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第十話 & お知らせ
【前回のあらすじ】
事が落ち着き、思い思い過ごす沙雪一同。
しかし、灯和だけが見回りから帰ってこなかった……
皆が布団に潜り眠る中、沙雪は不安や緊張で眠れなかった。
しかし、火影の言葉によって安心して眠りについた。
火影はゆっくりと立ち上がり、灯和の元へ向かうのだった……
〜火影 side〜
沙雪がようやく寝た。
おそらく、非日常的な生活で不安になったのだろう。
眠れなかったのも仕方がない。
……それよりも、灯和はどこへいったのだろうか。
私は音を立てぬようにゆっくりと立ち上がった。
そして、部屋をゆっくりと見渡す。
火影「………はぁ…」
沙雪は先ほどまでの緊張がほぐれ、安心した表情で寝ている。
猫葉も竜翔も布団に潜って大人しく寝ている。
ただ一人、天舞は掛け布団を蹴飛ばして壁まで転がってしまっている。
なんてひどい寝相だ。
そんな天舞に私はそっと近づく。
火影「…………よっ……」
起きないように天舞を抱き上げ、布団まで連れていく。
そして布団に寝かせた後、掛け布団をかけ直した。
もう一度立ち上がって、全員の顔を見る。
自然と頬が緩んだ。
火影(……皆の前で笑ったのは、もう何十年前だろうか…)
そんなことを考えながら、私は襖の外へ出た。
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外は雪が降りそうなほど冷え込んでいた。
月が真上にあるのを見るに、今は丁度日付が切り替わる時間だろうか。
しかし、そんなことを気にしている暇はなかった。
今は灯和のところまで行くことの方が先だ。
灯和が帰ってこなかった理由は大体見当がついている。
神通力で、灯和の場所は特定してある。
………そして、今の灯和の状況も。
火影「……!」
しばらく走っていると、灯和の後ろ姿が見えた。
辺りは青白い光で包まれていた。
私は灯和の隣まで走りより、ゆっくりと立ち止まった。
火影「おい。」
灯和「…………火影…?」
普段の灯和なら、私の声に驚いて飛び退くだろう。
それをしないということは……
火影「《《こいつ》》か?」
灯和「…うん。」
私は灯和の視線の先を見る。
そこでは、巨大な妖怪がこちらを見つめていた。
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30mを裕に上回るほどの身長。
ガチャガチャと音を立てて動く体。
肉も皮もない骨でできた全身。
目があるべき場所には何もなく、ただ暗闇が広がっていた。
そして、肋骨の中…心臓部には、青白い炎が浮かんでいた。
周りにもいくつか青い炎が漂っている。
この妖怪の正体は言うまでもなく、`|餓者髑髏《がしゃどくろ》`だ。
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この辺りが青白い光で包まれているのは、こいつの炎のせいだろう。
しかし、月明かりと違って禍々しく不気味な光だ。
餓者髑髏の近くで、無数の人間の屍たちがこちらを睨んでいる。
体は腐り、生気が宿っておらず、ただ恨めしそうにこちらを睨むだけ。
おそらく、餓者髑髏の手下だろう。
灯和「とりあえず屋敷方向に行かないように引きつけおいたよ。」
火影「生物が近くにいると分かれば、そっちに被害が行きかねんからな。」
餓者髑髏は、埋葬されずに死んだ人間の怨霊が集まって骸骨の姿となった妖怪だ。
生きた人間を襲い、握りつぶして血を飲むと言われている。
しかし、どうやら人間だけに限らず、生きる魂の全てに反応しているらしい。
手下である彼らも同じだろう。
私たちの屋敷の近くには動物が住んでいるし、屋敷内には沙雪たちが寝ている。
こいつをあっちに行かせるわけにはいかない。
絶対に。
灯和「火影が来てくれてよかったよ。僕一人じゃ手間取ってたと思う。」
火影「…………」
この人数の敵に対して『手間取る』だけで済むのは、灯和の強さ故だろう。
普段の性格や行動で忘れそうになるが、灯和は酒呑童子なのだ。
本気を出せば、この山一つ消すなんて造作もないのだろう。
………灯和が人間に殺されかけた時、人間に復讐しなかったのは、優しさ故か…
火影「沙雪たちは全員寝た。動物たちもこちらには来ていない。」
灯和「そっかぁ。ありがとう…」
ザッ…
私と灯和は身構えた。
餓者髑髏とその手下は我らの方を凝視している。
*灯和「おいで、`|燈羅刹《とうらせつ》`。」*
灯和がそう口にした瞬間、灯和が炎に包まれた。
その炎が消えた時、灯和の手元には金棒が握られていた。
紫の炎を纏い、餓者髑髏に負けないほどの禍々しい空気を放っている。
それを手に持つ灯和の顔は、どこか哀しく見えた。
灯和「じゃあ……成仏してもらおっか……」
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第十話 〜完〜
読書が好き🍵です。
さて、今回でありがたいことに、
連載小説 「孤独な私と臆病鬼は、今日も光を探してる。」が十話を突破しました🎊
そこで、十話突破記念として、いくつか企画を考えました。
①記念番外版を投稿
②キャラランキング投票
③キャラデザ投稿
この三つのうち、どれかができたらなと思っています。
この小説に最初にファンレターを送ってくださった方の意見でどれか決めます。
それでは、またどこかで………
企画決定:⭕️