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魔術師は魔法使いがお嫌い(仮題)
手を伸ばした。掴もうとした。いかないで、傍にいて。そう願った。
届かない、届かない。自分のサボりを、ここまで恨んだことはない。
「ねぇっ……!!!」
笑っていた。みんながみんな、笑顔だった。
なんで、どうして。言葉が出なかった。
最後に出そうとした魔法は、そこまで難しいものでもないのに失敗した。
……まただ、救えなかった。この、世界で。
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鳥の声で目を覚ます。
温かな日差しも、平和すぎるこの世界を強調している。
「朝……か。」
いつまで経っても慣れないものだ。
夢であると知っているのに、どうも現実と混濁してしまう。
冷や汗をかいたのか、布団の中にいるのに少し肌寒かった。
「って……!遅刻!?」
そうであった。日の出前に広場に集合、と言われたではないか。
もうがっつり日は出てしまっている。
魔法のホウキを掴み、窓から寝間着のまま飛び出した。
ぽん、と魔法をかけ、普段のローブ姿になる。
テレポートでも使えればいいのだが、寝起きの魔力は少ないのである。
テレポートなどという魔力の塊のような魔法は使えない。
「間に合う……わけねぇわ。」
ぽん、ぽん。細かく魔力を調整し、ホウキの上で身支度を整える。
これから何をするにしても、悪夢を見た後の姿では格好がつかない。
太陽の角度はもう三十度を超した。時刻は八時くらいであろうか。
「あ、ぼんさん来ましたよ!」
幼く、無邪気な声が聞こえた。
息を吸い込む。大丈夫、アレは夢。
「おまたせ〜!」
「いや待ちましたよ。日の出前って言ったんですけど?
MENがいつ爆発させに行こうかウキウキしてたんすよ。」
「え!?嘘!?」
「そんなわけ……ありますねぇ。」
「あるんかい!!」
いつも通りあらゆるボケに突っ込みつつ、魔法のホウキを下ろす。
「ごめん、寝坊。」
「ぼんさん、……いつものことじゃないですか。」
おんりーの辛辣で、それでいて面白がっているような言葉に、苦笑が漏れる。
あぁ、いつも通りだ。いつも通りすぎて気が緩む。
「さぁ、ぼんさんも来たことだし、行こう!」
「何しに?」
自分の問いに、リーダーはいたずらっぽく笑った。
「魔術師討伐!!」
「……なるほど、それで俺を待っていたわけだ。」
サンディ王国に、世界を滅ぼす魔術師が出没するという噂が広まったのは、少し前のことらしい。
サングラス、古びたローブ、ボロボロの三角帽。物語にでてくるような魔術師だ。
しかも顔が俺にそっくりだという。……嘘だろ。
魔法使いと魔術師は似ているようで違うのだ。根本的に。
だから俺が疑われる筋合いはない。その、、、世界を滅ぼす魔術師に。
また、その魔術師の魔術は高水準で、魔法使いが対処するしか方法はないという。
「任せといて。」
魔術師がいるという森は、少しばかり遠かった。
ホウキで飛んで行きたかったが、5人も乗ればさすがに折れる。
仕方なく、歩くことになったのだが、それにしても遠い。
「あ、見えてきた。」
赤パン武闘家の言葉に、うつむき加減だった顔をあげる。
丸太で組まれた高床の家。香るのは、魔法使いの薬の匂い。
「……離れて。」
口をついてでていたのは、そんな言葉だった。
太陽がキラリと光った。狙われたのは、最強の剣士だった。
「!!!おんりーチャン!!!」
叫んだ。手を伸ばして彼を引っ張り上げた。
自分ならばまず、ポーションで弱体化させる。
フィジカルじゃ敵わないから、そのうえで毒攻め。
頭の中で魔法使いとしての戦い方が組まれていく。
おんりーの頭があった場所に投げ込まれたポーションは、匂いからして強烈な毒だった。
「ドズさん、上警戒して!MEN、おらふくん!右左油断しない!おんりー、正面くるよ!」
口が動いていた。体も動いていた。魔力が指先に集中する。
ここはサボるべきところじゃないと頭が勝手に判断する。
「ドズさん!無闇にポーション割らないで!!」
「わかってます!」
ドズさんが割れば必然的に皮膚に毒がつく。皮膚吸収のものもあるのだ、命に関わる。
一帯に魔力を広げる。感じたことのない強力な魔力の塊を、テレポートで引きずり出す。
「みーつけた。……!?」
驚く。目が見開かれる。手が勝手に、ポーションを投げる。
相手は、それを避けようともせず、不敵に笑った、
「見つかっちゃった……。」
そいつは、紛れもない、【俺】だった。
続きはまた書くかも。