公開中
妖怪双子の事の次第 3
「こんばんは」「こんばんは」
からりと葉を踏む下駄の音。左右対称の双子たち。
「ねずみ男と話してたんだ?」「話してたよね?ねずみ男と」
「…鬼太郎、巳太郎…」
妖怪は重い首をもたげる。双子は楽しそうな表情を浮かべていた。
「どんな奴だった?」「いやな奴だった?」
「…嘘つきだった」
妖怪は喉の奥で低く唸った。
「そうだよね」
鬼太郎が場違いな朗らかさで笑う。
「ねずみ男はそういう奴」
巳太郎が場違いな明るさで笑う。
「でも面白いよね」「面白いよ」「味方じゃないのに味方の顔する」「嫌ってないのに好かれないと思ってる」「だから敵のふりをする」
2人の声はますます楽しげになっていく。
「ねずみが人間のふりをして」
「人間の世界で得をする」
「でも困ると妖怪だからって言って逃げる」 「どっちが本物?」「どっちが偽物?」「どっちも偽物?」
妖怪はいつの間にか、瞬きも忘れて彼らの言葉に聞き入っていた。
「あいつはねずみの皮を被った人間?」
「人間の皮を被ったねずみ?」
「皮って剥がれるんだよね」
「皮って剥がせるんだよね」
「君はどうする?」
双子は揃って妖怪の瞳を覗き込んだ。