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4話
空を埋め尽くした光の余韻が、ゆっくりと雪のように降り注いでいた。 私たちの体はもう、指先から透き通って、境界線が曖昧になっている。
「……ねえ、レン。最後に、私の話も聞いてくれる?」
私は、繋いだ手に残るわずかな熱を確かめるように、少しだけ力を込めた。
「私、生きてる時は、ずっと自分のことが嫌いだった。言いたいことを飲み込んで、周りの顔色ばかり見て……私の世界はずっと、レンに出会う前のこの場所みたいに、灰色だったんだよ」
レンは何も言わず、ただ穏やかな瞳で私を見つめている。
「死んじゃった時も、これでやっと楽になれるって思った。でも、違った。レンが私の手を握って、一緒に色を塗ってくれた時、初めて気づいたの。私、誰かと一緒に笑いたかったんだって。……レンが居てくれたから、私は死んだあとに、やっと自分の人生を好きになれたんだよ」
「ハル……」
「ありがとう、レン。私を見つけてくれて」
レンの瞳に、今度は本物の、幸せな涙がたまった。 彼は私の手を引き寄せ、最後にもう一度、いたずらっぽく笑った。
「俺の方こそ。ハルが俺の本音に気づいてくれなかったら、俺、一生あそこで笑ったまま、石になってたと思う。……ハルが居てくれたから、俺はちゃんと『レン』として終われたんだ」
視界が真っ白な光に包まれていく。 もう、冷たさも、寂しさも、どこにもなかった。 最後に聞こえたのは、「またね」という、明るい約束の声。