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幸蜜パンケーキ
※ペルソナ5ロイヤル真エンド後の明主(明智五郎生存説)
「なぁ…パンケーキ、焼いてやろうか」
前髪に目がかかる程長く癖のある黒髪の下、眼鏡の奥の瞳が異様に抗えない魅力を感じる若い男性、雨宮蓮がそう呟いた。
蓮に言葉をかけられた薄い茶色の首下まである毛先が少しくせ毛な若い男性、明智五郎は外した黒い手袋を胸ポケットへしまいながら応えるように口を開いた。
「そりゃあ、何で急に?」
「俺が食べたいんだ」
そう答えて、純喫茶ルブランの中でエプロンを着けながら彼が奥へ行こうとこちらから離れていった。
「今から?」
「ああ」
レトロな雰囲気のある店内で、少しバタバタとした音がした後に何かが焼けるような音と、香ばしくも甘い匂いが鼻腔を擽った。
柔らかな生地にふんわりとした舌触りと蜂蜜の甘さが舌の上で踊っている。
正面でニヤニヤとした笑みを浮かべながら、パンケーキを食べ続けるのを見られていることが微かにきまりが悪かった。
「…君は食べないのか?」
言われた彼は少し面を喰らった表情を見せたが、すぐに微笑んで口を大きく開けた。
欲情を誘う真っ赤な舌と白く小さな歯が見える。
明智はため息をついてパンケーキを小さく切った一切れを刺して、蓮の口の中に放り込む。
それを咀嚼しながら、満足げな蓮の顔が蜜の甘さと一緒に溶けていくようだった。