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3・先輩
アントロ
実はこれ、アルファポリスで投稿予定なんですよ。
先にここで反応を試してみたくて出しました。
衣装や機材を手に入れたからと言って、すぐに配信を始める訳ではない。
まずはTwitter等のSNSで知名度を上げていく。
何月何日に初配信をします、こういうキャラクター性です、こんな事が得意ですetc...。
自分について紹介していき、興味を持ってくれる人を集める。
そんな事をコツコツ続けた結果、Twitterのフォロワーは500人ほど集まった。
それまでの工程で分かった事がある。どんなツイートをするといいねが増えるのか、どの時間帯だと増えやすいのか、興味を持った人の傾向、反応、どのタイミングでフォローしたのか。
私は本気だった。
人生で一番努力した。
情報を解析して、一番最適な行動を取れるようになった。
「配信始める前から500人...凄いねー...私は結構前から活動してるけどまだ600人だよ...」
「多分ユイもツイートの仕方は上手いんだけどやっぱり初期の方が伸びがいいんじゃない?」
「気になった人がフォローしまくった結果って事か...」
「うん。だから伸ばしたいなら他の人と絡むとか。コラボって結構伸びるみたいだよ」
他の配信者の過去の配信を見ても、雑談よりアーペックス等のゲームのコラボの方が伸びる傾向にある。
「演技なら...コラボして短いドラマでも撮ったらどうかな」
「おぉ! 1人じゃできない事も、コラボならできるもんね!」
ユイは『ありがとー!』と手を振り、早速気になっていた人にDMを送る事にした。
ユイも頑張っている。いつも専門学校へ行く為の勉強に加え、独学で芸能を学んでいるらしい。
寝る時間ギリギリまで勉強し、裕福ではない中、工夫して美容に気を付けて、学校でも完璧でいる事を振舞っている。
ちなみに私は相変わらず学校では根暗で、母が死んだ時は数人が同情して話しかけてきたが、それも数ヶ月するとなくなり、また私は独りぼっちになっていた。
休み時間は暇になるので、今後の活動予定や、細かいキャラ性を詰めていった。
屋上へ続く階段には人が滅多に来ないので、絶好の作業場だった。
「病みを入れた方がいいのか...でもそれだとアンチも付きやすいよな...」
「やっぱり100%穢れのない生意気っ子がいいか...?」
皆から愛されるキャラクターを求め、長考する。
「ふーん」
「......えっ?」
「配信者希望??」
「!?」
後ろを振り返ると、小動物っぽい雰囲気を醸し出す、可愛らしい少女が立っていた。
「あ、あっ、これはっ...」
「見ーーせてーー」
「あっ」
ほぼ無理矢理ノートを奪われ、中を読まれる。
そこには見た目やキャラ性、さらにはTwitterでの活動で分析したデータまで書かれてある。
「ふんふん...ふーむ」
「あの...こ、これは秘密に...」
「ん? アッハハ~ばらさないって。だってこっちも...」
「配信者だもん♪」
アイドルっぽくウインクをし、目元でピースサインをする。
手慣れてないとここまで完璧にポーズは取れない。本当に配信者の様だった。
「まぁ配信者って言ってもアイドルに近いんだけどね~。事務所にも所属してるから検索かけてみなよ」
「事務所...? アイドル配信者...」
そこで一つ頭に浮かぶ事務所名があった。
「ハナプロ...?」
「あれ? 知ってる? 市場調査結構やってんねぇ」
「えっえっ、じゃあもしかして貴方...」
意識してみると、どんどんそれに、彼女にそっくりに見えてくる。
「みこちことフラワープロジェクト所属、獅子堂ミコトだよ~」
「みこち...!」
最近爆発的な人気を誇った【フラワープロジェクト】、通称ハナプロの大人気リーダー、みこちだ。
「同じ学校だなんて...そんな...」
「ふふ~そうそう、今思い出したけど、これ見るに君は...」
ノートをひらひらさせながらおでこを指で押される。
「リリカちゃん、でしょ」
「!」
リリカは、私が使っている名前だった。でも、何でこんな売れっ子配信者に私が認知されているんだ...?
「なーんか人気でそうだなーってちょっと気になってたんだよ。まさか同じ学校とは思わなかったけど。それも...」
「それも?」
「メイクなしでここまで可愛いのに根暗で陰キャな不思議ちゃんだとはね」
「ふしぎちゃん...?」
にぃっと笑ったみこちは、やはり可愛くて、生で見るのは少しだけ憧れていた私には刺激が強い。
「ふふ。あっそうだ、明日もここに来たらいいこと教えてあ・げ・る! センパイとしてねー」
それだけ言って、みこちは金髪のロングヘアを揺らして帰ってしまった。
金髪ロングのみこちは登録者80万の有名な配信者な上に、アイドル業もこなす天性の芸能人です。