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公開中

風化したペリドット

ミーンミーン、ジーンジーン、シュワシュワ…。 色々なセミが飛び回ることなく、涼しい木陰でうるさくないている。 すると突然、耳が誰かにふさがれて、それと同時にさざなみの音が聞こえてきた。 「なんだっ…?」 「しー。リッスンリッスン…。」 ハルにぃがそう言うと、ぼくはだまって音を聞いた。 ゆったりくり返す音は、完全にいっしょでなく、びみょうに違っている。 細やかにただよう旋律は、どんなオーケストラよりも美しく、聴き入ってしまうものだった。 「どうだ?」 「なんか…すごい。」 「だろー?適当に浜辺で拾った貝なんだけどさ、耳に当てるとすごい波の音が聞こえるんだよ。」 ハルにぃはぱっと貝殻をぼくの耳からはがし、冷蔵庫からソーダ瓶を取り出し、一本をぐびぐび飲み始めた。 「ぷはーっ!やっぱこれよー!」 「おっさんみたいだねー。」 「こちとらまだ中学生ですわ!」 「ぼくからしたら十分…ね?」 「トウヤー、それ俺以外のやつにいっちゃダメだぞー。」 「あっ…スミマセン。」
ミーンミーン、ジーンジーン、シュワシュワ…。 やかましいセミの音が、耳をじわじわ貫く…。 気づいたら森の開けた場所にいた。 「ん…あれ、僕…。」 思い出せない。何か、何かしていたはず…なんだけど。 「おーい。ナツー…。」 起き上がってナツの方を見てみると、なんと言うか、まあ幸せそうな寝顔を浮かべていた。 「…ナツも寝るんだなー…。」 僕はナツが起きてくれると信じて、ゆったりと二度寝をすることにした。