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【曲パロ】フォニイ
この世界に、本物の花なんて咲いてないって、あたしは知ってた。
どんなに色鮮やかでも、触れてみれば分かる。
紙でできてる。布でできてる。
──嘘でできてる。
そもそも、あたしの周りなんて、全部そうだった。
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空から、冷たいものが落ちてきた。
雨だ。でもこれは、ただの雨じゃない。
体じゃなく、心に染みてくる。
あたしの傘を貫いて、意思を持ったみたいに、前髪を濡らして、内側を叩いてくる。
ほんと、うざい。
こんな時でも、平気な顔して「大丈夫?」って聞いてくるアイツの声が頭に残ってる。
言葉なんて、もうとうに枯れてるのに。
笑って、頷いて、嘘を重ねて、
自分が何を信じてたのかさえ、もう忘れた。
気づけば、鏡の中であたしが微笑んでる。
まるで絵画みたいに、作られた表情。
その輪郭すら、ぼやけていて。
──誰だっけ、これ。
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子どもの頃好きだった遊びを思い出す。
意味もない言葉を並べて、謎々ごっこをしたっけ。
「嘘をついてるのは、だーれ?」
「ここで踊ってるのは、だーれ?」
あの時は、ただ楽しかったのに。
今は、全部が罰ゲームみたい。
簡単なことすら、わからなくなってる。
あたしって、何だったっけ?
それすら、夜が全部さらっていく。
まるで、愛のふりをして。
本当は伝えたかったのに。
言えなかった「さようなら」が、喉の奥で泣いてる。
でも言葉にはならなくて。
ただ、涙だけが出てくる。
嘘に絡まったまま、抜け出せないあたしが、
ここにいる。
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いつからか、音に敏感になった。
空が鳴ると、心もざわつく。
何かがほどける気がして。
でも同時に、見えないものに引き裂かれてくような痛みもあった。
色のない目でアイツを見ると、
なんだか全部が薄くて、溶けていくみたいだった。
鏡に映るあたしを欠けたように見て、
誰もが「違う人」として扱う。
本当のあたしは、ここにいるのに。
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ねえ、なんで?
なんで、人は愛なんてものに群がるの?
わかりもしないのに。
抱えきれないのに。
それでも欲しがるのは、どうして?
夜の電車が通り過ぎる。
誰かを乗せて、どこかへ向かっていく。
あたしはそこにいない。
だから、踊り明かすしかない。
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もう、なんでもいいから、騙してよ。
歌でも言葉でも、なんでもいいから、
あたしを騙してよ。
……ねえ、どうしてここが、こんなに痛むの?
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毎日毎日、変わらない日々。
希望が来る気配すらない。
絶望の雨は止まないまま、降り続ける。
言いたいのに、言えない「さようなら」。
喉の奥で引っかかって、
また、|偽物《フォニイ》のままで泣いた。
あたしはまだ、嘘の中で絡まってる。
本当が、どこにあるのかもわからない。
---
簡単なこと、ほんとにわからない。
あたしって、誰?
夜に触れると、何もかもが柔らかくなる。
ふっと、愛のように消えていく。
温かくて、悲しくて、そして怖い。
最後に、やっと絞り出せた言葉。
「さようなら。またね」
小さく、小さく、呟いた。
__フォニイ。__
あたしは、フォニイ。
誰にも見せたことのない顔で泣く、
偽物の“あたし”。
でも、造花はすべてを知っている。
誰よりも静かに、見つめている。
本当はずっと前から、ここにいた。
誰にも気づかれない場所で
--- `|あたし《フォニイ》のことは、造花だけが知っている。` ---
曲パロのリクエストが欲しいです………(>人<;)オネカイシマス