公開中
2「あの!文句を!言いに!来ました!!」
萌花side
【コメント欄】
コメント:ヤバいヤバいヤバいヤバい!!
コメント:起きて萌花ちゃーーーーーん!!
コメント:救援まだ!?
コメント:神様、お願いしますどうか助けてください
コメント:死なないで!!
コメント:あぁ!蜘蛛やめて!!!
阿鼻叫喚のコメント欄。それもそのはず、リスナーが見ているのは命の摂理。
蜘蛛との戦闘中、切り落とし損ねた二本の足で吹き飛ばされて頭を打った萌花はそのまま気絶。
弱肉強食。戦闘に負けた弱者が今、戦闘に勝った強者の糧とされようとしているのだ。
ここにいるリスナーの想いはただ一つ。『奇跡よ起きろ』
---
明side
「着いたっ!!どこら辺かわかるリスナーいる!?」
コメント:萌花ちゃんリスナーです。今萌花ちゃんがこのダンジョンの40階層で身動
きが取れなくなっています。お願いします。助けてください。
コメント:萌花ちゃんリスナーです。今萌花ちゃんがこのダンジョンの40階層で身動
きが取れなくなっています。お願いします。助けてください。
コメント:萌花ちゃんリスナーです。今萌花ちゃんがこのダンジョンの40階層で身動
きが取れなくなっています。お願いします。助けてください。
コメント:ボス部屋!急いで!!
コメント:萌花ちゃんリスナーです。今萌花ちゃんがこのダンジョンの40階層で身動
きが取れなくなっています。お願いします。助けてください。
コメント:萌花ちゃんリスナーです。今萌花ちゃんがこのダンジョンの40階層で身動
きが取れなくなっています。お願いします。助けてください。
「マジで連投やめろって!今それどころじゃないんだからっ!あぁ、クソッ」
恐らく情報をくれたコメントもあっただろうに、連投のせいで全く読めなかった。
配信中は悪態は吐かないように気をつけているが、こればかりは仕方がない。
仕方なく、走って探す。刻一刻と迫るタイムリミットに焦りが募る。
「無事でいてくれ⋯!」
最早居もしない神にも縋りたくなった時―――
「っ!見つけた!」
ぼんやりと目を開ける萌花さんの姿がそこにはあった。
俺は彼女を守るべく、蜘蛛と萌花さんの間に入る。
蜘蛛モンスターは切り落とされて二本となった足を器用に使って跳躍してくる。
それを剣で切り裂く。事切れた蜘蛛を見て、これで終わりかと思ったが―――
「まだいるねぇ!?」
十匹ほど奥から出てきた。恐らくまだまだ出てくるだろう。
後ろで萌花さんが体を起こす気配がするが、多分もう戦えないだろう。
「あの⋯あなたは⋯?」
「ちょっと戦いながら話すので聞いてもらっていいですか!?」
「は、はい!」
蜘蛛モンスターは体は柔らかいから切りやすい。
注意すべきは毒を孕んだ糸の攻撃。まぁそれも避けてしまえばさして脅威ではない。
俺は蜘蛛をバッサバッサと倒しつつ、萌花さんに向かって叫ぶ。
「あの!文句を!言いに!来ました!!」
「ふぇ!?」
コメント:初対面で何言ってんだ?
コメント:当たり前のように戦いながら話すな
コメント:なぁ、目で追えないんだけど。
コメント:これでスキル使ってないは嘘だろ⋯
「君の!所の!リスナー!マナーが!なってねぇぇぇえええ!!!」
「え?あ、はい!すみません!」
コメント:八つ当たりだろ
コメント:やっぱ連投キレてたか⋯
コメント:動きはマジでカッコいいのに⋯
コメント:助けに来た奴のセリフじゃないんよ⋯
バク転して蜘蛛の攻撃を避ける。そして、飛んできた別の蜘蛛の腹を下から裂く。
グニョっとした嫌な感触と共に蜘蛛は真っ二つになった。
蜘蛛を倒しながら、俺は怒りを覚えていた。
「もっと!教育してよぉ!連投!ばっかで!具体的に!どこに!要救助者が!いるのか!わっかんねぇんだよぉぉぉぉおおおお!!!!!」
「は、はい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
コメント:おい、萌花ちゃんが可哀想だろ
コメント:やめてやれよ
コメント:叫びつつちゃんと蜘蛛倒してるのなんなの⋯
コメント:コメントしたリスナーが悪いだろ⋯
コメント:お前はそういう奴だよな⋯
俺は最後の蜘蛛の元へ走る。大きなジャンプをして―――
「いいかリスナー!お前らが悪いことしたら――――お前らの推しに苦情言ってやるからなぁぁああ!!」
真下にきた蜘蛛の胴を貫いた。
---
萌花side
「⋯ん」
ぼんやりと目を開けて周りを見渡す。
あれ?私、何してたんだっけ?確か――――
コメント:萌花ちゃん!?
コメント:起きたか⋯
コメント:けど、もう⋯
コメント:は!?
コメント:救助か!?
コメント:すげぇ速い!
コメント:多分配信者だよな!?こんな奴いたかな⋯
のろのろと起き上がると、男の人が蜘蛛と戦っていた。
「あの⋯あなたは⋯?」
「ちょっと戦いながら話すので聞いてもらっていいですか!?」
「は、はい!」
コメント:とりあえず⋯救助に来たんだよね?
コメント:よかったーーー!!!
コメント:え、全然攻撃見えない!
コメント:瞬きしたら蜘蛛が真っ二つになってるんだが?
コメント:この蜘蛛って雑魚だっけ⋯?
コメント:いや。レベル70のモンスター
コメント:ボス部屋だしな⋯
「あの!文句を!言いに!来ました!!」
「ふぇ!?」
見惚れてしまうほど綺麗な太刀筋。
しかし、その太刀筋とは裏腹にどこか間の抜けた声の男の人は文句を言いに来たらしい。
コメント:は?
コメント:え?
コメント:聞き間違い?
コメント:?
コメント:文句⋯?
「君の!所の!リスナー!マナーが!なってねぇぇぇえええ!!!」
「え?あ、はい!すみません!」
思わず反射的に謝る。
けど、マナー⋯?助けと答えを求めるべく私はコメント欄に目を移した。
コメント:!?
コメント:俺達!?
コメント:誰か何かしたの?
コメント:救援行こうとしてる時に連投してたんだよ。
その連投のせいで情報が流れた。だからちょっと遅れた
コメント:何やらかしちゃってんの?
コメント:そりゃキレるわ⋯
コメント:人命かかってる時に連投って⋯
「もっと!教育してよぉ!連投!ばっかで!具体的に!どこに!要救助者が!いるのか!わっかんねぇんだよぉぉぉぉおおおお!!!!!」
「は、はい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
多分、正当なことを言っているはずなのにどこか情けなく聞こえるのはどうしてなのだろう⋯?
けれど確かにこれは私の監督不行きだ。ペコペコと頭を下げて謝る。
けど、戦ってる彼は私を見ることもなく、蜘蛛を切り刻んでいた。
コメント:動きがすごすぎて話が入ってこない
コメント:萌花ちゃんめっちゃペコペコしてる⋯
コメント:頭打ったんだからあんまり動かさないで⋯
コメント:この人の配信枠見てきた。マジで埋まるぐらい連投されてた
コメント:マジでさぁ
「いいかリスナー!お前らが悪いことしたら――――お前らの推しに苦情言ってやるからなぁぁああ!!」
コメント:ごめん笑った
コメント:萌花ちゃんポカーンとしてる
コメント:推しの珍しい顔が見れた
「⋯カッコいい⋯動きが」
コメント:動きが
コメント:動き〝が〟
コメント:うん。そうね
その後、言いたいことを言い終えたのか男の人は「あ、治癒魔法かけときますけど、後で病院行ってくださいね?」と言ってあまり使い手のいないはずの治癒魔法をかけてくれた。
そして私のお礼も禄に聞かずに足早に去っていった。
「あ、名前⋯」
聞き忘れたと気づくのは男の人が嵐のように去っていった数分後のことだった。