公開中
ハルヒ探偵事務所の日常 #2
**第2話 リボンと|春昼《しゅんちゅう》**
春の昼下がり。天気は上々。子供なら、大喜びで公園にでも遊びに行っているのだろう。
一方、こちらは『ハルヒ探偵事務所』。
「暇ですねぇー……」
「だねぇー……」
メイ、ハルの順に小さく呟く。
2人して微睡みの世界を彷徨っていた。
なんせ、依頼人がちっとも来ないのだ。
つけっぱなしのテレビからは、犬特集なのか、忙しなく鳴く犬の声がする。
(犬飼いたいなぁ……けど、この建物ペット不可なんだよなー……壁が薄過ぎて近所迷惑になる、って前にメイに言われたっけ……)
ハルがぼんやりとそんなことを考えていると、ノック音がした。
睡魔を押し退け、凄まじい反射神経でメイが飛び上がる。
「はーいっ! どうぞお入りください!」
声を張り上げると、少女が入ってきた。
「……っし、失礼します」
声がやや上擦っている。緊張している様だ。
眠気が覚めたハルが「大丈夫よー、コイツはともかく、ボクは安全だからさ」と諭す様に言い、メイは「いやいや、ワタシこそ超安全ですよ。ていうか、盗み食い常習犯が何言ってるんですか」と反論する。
間の抜けた会話に緊張がほぐれたのか、ふふっと少女が笑う。
それに安心し、一旦「ワタシは春日メイ。探偵です」と言う。
次いで、「ボクは助手の篠原ハルだよ!」とハルが笑いかける。
流れを察したのか、「私は、|佳凪《かなぎ》|穂加《ほのか》です」と少女__穂加さんも名乗った。
「穂加さん、ですね。盛夏学園の、中等部の1年生ですか?」
「えっ? は、はい」
見事言い当てたメイに、穂加さんは呆然とする。それに気づいたメイが、
「えーと、まずこの辺りは盛夏学園の学区です。セーラー服を着ていることから中学生というのも分かる。あそこはセーラー服が可愛いことで有名ですしね。更に、リボンの色が学年別なんですよ。1年が臙脂色、2年が藍緑色、3年が山吹色、という風にね。貴方は臙脂色のリボンなので1年生なのだろう、といった具合です」
「な、なるほど……」
感嘆する彼女を見て、
(やっぱり、信頼してもらうには初めに何かを言い当てた方がいいですからね……流石に毎回はできませんが)
としみじみ思う。
ここぞとばかりにハルが促した。
「うちの探偵、凄いっしょ? ここに来たってことは何か悩みがあるんだろーし、とりあえず話してみてよ」
「は、はい」
小さく頷き、彼女はぽつぽつと話し出した__。
や、やっと書けた……!!