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第二章 2
あちゃぱ
バッと振り返った。
聞かれていた。
誰もいないと思ったのに。
そこには、黒いパーカーを着た、若い男の人が立っていた。
「君、高校生?どうしたの?」
「…っつ!」
声が、出ない。
男の人は近づいてきて、
「ーえ」
腕の、火傷を見た。
「なっ何するんですか!?」
急いでそれをおろして隠したが、腕を掴まれた。
かなりの力で、痛い。
「これさ」
男の人が何か言っているが、聞き取れなかった。
怖い。
痛い。
嫌だ。
とたん、腕を離した。
「あっごめんね!急に掴んで!!」
「いえ…」
「で、その火傷の痕なんだけど」
なに?
何を言うの?
醜いって?
気持ち悪いって?
スカートの裾をギュッと握った。
「ウチの、代紋に似てる」
「ーへ?」
代紋?
だいもん?
ダイモン?
意味のわからない言葉だ。
家紋なら聞いたことはある。
でも、代紋ってなに?
すると突然、男の人がふふっと笑った。
「代紋ていうのは、家紋と同じ感じだよ」
「あ、そう、なんですね…」
「ねえ、君なんていうの?」
いいのだろうか。
名前を教えても。
「僕は僚太。君は?」
「夕菜…です」
名乗られたら、名乗るしかない。
「夕菜…ぴったりの名前だね」
それからしばらく、沈黙だった。
わざわざ自分まで名乗って、この人は誰なの?
「夕菜、ウチにこない?」
「へ?」
「僕の家、ヤクザなんだけど」
『僕の家、ヤクザなんだけど』
こんがらがった頭のまま車に乗せられて、僚太さんの家に向かった。
なんていうか、断れなかった。
僚太さんの、その、目が、怖かったから。
「はい、ついたよ」
「うわぁぁぁぁ!」
僚太さんの家はすごく大きかった。
中に入ると、さらに大きく感じられた。
でも、時々すれ違う人たちはみんな怖くて、ヤクザなんだってことがわかった。
「僚太」
「司さん」
僚太さんの名前を呼んだのは、金髪の、ピアス大量の、高身長の男だ。
「若と呼べと言っているだろう」
「へいへい!」
若。
聞いたことくらいはある。
次の、トップになる人のことだ。
「その子は?」
「火傷のあざがあって、ウチの代紋に似てるからうちの子じゃない?ってこと」
「〜ったく、お前はいつもいつも!」
そこからは何か話しているが、聞き取れなかった。
「おい」
急に、金髪の人に話しかけられた。
「は、はい」
「お前、今日からウチのもんな」
「はい?」
ウチのもんってどういうこと?
この、ヤクザの?
「今日は休め。客間を用意する」
「え、でも帰らないと…」
「大丈夫だよ!お友達の家に泊まってるとか、連絡しとけば」
横から、僚太さんが言ってきた。
これから私、どうなっちゃうんだろう。。。