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1.消える日常
いつもの下校路をいつものメンバーで歩く。
正直、友達と話を合わせるのは大変だ。
何にも面白くないのに笑わなきゃいけない。
私はそんな友達が嫌いだ。
友達とやっと別れて自分の家に入る。
家に入った途端、体の力が抜けてその場に座り込んでしまった。
玄関扉に寄りかかり、リラックスする。
バックに入れたスマホの通知音が聞こえた。
重い腕をなんとか動かし、スマホの画面を見る。
「‥からぴち様の新着動画だ」
体の重みはどこへ行ったのかと聞きたくなるくらいには指がスラスラと動く。新着動画をタップし、再生する。
スマホから聞こえるその声に癒されるのは、きっと私だけではない。皆それぞれの推しの声、全員の賑やかな雰囲気に癒されるんだ。
「__楽しそうでいいなぁ、からぴち様。__」
いつもはどんなに気分が落ち込んでても動画を見れば元気になれるのに、今日はなんだか元気になれなかった。
『からぴちって何?彩芽ちゃんそんなのが好きなの?』
「…」
さっきの友達の声が頭に響く。
私のせいでからぴち様が侮辱されたように感じてしまったのだ。私が馬鹿だったから、なのかな。
キラ…
「…え?」
なんでスマホが光ってるの?明るさ調整間違えた?
キラキラキラ…
「違う、これ勘違いじゃない!!」
スマホを思わず投げようとしてしまった。けれど、腕は思うように動かなかった。
「な、なんで!?」
私はその眩しさに思わず目を瞑ってしまった。
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カシャン…
玄関の靴脱ぎ場に一台のスマホが落ちた。
スクールバックとスマホだけが玄関に残り、そこにさっきまでいた少女はどこかへ消え去ってしまったのだ。
ガチャ…
「ただいま〜…って、彩芽?」
現実世界から、いなくなってしまったのだ。