公開中
足りないきみは風を喰む8
すっかり汚れきった食堂を、たった二人で隠すようにして掃除をしている。
|「腐敗臭も鼠の死骸も酷い」《 》
|「…ナースも、残りはメメルと叶飛」《命子》
どうしてこの二人が残されたのか
|「ねえ、命子さん?」《 》
どうしてこちらを無視するのか
|「もう少しで掃除も終わりですね」《命子》
そう呑気に呟いた命子を見つめたとき、視界が歪んでそのまま倒れ込んだ。幼少期のいくつかを、思い出した。
--- __ あー、またょごれた __ ---
初めて親に褒められた時は嬉しくて、初めて親に理不尽なことで怒られた時はこちらも腹が立って、初めて親と喧嘩をした時は悲しくて、初めての人生はどれも楽しいものばかりだったと思っている。
--- __ 出血もっとぉさぇたほぅがょかったな __ ---
遠くから聞こえる命子の声を聞きながら、暖かくなる腹と冷たくなる心を押さえながら。しょうもない2回目の走馬灯を、ただ見ていた。