公開中
流れ星
お空の上に、一人の天使がおりました。
その天使の背中には、それはそれは美しい羽がございました。
天使が踊った姿は、息を呑むほど優美なものでした。
誰もが見惚れ、羨ましがり、褒め|称《たた》えました。
天使は皆に愛されていました。
天使はいつも笑っていました。
そのたびにその羽は日の光に反射して煌めき、光り輝いておりました。
天使のいるところは、いつだって日の光が暖かく|眩《まばゆ》く照らしていたのです。
その日は、いつもより激しく太陽が照りつけておりました。
天使は、いつものように笑い、踊っておりました。
しかし、その猛烈な日光は天使の美しい羽を焼きつけていきます。
羽は、次第に色|褪《あ》せていきました。
色褪せるごとに、天使は力を失っていきました。
それは、そうでしょう。
———羽は、天使たちの|生命《いのち》の源なのですから。
プス、プス、と音がして、天使は自分の背中を振り向きました。
白い煙が、天使の頬にまとわりつきます。
あの美しかった羽は、煙を出して焦げていくのでした。
ぐらりと体を傾け、天使は倒れそうになりました。
それでも天使は踊り続けます。
青白い腕で、脚で、体で、踊り続けます。
———恐ろしいほどの日光の|下《もと》で、焦げついていく羽を抱えて。
そして、羽は炎を噴いて燃え出しました。
黒い煙が、天使の頬にまとわりつきます。
背中の羽を呑み込んだ炎は、あっという間に天使の体をも呑み込みます。
踊った体勢のまま、天使は|斃《たお》れ伏しました。
炎は天使の羽を焼き尽くし、天使の体を舐め尽くし———
あとには、一粒の光り輝く欠片だけが残されました。
その夜、地の空で、息を呑むほど美しい流れ星が舞ったそうです。
〈後記〉
自分を輝かせていたものに殺されるなんて、皮肉だね。