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愛想がなさすぎて孤立した人の話。〜もっと愛想を振りまいておけばよかった〜第一章 新学期の出来事I 記憶喪失編Ⅲ
I組ーーその言葉が心に重く響いていた。でも、今の私では『人』に関することは思い出せない。
覚悟して教室に入らなければ。
ガラッ
私は意を決して教室の扉を開けた。
だが、教室に入ったはいいものの何を手伝えばいいのか分からなかった。
私のほかにも女子が二人と男子が二人いて、その人たちも教室の周りをウロウロしていた。
私も、しばらく入り口付近をうろついた後、黒板の前に立っていた女性に声をかけた。
おそらくこのクラスの担任の先生だろう。
「ええっと…あの……どの掃除をすればいいですか?」
「ああ、お手伝いの子ね。じゃあ黒板消しを頼もうかしら。」
「はい。がんばります。」
私は黒板消しを手に取り、黙々と黒板に書かれた文字を消していった。
そのとき、急に後ろから肩をたたかれ声をかけられた。
「おう。玲奈、がんばろうな。」
私は突然のことに困惑しながら、口を開いた。
「あ、はい。」
声をかけてくれた男の子はハッとした表情でこう言った。
「ああ!ごめんごめん。分からないんだったな。気を付けるよ。」
私は配慮してもらうことはあたりまえではないと思っていたので、なるべく丁寧な言葉を使った。
「ありがとうございます。」
「いやいや、大丈夫だよ。それより掃除頑張ろう。」
「はい。」
そう会話をした後、私は聞き忘れていたことを聞いた。
「あの、そういえば名前って…。」
「あ~そうだよな。言い忘れてた。俺の名前は|寛人《ひろと》。よろしく。」
「よ、よろしくお願いします。」
その会話がおわり数分後に掃除終わりのチャイムが鳴った。
キーンコーンカーンコーン
ちなみに、1組の掃除当番が派遣されたのは1組で欠席者が多くいるので人手が足りないからということだったらしい。
「じゃあお手伝いに来てくれた子~。明日もよろしくね。」
「はい。」
そういって自分の教室に戻った。
とはいえ、昼休みに教室でやることがなかった。
外は雨、廊下は濡れて滑る。
本当に何もできない。
「仕方ない…絵でも描いているかぁ~。」
私は自分の机の中にあったノートとペンを取り出した。
まずは下書きから。
ほっそりとした顔に長く伸びた指、きれいな|瞳《め》に、にっこりと微笑んでいる口もと、ほんのりと赤らんでいる頬。
私の思うきれいな女の人を描いた。
そして最後のペン入れ。正直言うとこれが一番大事。
いくらきれいに下書きが描けていても、ペン入れで台無しになることが日常茶飯事だ。
私は慎重にペンを握ると、なるべく線がガタガタにならないようにすばやく手を動かした。
ようやく、最後の線を書き終えた。
私なりに上手く描けたと思う。大成功だ。
その瞬間ーー教室の後ろから女子の笑い声が聞こえた。
「ぷっ…。あんなのに|本気《マジ》になってバカみたい、、、。」
「ちょっと~…ふっ…バカなんだから仕方ないじゃん…。」
「二人とも…やめてあげなよ~…クスクス…」
そんな馬鹿みたいなことをぬけぬけと言っていた。
もう悪口だろ。あんなの。
私は何の恐怖も抱かずに彼女たちの元へ近づいて行った。
すると、その|群れ《かたまり》にいたボス格の女子が笑いをこらえながら言った。
「ちょ…ちょっと~そうマジにならないでさ~ぷっふふっ…もうちょっと穏便に…。」
だが私は|怯《ひる》まずにすかさずツッコミを入れた。
「いやいや。最初に喧嘩売ったのはあなた達でしょ。これを穏便に済ませたかったなら口を慎むべきだったわね?」
少し目を吊り上げながら、なるべく怖がってもらえるように言った。
怖いって相手が思った瞬間にこっちの勝ちは確定しているから。
「な…なによ!ちょ、ちょっとからかっただけでしょ?!そんな怒らずに…。」
私はそこで一発言ってやった。
「人のやっていることをいちいち|揶揄《からか》うのって私のこと、そんなよく見てくれてるんだー?嬉しいな~。」
私はわざと、ムカつかれるような言い方をした。
相手は思った通りにムカついてくれているらしい。
正直、誰だかわからない人たちに向かって、こうゆう事言うのは怖い。
でも、今はそんなこと思っていい場合じゃない。
私を馬鹿にされた。私の好きなことを馬鹿にされた。私のほうがむかつきまくっているのよ。
そんなことを考えているうちに展開が進んでいて、女子の手がこっちをめがけてとんできた。
そういえば|この女子《ボス格》、こうゆう奴っぽかったわ。
「せいっ!」
私はボス格女子の手を横に流し、足で顔をける振りをした。
まあ寸止めというやつだ。
「きゃっ。な、なによ?!」
|この女子《ボス格》は、いきなり可愛こぶった驚きを見せたあと、詰め寄ってきた。
「ちょっと!どうゆうつもりよ!」
ぷんすこぷんすこと、怒っているふりをしている…おそらくだけど。
「どうゆうつもりって…どうゆうことですか?」
「だから!私を蹴ろうとしたでしょ!それがどうゆうことか聞いてるの!!」
ほんとに、とことん理不尽だな…この女。
「あのね、あなたは最初、私に何をしましたか?殴りかかってきたよね?」
「知るか!ってか、殴ってないし!!」
「だから、殴りかかってきたって言っただけで、殴ってきたとは言ってないよ?」
馬鹿か…。言葉をちゃんと意味通り認識してほしい。
「もうどうでもいいわ!あんたこそ、私を蹴ろうとしてたでしょ!?あれこそ問題でしょ。」
「なんでそうなるの?私に殴りかかってきたんだからあなたも同罪でしょ?違うの?」
「っ!い、いちいち、う…うざいんだよ!!」
そう言葉を投げつけボス格女子は取り巻き達と教室の隅の方へおずおずと去っていった。
勝ったな。
そう思った瞬間に先生が出てきて、
「何があったんだ?」
そう尋ねてきた。
いやいや、出てくるのが遅いよ。
私は渋々先生からの質問に応じた。
「あの女子が私が絵を描いているのを揶揄ってきたので、ちょっと言い返したらいきなり殴りかかってきたんです。それでムカつきまくったので蹴るふりをして撃退しただけですが、何か?」
先生ははぁ〜と深いため息をついた。
「そうゆうことか…玲奈。やり過ぎだ。」
私は驚いた顔を見せた後にこう言った。
「え…?な、|何が《・・・》ですか?」
今、正直だいぶ困惑している。一体全体、何が問題だったんだ?
「だから、蹴るふりなんてやり過ぎだ。お前ならもう少しいい対応ができたと思うんだが…。」
…やり過ぎ?|お前なら《・・・・》って期待しないでよ。私は私だ。
「先生。殴りかかられて、散々馬鹿にされて、私がどんな気持ちだったか想像できますか?」
「…。」
先生は困ったが故に黙りこくってしまった。
「できないですよね。だったら余計な口出ししないでください。」
「…っ!余計ではない。児童同士の喧嘩だろ?止めるのが余計になるか?ならないだろう。」
私の言葉に先生は少し怒り?だかよく分からん感情を乗せた言葉を飛ばしてきた。
「いいえ。喧嘩でも、そこから学び成長することだってできるんですよ。」
「そんなことっ…」
「できます。質が低い、馬鹿馬鹿しい喧嘩だったら止めてほしいですが、これは違います。彼女達が成長するチャンスなんですよ。いかに自分の考え方が愚かだったかを考え直すチャンスです。」
「なっ……だが、蹴るふりなんて…」
「だから、あっちから殴りかかってきたから同等の力で仕返ししたまでです。」
私は正論を言ったつもりだが、やはり先生に言い返すのは怖いな。
一昨年の先生は、言い返すたびに怒鳴ってたもんな。
「……また後で呼び出して話を聞くから、、その、すまなかったな。」
よし。先生も分かってくれたみたいだ。
あと、だいぶ気になっていたことがある。
私が襲われたあの日、なぜ学校側は避難指示を出したのか、犯人はなぜ、|6年フロア《3階》まで侵入できたのか…そもそも、なぜ私を襲ったのか。
色々気になっていたから調べたりしていたが、なんとなく分かってきた。
そう。あの事件の全貌が見えてきたのだ。やっと、犯人の尻尾を掴めるーーーー