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全てあなたの選択です。 No.4
今まで1日が1話分だったから、夜まで書かないとって思ったけど、この場合はしなくても良いんだ…。
そっか、…楽だけど、妙な所で慣れたから違和感半端ねぇな…。
まだ日も昇っていない頃、フィリップは淡々と荷物を片していた。
荷物と言っても、ペンと手帳ぐらいしかなく、すぐに暇を持て余してしまう。
強いて言えば、異国の文字で記された本が何冊かある程度だが、フィリップはこれを片付けるつもりはないようだ。
男の両手にはしっかりと黒い革手袋を着用してある。
今日はC棟の担当だ。
C棟もB棟と似て、大きな問題児はいない。
A棟程ではないが比較的過ごしやすい場所だと言えるだろう。
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蜥蜴のように足を忍ばせながら、彼は自身の部屋を出る。
もちろん大した目的はなく、ただフラフラと拘置所の中を歩くと言う方が的確だろう。
静かな拘置所は、フィリップの足音を淡々と響かせている。
窓を覗いても鳥は鳴かず、風も吹かない。
静寂な朝はフィリップに微笑みを見せるだけで何一つ行動を示してはくれない。
食堂に向かうつもりだった彼の足は、途中で進行を変えた。
フィリップは予定よりもかなり早く、C棟に向かう事にしたようだ。
C棟には囚人達の寝息が騒がしく響いていた。
フィリップは今日、一睡でもしただろうか。
目の下には隈はなく、見た目からは到底分からない事だが、多分寝ていない。
看守であれば、夜遅くまで仕事をするのは論を俟たないが、今や人手不足の時期。
俗に言う、オールする、なんて事もかなりの頻度である。
言わずとも分かるだろうが、この仕事は中々ブラック企業だ。
フィリップは牢獄の全貌が見れる木製の椅子に腰を下ろした。
一つ息を漏らして、自身の体重を椅子に預けるように座り直す。
目を閉じようとしたが、すぐに目を開ける。
別に、拘置所に異変があった訳ではない。
ただ、寝ることに対して嫌悪感でも抱いたのだろう。
気持ちは寝たいと感じていても、体は寝たくないと感じる。
今のフィリップはまさにそれだ。
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時間は存外早く過ぎた。
囚人の中にも、目を覚ました者もいる頃だ。
B棟のように、例の問題児がいないためか、非常に穏やかな朝に見える。
いや、きっと穏やかなんだろう。
フィリップはいつの間にか姿勢よく座り直していた。
しかし、前は見ずに、少しだけ俯いている。
もうしばらくすると、とうとう鐘が鳴った。8時になったのだ。
フィリップは静かに立ち上がり、
「点呼を始めます。」と抑揚のない声で告げた。
C棟では2000番台後半の数から点呼が始まる。
看守の声と囚人の声が交互に繰り返されるのが、5分…いや10分はとうに過ぎた頃、フィリップに無線が繋がった。
『こちら本部。D棟でまた反乱だ。至急向かえ。』
フィリップはすぐに無線で、
「こちらC棟。点呼を終了次第向かいます。」
と告げる。
点呼が終わるまであと少しといったところだ。
納得が出来る言い分だろう。
だが本部からの返事は、実に面倒なものだった。
『こちら本部。駄目だ、すぐに向かえ。』
これにはフィリップも明らかにため息を吐く。
フィリップが分かりました、と応答しようとした途端、別の棟から無線が繋がる。
『こちらD棟。…全員片付けた、気にするな。』
D棟を担当する者、以前の長身の男がいつもより低音でそう告げた。
大方、機嫌が良くないのだろう。
微かに、何かを引きずるような音も聞こえた。
『こちら本部ッ!片付けただと!?どうしたんだ、殺したのか!?』
本部は焦るようにそう聞くが、男からは何の返事も来ない。
フィリップは無線の声を気にしないように、点呼を再開した。
片付けた、とは言葉の通りだ。
それをわざわざ聞くなんて、本部も趣味が悪い。
おそらく彼は今頃、遺体を棟を出た廊下に捨て置いてるんだろう。
それぐらい、本部なら分かっているだろうに。
フィリップがやっと点呼を終えた時、また本部から無線が繋がった。
『こちら本部。ヴェルダ、フィリップ、双方に告ぐ。この後すぐに本棟に来い。』
フィリップに関しては飛び火な気もするが、こうなったら行かざるを得ない。
「…こちらフィリップ、Roger。」
『チッ…、こちらヴェルダ、Так точно。』
面倒な事になってしまった。
向こうの連中は、頭の硬い奴しかいない。
言い訳は通じない、話を聞かない、古い規律を愛してやまない、そんな連中だ。
フィリップはため息混じりに本部に代わりを要請し、本棟へ足を運んだ。
たまにルビを付けるべきか迷うもんがあるんよね。
こういう風に読むつもりで書いたけど、大抵そうは呼ばへんみたいなんが多いんよ。
今回やと、“数”やね。カズって大抵呼ぶけど、自分は“スウ”って呼ぶ体で書いてたからさ。
正直そうなったらルビばっかになるから嫌なんよな…。
まぁ、ここまでくると読者の読解力に全部任せてまおう。
てか中々進まん。ごめんね。