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1-1 茹だるベランダで
「アンタなんかが産まれたからあの人は変わったの!全部アンタのせいよ!!」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
いつにも増して母親・真樹の期限が悪く、今日は長引きそうだと紗絢は思う。
「アンタ、『ごめんなさい、ごめんなさい』なんて毎回言ってるけど、ほんとにそうは思ってないんでしょ!そんな子この家にいらないから!」
どれだけ言っても、無表情を崩さない紗絢にいくら当たってもストレスが発散されないことを真樹もわかっているが、何せ遠距離恋愛の末結婚した真樹に、この地で愚痴を言い合えるような知り合いは居ない。
強いて言うなら憎たらしいあの女ぐらい。
真樹は紗絢の腕を掴みベランダへ連れて行こうとする。
締め出しのお供にと紗絢はさっきまで読んでいた小説に手を伸ばすが、その手はあっけなく振り払われてしまう。
「昔からずっと本ばっか読んで気味が悪いのよ!…茜ちゃんみたいになってほしかったのに」
茜ちゃん…早瀬茜とは紗絢の同級生で昔からみんなの中心にいて、人見知りの紗絢とも仲良くしてくれるいい子、と真樹は思っている。
ベランダのドアを閉め、鍵をかけ、おまけにカーテンまで閉められた紗絢に「開けて!」などと言いながら窓をたたく気は毛頭なく、「暑い…」と言いながら手で顔をあおぐだけだった。
なぜ大人は茜のような子供が好きなのだろう。確かに茜は愛想がいいし、運動ができる。だが、喋り方にまるで知性を感じられない。
茜の「私は紗絢ちゃんみたいな地味な子にも話しかけてあげるの」という大人への溢れ出るアピールに紗絢は鬱憤が溜まっていた。
しばらくすると段々と喉が渇いてくる。
紗絢をこんな熱い場所に締め出し、自分はクーラーの効いた部屋でのんびりしているため、室外機から熱風が溢れ出し続けている。
ポケットに500円玉が入っている。3階から飛び降りても死なないだろうかと考えていると、横の部屋から窓の開く音がする。
横に住んでいるのは5つ年上の幼馴染・隼人と母親の綾乃だ。
もし隼人なら水ぐらいくれるだろうと覗いてみると、隼人もこちらを向いていた。
「…うち来る?」
どうだったでしょうか…。
実は、2人、「私たちの世界」に登場しているんです!
5話で登場した、バドミントンを借りに来た女のコと男のコ。
小さかった頃の紗絢と隼人です!
気づいてくれた方いたのだろうか?
居たらコメントで教えてほしいです!
もちろん感想も!教えてくれたら嬉しいです!