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街を歩く
〜〜〜〜
仕事ができない
ガラクタの分際で
自分のことを
天才か何かだと
思っている
都合の良いときだけ
弱みを見せてくる
何がごめんなさいだ
〜〜〜〜
俺のスマホのロック画面である。
元の店で迷惑店員に困っている時にそいつによく見せていた名残だ。
速くこの忌まわしき記憶から解放されたいが、新しい店もどうなのかまだわからんのでしゃーなく画像を消さず放置している。
そんなことを思いながら、俺はスマホを眺めてため息をつく。
表示時刻は9時38分。家出たのは8時で、40分くらい走る棺桶に封印されていたので一時間程意味なく散歩していることになる。
早く出すぎたかな。仕事と顔合わせは明日からだから、午後に電車乗ってもよかったかも…。
どこか行ける場所はないかとマップを開くが、何故か即アプリロスト。
ギガの使い過ぎか、それともバグか。いや、アプリごと消えたからバグだ。
ホーム画面に戻り、毎日見るモンボのアイコンをタップしてアプリを開く。
ポケポケは問題なく動くので、間違いなく今のはバグだ。
あ、ルギアの星2当たった。今日は悪いことがありそうだ。
敵が迫っていないか気になって辺りを見回すと、わりあい近く、長大な階段の上に赤い鳥居っぽいのが見えた。あれは神社だな。
嫌な勘を引いたんだから、こういうときこそ神頼みだろう。
そうと決めたら話は早い。俺はそそくさとスマホを閉じ、ポッケにしまって立ち上がる。
と、ポケットのスマホが鳴り始めた。
「今?一体誰から…」
こういうときの着信ほどダルい電話はない。ルギアの勘が早速当たり始めたか。
開くと、表示された名前は「高田」。
思い出した。こいつはバイト時代、マンモスストア某市店の店長だった気のいいおやじだ。
俺が面接で「1日10時間働けます!というか金がないんで働かしてください!」と言ったら本当に10時間にしてくれた話のわかる方である。
というか某市は日本法とはまた別に法を用いている節があるので、その影響かもしれんが。
ちなみに俺が店長になったとき繰り上がりで株式会社マンモスの重役になっており、俺がマンモスデパートの店長にいきなり上がったのも理由こそ聞いてないが多分この方のおかげ。
公私ともにこの人はわりと標準的だが、迷惑店員をなかなかクビにできんかったり、ハトに頭を下げるなどの奇行を取ったりとそれなりに欠点もある。
「はい、もしもし。」
『もしもし、|瑞希《みずき》くんで合ってる?』
「あってます。んで、何の用でしょうか」
『君の家用意しといたよ』
「俺は何も言ってないんですが」
ちなみに話が飛んだり、終わったあとで重大なことを言うのも欠点のひとつである。
ちなみに俺はもうアパートを借りてしまっている。合掌。未利用のうちに解約しなければ。
いやまて、アパートを用意したのかも知れない。今の家のほうが安かったらどうする。
「そして、どういう家ですか」
『月収が上がって家を買えるようになったから、君の家買っておいたよ』
「何割が俺負担?」
『ゼロ割だよ〜。迷惑店員追い出してくれてとても感謝してるから、お礼にって』
「あれは追い出して当然でしたがね。他になんかありますか?」
『最後にひとつ。君の追い出した迷惑店員がそっち行ったぽいからさっさと家に逃げ込んだほうがいいよー』
ピッ。
最悪なことを告げられて電話を切られた。今日は厄日だ。
「ルギアァァァァァァァァ!」
一応推しキャラなのだが、今日でリストから外れそうだ(直接彼のせいではないが)。
さっさと神社に駆け込んでお祈りを!それからさっさと逃げなければ!
しかし、世の中そう甘くない。そうこうしてる時間もないままに、この状況聞きたくなかった最悪の怒号が聞こえてきた。
「あ、あそこにいやがった!」
「俺達を路頭に迷わせやがって!ぶっころせ!」
端的に言おう。件の迷惑店員が俺の前(正確にはななめ後ろ)に現れたのである。
「うっそだろ…」
思わず後ろを振り返ると、やはりそこには奴らの姿があった。しかも3人横並び。
こいつらにはさんざん困らされた。無論顔を忘れようはずがない。
左にいる髭面のデブは、客を殴ってクビになったアル中の遅刻魔。腕っぷしも強いので、少なくとももやしの俺は普通に負ける。正直こん中で一番たちが悪い。
真ん中にいるバチギレの爺様は、レジで100回くらい煙草吸ってクビになったニコチン中毒者。俺の恐怖対象トップ5の一人。
右にいるひょろながメガネは、メガ高学歴無能。勤務態度悪すぎてクビになった店内ニート。チー牛。影薄い。
デブを除けば一人ひとりは大したことないんだが、徒党を組まれるとお察しである。
カバンほっぽりだしてダッシュで逃げることにした。
「ああん?待ちやがれ!」
「野郎ォ、逃げてんじゃねえよぶっ殺す!」
怖い怖い怖いって。ちなみに下のセリフは爺様が言っているのだが、異様にドスが効いてて狂気的なことこの上ない。
アニメの声優でもやれるんちゃうかあの人。
というかどこに逃げるべきか。交番の場所はわからないし、神社に駆け込んでも普通に迷惑だ。
幸いスマホはある。110番!
全力ダッシュしながら三文字打って通報すると、秒で繋がった。
「こちら海花街交番。何が起きましたか。」
「ヤベえ奴らに追われてまっす!」
「場所は?」
「わかりません!」
「わかりました!」
電話はそこで切れてしまった。警察とはなんぞや。
後ろを見ると、チー牛が脱落して二人になっていた。
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ナレ「2 hours later.」
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結局、ちょっと後に警察がやってきて、害悪トリオはくそ列車に詰められて某市に出荷されていった。
二人はともかく、途中で脱落したチー牛はどこで足がついたのだろうか。
どうやら俺の落とし物も拾ってくれたらしく(スマホケースに金含め大事なものは全部入っているのでロストしても大したダメージはないが)、大変ありがたかった。
そういえば、と俺は思う。
(元)店長から家の場所を聞いてなかったな。
もう一遍電話をかける。つながらない。
仕方ないので、先にアパートの解約を済ませることにした。
ついでに神社にお参りをして、賽銭箱に100円と間違えて1円を入れてしまった。
まあ99円で怒る神はいないだろう。
こんだけやってまだ11時ちょいである。やさしい世界だ。
街を駆け回ったら腹が減った。ちょっと早めの昼食、いや遅めの10時の間食にしよう。
ちょうど近くに◯亀製麺海花街店があったので、寄っていくことにした。