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自由に捕らわれる。
今まで散々縛ってきたくせに。
「これから自由にやりなさい」とか、馬鹿にしてんのか。馬鹿にはしてないか。
なんでもできるって思ってんだろうから。
それなら期待通りになんでもやろう。
感化されたものはなんでも身につけよう。
周りに何を言われたって好きなものを好きなように好きになろう。
協調性がないやつって言われたけれど。
明るい曲を聞き始めた。本当は興味があったから。
セクシャルを隠すのをやめた。自分を信じ始めたから。
習っていたピアノをやめた。独学でやりたかったから。
「知らない何かに戸惑うばかりだ」
これから僕らはとりとめもない自由の果てに、騙され踊らされ生きていくのだ。
何も考えず過ごすだけで褒められた日々は、二度とは戻らない。あとは忘れるだけ。
好きなものも嫌いなものも、もう誰かが決めてはくれない。
「これから僕らは自由に捕らわれる」
いつだって僕らの価値を決めるのは僕らじゃなかった。それで反抗しなかったのは、それでいいと思ったからじゃない。そもそもそれで妥協してたら、暗い曲にのめり込んでなどいない。
「痛い」「寒い」「辛い」「怖い」って自分の代わりに誰か歌うから。
それが正しい、あれが正しい、って周りが言うから。
あれがいけない、これが許せない、って誰かが言うから。
これからは僕ら好きなように。善悪も全て意のままに。
「それなのに、未だに誰かの了承がないと安心できない」
躊躇したら怒られるから、矛盾したら怒られるから。
考えることはやめてきた、反抗するのはやめてきた。
「今までよくできました」
「それではがんばってください」
頑張るってなにを? 引き離すのか?
「買い被んじゃねぇ。知らないくせに」
これから僕らは、逃れられない自由の果てに、守られ、許されて、生きていくのだ。
幸せになるのは、偶然が味方した人間だ。逃げ場は今更作り忘れた。
好きな人も嫌いな人も、もう自分で知らなくちゃいけない。
「これから僕らは自由に捕らわれる」
自分を信じられないことが、「時代のせい」だと言うのならば、「環境のせい」だと言うのなら、僕らはそれを歓迎するさ。
敵が「周り」だと言うのならば、「バカにした奴ら」だと言うなら、僕らはそれを歓迎するさ。
誰もがそう思っているんだ。
何を好きになればいいのかも、何を嫌いになればいいかも、もうこれからは君だけのもの。その全てが君だけの言葉。
言えなかったこと、悲しかったこと、溜め込んだこと、許される時だ。
今こそあの日のーー
言葉を。
これから僕らはとりとめもない自由の果てに、騙され踊らされ、生きていくのだ。
これから僕らは巨大な何かに揉まれていく。
さよなら、情景。
これから僕らは、春が巡れどもこの先は、綺麗事で騙さなきゃいけない。
引き返せない。戻れやしない。
「それでも最後に笑うのは僕らだ」
「今までも、そしてこれからも、僕は自由に捕らわれる」