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悠祐さんとるあまで「あの夏が飽和する。」
るあま「昨日人を殺したんだ」
君はそう言っていた。
梅雨時ずぶ濡れのまんま
部屋の前で泣いていた。
夏が始まったばかりというのに
君はひどく震えていた。
そんな話で始まる、
--- あの夏の日の記憶だ ---
るあま「殺したのは隣の席の、」
るあま「いつも虐めてくるアイツ。」
るあま「もう嫌になって、肩を突き飛ばして、」
るあま「打ち所が悪かったんだ。」
るあま「もうここには居られないと思うし、」
るあま「どっか遠いとこで死んでくるよ。」
そんな君に俺は言った
悠祐「それじゃ俺も連れてって」
財布を持って
ナイフを持って
携帯、ゲームもカバンに詰めて
悠祐「いらないものは全部、壊していこう?」
あの写真も
あの日記も
るあま「今となっちゃもういらないさ。」
るあま「人殺しと」
悠祐「ダメ人間の」
二人「君と俺の旅だ。」
そして僕らは逃げ出した。
この狭い狭いこの世界から。
悠祐「あっちや!」
るあま「うん!」
家族もクラスの奴らも
|__「なんであの子みたいにできないの?」__《「あいつらまだいる!いじめてやろうぜ」》
何もかも
るあま「もう誰も居ないんだ!自由なんだ!」
悠祐「早くもっと遠くに行こうや!」
全部捨てて君と二人で。
遠い遠い誰も居ない場所で
悠祐(二人で死のうよ)
もうこの世界に価値などないよ
人殺しなんてそこらじゅう湧いてるじゃんか。
悠祐「|君《るあま》は何も悪くないよ。」
るあま「え…?」
悠祐「るあまは何も悪くないよ。」
るあま「…ありがとう」
『結局僕ら誰にも愛されたことなどなかったんだ』
そんな嫌な共通点で
僕らは簡単に信じ合ってきた。
君の手を握った時
ギュッ
るあま「?」
微かな震えも既に無くなっていて
悠祐「いや…なんでもない」
誰にも縛られないで二人
線路の上を歩いた
金を盗んで
「コラー!」
二人で逃げて
るあま「うわー!」
悠祐「こっちや!」
どこにも行ける気がしたんだ
今更怖いものは僕らには無かったんだ。
額の汗も、
落ちたメガネも、
悠祐「メガネ落としたで?」
るあま「今となっちゃどうでもいいや」
あぶれ者の小さな
るあま「逃避行の旅だし」
悠祐「いつか夢見た優しくて、誰にも好かれる主人公なら、」
悠祐「汚くなった俺達も見捨てずにちゃんと救ってくれるんかな?」
るあま「そんな夢なら捨てたよ。」
るあま「だって現実を見てよ」
るあま「《《シアワセ》》の四文字なんて無かった」
るあま「今までの人生で思い知ったじゃないか」
るあま「自分は何も悪くねえと、誰もがきっと思ってる。」
悠祐「…せやな」
あてもなく彷徨う蝉の群れに、
水も無くなり揺れ出す視界に、
迫り来る鬼たちの怒号に、
バカみたいにはしゃぎ合い、
るあま「…」
カチャ
悠祐「…るあま…?」
ふと君はナイフを取った
るあま「アニキが今までそばにいたからここまで来れたんだ。」
るあま「だからもういいよ…」
るあま「もういいよ。」
るあま「死ぬのは俺一人でいいよ!」
悠祐「…!待てッ!るあまッ!」
ザシュッ
…そして君は首を切った。
まるで何かの映画のワンシーンだ。
白昼夢を見ている気がした
悠祐「…はッ」
気付けば俺は捕まって。
悠祐「るあま…?どこや、るあまっ!」
君がどこにも見つからなくって。
君だけがどこにも居なくって_
そして時は過ぎていった
ただ暑い暑い日が過ぎてった。
悠祐「…」
家族もクラスの奴らも居るのに
なぜか君だけはどこにも居ない。
悠祐(どこにおるんや…)
あの夏の日を思い出す。
俺は今も今でも歌ってる。
君をずっと探しているんだ
君に言いたい事があるんだ。
九月の終わりにくしゃみして、
悠祐「はくしゅんっ」
六月の匂いを繰り返す。
悠祐「ああ…」
君の笑顔は、
君の無邪気さは、
今も頭を飽和している。
悠祐「誰も何も悪くないよ。」
悠祐「君は何も悪くはないから」
悠祐「もういいよ、投げ出してしまおう?」
るあま「…アニキ…っ」
悠祐「はッ」
悠祐「夢、か…」
そう言って欲しかったのだろう?
悠祐「なあ_」
ちなみに人は人生で約16回殺人鬼とすれ違うらしい。
これ知ってる人割といるかもなあ〜
そして文字数は1737文字
やっとおわた