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#18
--- あれから数日後 ---
トレーニング室
「そういえばレノ」
そう声をかけたのは伊春だった。レノは汗を拭いながら、首だけで応える。
「ん?どうしたんだ」
「音葉師団長いんじゃん」
「その人がどうした」
「なんかよ、あの人の動き、人の動きじゃねぇっていつも思うんだよな」
伊春はスマホを取り出し、録画した動画をレノに見せる。
画面には、信じられないほどのスピードと精度で動く音葉の姿が映っていた。
「ていうかそれいつ撮ったんだよ」
レノが引き地味に尋ねると、伊春は少し得意げに答える。
「あ?あぁ、この前師団長に訓練付き合ってもらった時に、参考にって撮ったんだ」
レノは再び汗を拭いながら、「そっか」とつぶやく。
「まぁたしかに。俺から見ても、人のできる動きじゃないのはわかる」
「だろ?これってよぉ、どうやってもできないんだよなぁ」
伊春は感心したような、悔しいような表情で呟いた。
--- ある山の中 ---
「音葉師団長、何か用ですか?」
とカフカが音葉師団長に言った。ふたりきりの静かな山中に、風が吹き抜けていく。
音葉は、静かに、だが重い口調で語り出した。
「…お前が怪獣8号って知ってから、複雑で」
「仲間であり、敵であり…なんとも言えない気持ちで」
カフカは、その複雑な感情を真正面から受け止めた。やがて、カフカは意を決したように問いかける。
「昔…何かあったんですか。怪獣に何かされたとか」
音葉は目を閉じ、遠い過去を思い出すように語る。その声は、微かに震えていた。
「…十数年前、怪獣9号によって僕の…家族は殺された」
カフカは息をのんだ。
「…っ!」
音葉は、苦しみを押し殺すように続ける。
「だから…怪獣8号であるお前が…怖いんだ」
「音葉師団長…」
カフカは、その言葉に、ただ名前を呼ぶことしかできなかった。
終