顔を出し、優空が手招きしていた。
目立ちたがりの優空が目立たないところに呼び出すのは珍しい。
「ちょっとだけ重大な話だから、よく聞いて。」
「ちょっとだけかよ……」
ちょっとだけなら、呼び出さないでほしかったが。
まあ、聞いてあげよう。
「ちょっとだけ長くなるかもだけど…——」
私・七瀬優空は、現在、そんなに芸能界の仕事が来ない状況だ。
うちのマネージャー・|文子《ふみこ》と悩んでいたとき、文子がこう言ったの。
「そうだわ、うちの友達が秘密の館の|執事《しつじ》らしいなのよ。だから、許可を取ってもらってその秘密を探るわ!」
って言いだしたの。
その|館《やかた》の秘密は知りたいし、ちょうど仕事がなかったから、「やりたい」って言ったんだ。
スタッフと協力して許可をとるために電話をしたけど……
結果はNO。
しかも、電話したスタッフに話を聞いてみたらね、
『ぜーったいダメですってメチャクチャ怒られたし、電話はすぐ切られた』ってイライラしながら言ってたのよ。
私、あれ?って思ったの。
文子の友達が秘密の館の執事って知ってるんなら、秘密を知られてもよくて執事は話したんでしょ?
でも、ダメだってメチャクチャ怒られたらしいのよ。
「ね、おかしいでしょ?気になるくない?」
「うーん、まあ……」
俺は言葉を|濁《にご》した。
マズい。この流れだと————
「だからさ、そこに行って秘密を聞きだそ——」
「ダメだ!」
優空が言い終える前に、びしっと言ってやった。
優空はそんなことすると絶対といってもいいほど失敗する。
2回言うけど、はっきり言って、ドジだ。
それで芸能界に入れたのが不思議なレベルにあたるほど。
自分でも自覚してないのか、失敗したことを何度もやりたがるし。強い根性があるっていうのか。
「でもでもっ、スゴイ気になる話じゃん?凛空も気にならない?」
「僕は優空がなにをやらかすかが気になるんだけど。」
「うっ……」
そこでようやく気づいたように、優空はにがーい顔をした。
でも、何かを見落としているような———
なぜだか俺は、人生で一番大切なことを聞いたような気分になった。
結局俺は、とりあえず、頭のすみっこに置いておくことに決めた。
次回、どんどん颯がタイトルに近づきます!
いろいろあって投稿が遅いと思いますので、そこはご了承ください🙇
コメントよろしくお願いします( `・∀・´)ノ