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豆は投げるものではなく食うものだ
これ、シリーズ化しようか迷ってる。
さてどうするかな…
ま、五話以上持ったら別の箱作るわ
「食べ物を粗末にしてはいけない」
「めっちゃ急だね?」
【感謝祭】担当、あるいは季節担当の影の参謀、稀にパシリとも呼ばれるこの僕サンクスは、同僚のアカオニから節分の出し物について相談を受けていた。
筋骨隆々の見た目と合わない可愛らしいカフェに集まった僕への第一声が上である。本当に急なのだ。
「食べ物を粗末にしてはいけない。オレはそう気づいた。」
僕なら確実に頼まないようなすさまじい大きさのパフェ。アカオニは、それを細いスプーンでガリガリ開拓しながら、重々しく繰り返した。
「ならば、豆を投げるのも本来避けるべきではないだろうか…?」
「う、うん…そう、なのかな?」
「そうだ」
「アッハイ」
節分を根本から否定する正論を堂々と述べるアカオニ。彼の眼はなぜか据わっていた。
「例年通り、豆を投げることはやめようと思う。
そして、節分について、俺に一案があるのだが…採用してくれるとありがたい」
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「っというわけでっ!
{☆節分対抗☆ドッジボール大会}の開会を宣言するよぉっ!」
「「「Hoooooooooooo!!!!」」」
「投げる部分しか残ってないよっ!?」
“クリスマス”担当で僕の親友のキリストののんびりした絶叫(?)が、2月3日にこだました。
僕のツッコミは、誰にも拾われることなく、二月の冷たい風に乗って青い空へと舞い上がっていったとさ。
そんなこんなで開催したドッチボール大会。事前に行った予選大会で八名を選抜し、準決勝の3v3で残った3人が決勝戦進出、三つ巴で戦うといった流れだ。
そして当日、決勝戦敗退した観客達の前に現れた6人は、やはりな、というべき予想通りのメンツだった。
まず、タンゴとウィッチ。まあこの二人はもともと優勝候補だった。タンゴは毎年でっかい鯉のぼりをブン回してるし、ウィッチはハロウィン当日に一日中踊り明かしていた。そりゃ体力もつくだろう。
ただ。
「あァん?なんでオメーがここに…」
「それはこっちのセリフよ!あんたなんかガタイいいだけの壁でしょうが!」
「あんだと!?オメーだってガキだろが!」
いつも通り、やいのやいの言い合っている。今日も平和だなぁ、としみじみ感じた。
アカオニも出場だ。ボールを一度奪ってからは彼の独壇場だったらしい。怖い。
「…む?」
ただ、彼も驚くような出場者が一人。それは…
「ひわわ…人がいっぱいです…」
まさかのネンガ。見た目からしてか弱そうだが、何か球技の心得でもあったのだろうか。ど素人の僕もぜひご教授願いたい。
そして、コイツは絶対入るだろうな、と思っていたやつが一人。
「やァやァみんなッ!元気そうで何よりだッ!鍛えてるかッ!」
“体育の日”担当のプロテインだ。お手本のような熱血漢で、常に汗をかいている。それでも全く臭くないのが不思議ないいやつだ。
「タンゴ少年ッ!鍛えてるかッ!」
「おう!…ところで俺は少年じゃねーぞ?」
タンゴとは、筋肉仲間として一緒にジムに行ったり、おススメのサウナを紹介しあったりと仲良くやっているようだ。
その調子でウィッチとも仲良くしてもらえないかな?
そして、最後の一人。たぶんみんなにとって一番意外だったと思うのが…
「サンクスが勝ち残るとは思わなかったよねぇ。ほんと、びっくらこいちゃったよぉ」
僕だった。
いや、僕もよくわかっていない。ただひたすらにボールから逃げてたらいつのまにか最後の一人になっていた。
一回もボールに触れずに勝った僕は、果たして勝ったと言えるのか?
キリスト
(始まった瞬間に「やっほーぅ」と飛び出して行って自分からボールの弾道に入って退場、ほぼ最初から試合を観戦していた)
に聞いてみたところ。
「まぁ…大丈夫っしょぉ!」
超不安。
ともかく、この6人で、大会の幕は開かれた。
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ギュンッッッッッッ
咄嗟に首を逸らす。ついさっきまで僕の肩があったところを、アカオニが投げたボールがすっ飛んでいった。風圧が首にあたってチリチリする。
大会でも逃げ続ける僕と、積極的に攻める5人。試合の面白さとしてはいかがなものかと思うものの、僕は一度もボールに触れることもなく決勝の3人に残った。
そして、ここからはもう命懸けである。
決勝戦に残ったアカオニとタンゴは目くばせし合うと、僕を集中的に狙い始めたのだ。
同盟を組むのはアリとは言ったが、これは流石の僕もキツい。
アカオニが投げる自動車のようなボールを避けると、無理な体勢になった僕の視覚から正確なボールが脇腹を狙ってくる。身をひねって避けるのも一苦労だ。ヒュンッと音もそこそこに飛んでくるからなお怖い。
「サンクスおいっ!お前も少しは投げ返せよっ!」
「むりぃぃぃぃぃぃっっっっ!」
タンゴが叫びながら頭上数mまで飛び上がる。ほぼ頭上から垂直に落ちてくるボールを避けながらボールではなく絶叫を投げ返した。
そのままタンゴは物理法則のままに引っ張られ場外。くそぉぉぉぉ、の一言で、僕とアカオニの一騎討ちになったことを悟った。
ほんとに無理じゃないかな?
とりあえず、手に入ったボールを投げてみる。ひょろひょろと浮いたボールはあっさりとアカオニにキャッチされた。そのまま投げる体勢になるアカオニに身構える。
そのまま、投げた。
無造作に。
世界から、音が消えた。
ゆっくりになる世界で、ボールが目の前に迫る。
あ、死ぬ。
…なわけないッッッッッッ!!!
投げるフォームを見た瞬間から、次の一球はヤバいとはわかっていた。
僕はあらかじめ、球の軌道を推測して避けられるよう最小限の動きをシミュレーションしていたのだ。
ただ…想定していたより少し速い。間に合うか?
いつもは使わない筋肉を総動員して、上半身を全力で捻る。
そのまま、ふっと弾道から抜けた。
刹那。
体が浮いた。
地面に背中から着地しながら、僕は気づいた。
僕、ボールの風圧で吹っ飛ばされたんだ。
あの速度、この体勢からもう一度避けるのは不可能。負けた。
そう、確信した時。
「俺の負けだ」
…へ?
「最初に、こうすると決めていた。オレの全力をサンクスが避けられたら、俺の負けを認めると」
オレが下手に本気を出すと味方まで巻き込むからな、と冗談か本気かわからないセリフを残して悠々とコートから出ていった。
会場が歓声で沸く中、僕だけは腰が抜けて動けないまま、ぽけっとアカオニを見つめていた。
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【行事@仁ch掲示板】
ここは行事担当者が雑談するスレです。
互いを尊重し、不快な思いをさせないよう心がけましょう。
隣の名無し:
今日のドッチボールやば
名無しの権兵衛:
ソレナ٩( ᐛ )و
来週の名無しは:
タンゴは…もうあれは人間じゃない
来週の名無しは:
空中でボールを投げるという人外技w
名無しの権兵衛:
ネンガがスナイパーに見えたの俺だけ?
来週の名無しは:
本当にスナイパーだろあれはww
隣の名無し:
プロテインは漢だった
来週の名無しは:
ウィッチのフェイクに撃沈しとったけどナ
来週の名無しは:
良くも悪くも純粋だからなプロテインは
隣の名無し:
そのウィッチもアカオニにやられたがな!
隣の名無し:
やっぱしシンプルな力が強い
来週の名無しは:
アカオニのボール速すぎww
隣の名無し:
あれ音速超えてたってマジスカ
名無しの権兵衛:
まじっぽい。“数学の日”が言ってた
名無しの権兵衛:
あんなに興奮したスウちゃんは久しぶり
来週の名無しは:
Σ(゚д゚lll)ダニィ!?
隣の名無し:
それを避けるサンクスってなんなん?
名無しの権兵衛:
つーかあの人、ボール全部避けてたw
来週の名無しは:
_:(´ཀ`」 ∠):gkbr
隣の名無し:
とりま全員人外認定って事でオーケー?
来週の名無しは:
もちろん
名無しの権兵衛:
おっけい
2chっぽくしてみた。2ch行ったことない俺が初めて訪ねて見よう見まねで真似したんでちょい拙い。
なにこれってとこあったらスマヌ