公開中
リクエスト分
ごめんなさい、まじで書けなくなってます。
リクエストくださったのにこんなので申し訳ないです…!
なんとか5月内に終わったので及第点とさせてください🥲
7月某日。
拝啓、この世のどこかにいると信じたい神様。
どうやら今日、僕たちの業務は無茶苦茶になったようです——
なぜなら、
「ふぇぇん」
「ばぶっ、だぁぅ!」
「…ぁぅ…」
「きゃはは!」
「…|ここ《武装探偵社》って保育園だったっけ」
「…違う」
僕たち…同じ武装探偵社員の鏡花ちゃんと共に、いつも通り、何も問題なく出社したはずだった。
社内にいた社員の半分ほどが幼くなっていることを除けば。
「み、見て見ぬふりって…駄目かな?」
「…」
沈黙を守ったまま、珍しく鏡花ちゃんもほんの少し眉尻を下げて社長…らしき子供…を見つめている。
そういえば祖父と孫娘の設定だった。
他に辺りを見渡せば、完璧に国木田さんであろう十歳ほどの子供が、手帳をぺらぺらと見ては拙い字を書き込もうとしているし、ソファの上で賢治くんはむにゃむにゃと幸せそうに眠っている。
元に戻るまで起きないでほしいと祈りながら、その横で賢治くんが食べたらしいお菓子を見て乱歩さんは文句を言っている。
おろおろとしている谷崎さんはどうやら記憶があるらしいし、幼くなった他の面々とそう変わらない背格好で乱歩さんを宥める社長も同じに見えた。
「どっ、どどどどうしよう!!?これ完全に異能のせいだよね??誰の仕業なんだ一体っ、そうだ太宰さん…太宰さんなら!太宰さんっ!」
「あ、敦くん…いつも通りまだあの人は来てないンだけど…」
「…電話も繋がらない」
敦の視界の端で、幼い社長がこめかみを押さえるのが見えた。
精々七つほどの年齢なのに随分と様になっているのは、生まれつき持ち合わせた貫禄なのか。
「おや?朝から騒がしいねぇ」
「うわああああっ!?」
ぬるっ、とでも形容すればいいのか。
僕たちの背後から出てきたのはまさしく現在進行形で探していた…
「太宰さん!」
「太宰」
「だざい?」
「だざぁ」
太宰さんは各々自由にしている元社員の幼児たちを見てはけらけらと笑っている。
この人は本当になんなんだ。
ちょいちょい、と国木田さんの頭をつつくも、変化なし。
「あっはっは!これは異能力者本人に触れないといけない形のものだねぇ」
「ええぇっ、そんな!」
「…探す」
「申し訳ないけど、|妾《アタシ》は断れない依頼が入っていてねェ。合間合間に探してはみるけど、特徴はわかっているのかい?」
「い、いえ…」
「国木田くーん!君は私の部下なのだ!だからほら、あのお財布から一万円抜き取って蟹を買って来てくれ給え」
「太宰さん嘘を吹き込まないでください!あとあれ国木田さんのお財布!!」
「自分で自分のお金を出すことの何が悪いんだい?」
「悪い!この人めっちゃ悪い!!」
唯でさえ幼児化した数人のおかげで社内は阿鼻叫喚だと云うのに、まともに動ける人間がこの調子。
如何しろと云うのか。
「やだー!おかし!おかしくれないとやだー!!」
「乱歩さんさっき食べましたよね!?」
「さっきはさっき!いまはいま!」
「理不尽すぎるのは通常運転!!」
その隣では。
「……ぅ」
鏡花ちゃんが無表情のまま、小さな賢治くんを膝に乗せていた。
完全に寝ている。
「賢治くん、起きないね……」
「……あなたが|あの人《太宰》とちょうど騒いでたくらいの三十分前に起きた」
「えっ」
「社長室のものを全部ひっくり返そうとした」
「完全に起きないでいてくれてよかった!!」
ひやりと背中に嫌な汗を感じながら取り敢えず安堵するとほとんど同時に、今度は国木田さんが騒ぎ始めた。
やっぱり太宰さんは子供にあまり好かれないのか。
それとも国木田さんだからなのか。
「ちょっ、ちょっと、国木田くん、君、それは…」
「だざいうるさい!!よていをかくのにっ、ここ!かんじがわからない!!」
「ああああ国木田さん!ペン振り回したら危ない!!」
何とか暴れる国木田さんを抑えつつ、先ほどから一生懸命に書いていた予定表を覗き込む。
『きょうのよてい
・だざいをなぐる
・だざいをしかる
・だざいを』
「ほとんど太宰さん関連だ……」
「本能」
「私国木田くんに本能でドヤされてたの?酷くない?」
「いや日頃の行いじゃ、」
「谷崎くん、因みに君は海と山どっちが好きなんだい?」
「捨てようとしてます!?仮にも子供なンですけどっ」
ぎゃあぎゃあと騒いでいたせいだろうか。
「……んぁ」
ぴく、と鏡花ちゃんの膝の上で賢治くんが身動ぎした。
「あ」
ゆっくりと目を開ける。
数秒間ぼんやりしたあと、賢治くんは鏡花ちゃんを見上げてにこっと笑った。
「おねえさん!」
「……」
鏡花ちゃんが固まった。
「わぁ、鏡花ちゃんお姉さん認定されたねぇ」
「……」
「おねえさん、ここどこですかぁ?」
ふにゃりとした喋り方。
眠そうに擦る目。
危機感なんてものは一切ない、純粋で天真爛漫な賢治がさらに小さくなったのだ。
敦は思わず胸を押さえた。
「かわい……」
「敦くん声漏れてるよ」
「はっ」
しかし賢治くんは次の瞬間、ぱちぱちと瞬きをして辺りを見回した。
「みなさん、どうしたんですか?」
「えっ」
「……?」
「賢治くん、君最近の事とか覚えてる?」
「なにをですかぁ?」
駄目だ。
完全に幼児。
「……因みに今、何歳?」
「ごさいです!」
「うわぁしっかり幼児!」
その瞬間。
「ぼくもごさい!」
ソファの上から乱歩さんが元気よく挙手した。
「乱歩さんは多分六歳くらいですね」
「むぅー!だざいうるさい!」
「そこ不満なんですか!?」
一方で国木田さんはまだ机に齧りついていた。
「だざいを……しばく……」
「物騒」
「国木田さん、それ誰に教わったんですか」
「がっこうだ!」
「……たぶん太宰さん」
「風評被害だねぇ」
「普段の行いだろう」
社長が静かに茶を飲みながら返す。
幼児姿なのに威厳が凄い。
そして同じようなことを先ほど言われていた気がする。
その時だった。
「ぁー!」
賢治くんが突然、ぱっと顔を輝かせた。
「はなこ!」
「え?」
視線の先。
窓の外を、牛乳配達の車が通っていく。
「はなこだぁ!」
がばっ、と鏡花ちゃんの膝から勢いよく降りた賢治くんに、鏡花ちゃんも思わず目を丸くした。
そして一直線に車の通った窓へと走っていく。
「賢治くん!!」
「おそといきます!」
「駄目!!」
慌てて止めようとするも、相手はあの賢治くん。
幼くなっているとはいえ、異能も…その怪力も、もちろん手加減なしに力同士で戦えるものではない。
「うしさんみるー!」
「あとで!あとで見ようね!?」
「やだー!」
「うわぁぁぁぁ!」
その阿鼻叫喚に便乗するように、
「ぼくもおそと!」
乱歩さんが机に登り、
「だざいもしばく!」
国木田さんがまたペンを振り回し、
「……地獄」
鏡花ちゃんがぽつりと呟いた。
「いやほんとにね!?」
敦も半泣きで叫ぶ。
谷崎さんはおろおろとまた賢治くんを止めようと奮闘しているし、社長は乱歩さんをまた宥め賺している。
そんな中、太宰さんだけが楽しそうにけらけら笑っていた。
「いやぁ、実に平和な職場だねぇ」
「どこがですか!!!」
元に戻った国木田さんが太宰さんを本当にペンを持って追うまで、あと数刻。
全ての元凶は結局この男だったらしい。