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鬼滅の刃 if 4
ジブラルタル
尽きるのは、鬼か、人か。
「…何故、殺さない。」私は目の前の男に問うた。男…もとい、継国縁壱は淡々と答えた。
「私は、任務に反する殺しはしない。あの男でなければ」私は、それがだれかわかるような気がした。
「鬼舞辻無惨」その名を私が口にした途端に、縁壱の刀が熱を帯び始めた。首筋がじゅっと焼かれたような気がする。「何故その名を知っている」私は話した。兄がいること。無惨が生まれたこと。家が途絶えたこと。兄も自分も鬼であるということ。
語り終えた私は、疲れて岩にもたれた。朝日が目に眩しい。…朝日?私は気づいた。身体が焼けないのだ。いままでは燃えるような痛みに苦しめられていたと言うのに。まさか。
「克服した…?」数百年間、人間を食わずに生きていたことで、私は鬼ではなくなっていたのだ。一応、指をちょっとだけ切ってみたところ、再生なんてしなかった。しかし厳密には、完全に人間に戻った訳ではない。依然として私の身体には鬼の血が流れているし、身体能力も常人以上にある。
「お前は」縁壱の声で現実に引き戻される。
「兄がいるのか?」「はい。兄は鬼であることを誇りに思っているそうですが」
「家族も、奴に殺されたのか」「はい。」
縁壱は、何事か思案している様子だった。いつ切られるか、たまったものじゃない。
生殺与奪の権は、もれなく縁壱が握っているのだ。余計なことは喋れない。
「お前、私と修行の旅にでるつもりはないか」「はい?」
なんて言ったんだ、この人。自分から言うのもなんだけど、鬼ですよ、私は。
「私にも兄がいる。家族も、奴に殺された。同じ境遇の者を、放っておくことはできない。」
願ったりの提案だった。私にも、野望がある。
「私は、兄上を殺さなければなりません。それができるならば、どこまでもついてゆきます。」
こうして、私と縁壱の修行の旅が始まった。
日輪刀というものを縁壱の指導のもと扱い始めてから、3年が経過した。
「おお…これは…!」
「よくやった。それが全集中の呼吸。使い手によって様々な技があり、鬼に有効打を与えられる初歩の技。私は、己の呼吸を特性上、『日の呼吸』と呼んでいる。お前は、自らの呼吸に、何と名付ける」名前…。季節は、春。私達を囲む満開の桜の木を眺めながら、私は万感の想いを込めて応えた。
「『桜の呼吸』にします」
縁壱が、出会ってから初めての笑顔を見せた。
「良い」
そして、さらに1年後。私と縁壱は、鬼狩りの組織、『鬼殺隊』に入隊した。といっても、縁壱が正式入隊なのに対して、私は鬼ということで特例として、お館様の許可のもと、秘密裏に入隊することとなった。私の、人間としての再生の物語が始まった、ように思えた。
書いてて楽しかった。1章が終わった。2章も楽しみにしてくれると嬉しい。(しょっちゅう投稿)