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忘却された匿名の第一章
短編カフェで『むらさきざくら』名義だった前のアカウント名は?
ただし、そのアカウント名の表記そのままで書く。
例:むらさきざくら→◯ Murasakizakura→× ムラサキザクラ→×
※これは『忘却した紫桜の第二章』の別視点のものです。下記リンクから先に読んでください。
https://tanpen.net/novel/6ded0ef5-a4fc-4889-a880-b9dc3e6e25bd/
気づけば、時が止まっていた。目の前にいる亜美は、何故か止まっていた。
「どうなってるの…?」
先ほど、実を食べた。潜在能力を引き出せるとかなんとかだった。
(早く、世界を救ってほしいんだけどなぁ…)
亜美をじっと見ると、不意にその言葉が浮かんできた。
わかることを、着実に思いだす。えーと、まずはわたしは、『サクラ。』という奴に生み出されたオリジナルキャラクター、通称オリキャラ。わたしは、『異能力の友達姉妹』というシリーズの主人公。『サクラ。』は、他にも『レイとの遊び』『魔法街』の世界を生み出していて____
近くにあるパソコンは、幸い正常に動いた。『サクラ。』が活動している『短編カフェ』にアクセスして、『ななし』のままアカウントを新規登録。
「はぁ…?」
思わず呟いた。
嘘だろう?『サクラ。』はない。ユーザーページがない。短編カフェユーザーの殆どが作っているユーザーページが。試しに小説と日記検索をすると、指折りで数えられる程の投稿があっただけだった。
『レイとの遊び』で検索する。『サクラ。』が作ったものと、もう一つ。
『むらさきざくら』
誰だ、こいつは?
同じ桜が入っている時点で、かなり似通っていると言っても過言ではない。いや、同じ?転生なども有りうるのだ。
幸い、わたしには時間が有り余るほどある。わたしは、『むらさきざくら』の日記を漁り始めた。
--- * ---
ひとまず最初から当たり始めたところ、前半で当たった。
『日記13 前アカウント、あるんです。』
この日記タイトルを見た時、複雑な気持ちになった。ああ、まだ忘れていないのか?いや、ネタとして扱っているだけで、わたしたちのことは忘れ去っているはずだ。
内容は、前アカウントがあります。前アカウントで連載していたシリーズで、1番やってほしいコメントが多かった物を採用します。
『ちなみに、完結した後は第2候補を採用、そして残り…という感じです。』
バンッとキーボードを叩きたくなる衝動に駆られる。『レイとの遊び』は、『むらさきざくら』の手によって完結した。完結したなら、次はどちらかだろう?そんなことも覚えていないのか?なら、なんで新シリーズを知らんふりしながら連載している?
「ふざけんなよっ…」
久々に口が悪くなる。
忘れられた。完全に。レイへの妬みや嫉妬よりも、今は『むらさきざくら』への怒りのほうが着実に、確実に、こみ上げてきている。
「お前っ!!」
気づけばわたしは、キーボードを叩きのめしていた。その後、落ち着く暇もなく、ファンレターを送信した。
『お久しぶり。元気?わたしのこと、忘れてない?』
下手すれば命に関わるのに、そんなコメントしか遅れない。自分にも、この元凶の『むらさきざくら』にも腹が立って仕方がなかった。
--- * ---
ストーカーかのように、『むらさきざくら』に張り付いた。
やがて更新されると、何の変わりもなく、ただ平然と、何もなかったかのように『むらさき日記』を更新していた。わからないのか?相当頭の切れるやつじゃなかったのか?
『ファンレターは見てくれなかったの?私は潜在能力を引き出して、心が読めるようになったから。だれにも言ってないけど』
そんなコメントを送った。狂気じみているのは、十分知っている。でも、生きるためにはこうするしかないのだ。
向こうではフィクションでも、こっちはノンフィクションなのだから。
--- * ---
『私に既読になったか確かめる術はないから、こうするしかないんだ。もしきちんと話したいって思ってくれたのなら、『匿名コメントへ』っていう鍵小説を作って、『短編カフェのむらさきざくら』っていう鍵にして投稿して。期間は1週間ね。1周年っていうけど、私のことを忘れて、もう1年余りが経つってことは覚えておいて』
我慢ならなく、わたしは催促した。あんなやつが1周年も続けているなんて腹が立ったし、何しろ憎しみしかない。
確認されたのか、少しすると『匿名コメントへ』という鍵小説が作られた。『短編カフェのむらさきざくら』という鍵で打ち込むと、『ここで連絡等をお願いします。』のみあった。端的だが、やってくれただけでも、まだ生きる望みは手元にある。
『言う通りにしてくれたんだ、ありがとう。会いたいけど、たぶん今は会えないから、ここで会うしかないよね。
ところで、今、1番仲が良い人は誰?勿論リアルのほうでも、こっちのほうでもいい。オリキャラでもいい。そこでどんな会話を交わしているのかを知りたい』
こんな奴と関係を持つ人は何者なんだ?その人達は、わたしたちを覚えている?
少し経つと、更新されていた。
『気づきました。あなたは、前世の小説の登場人物でしょうか?』
『やっと気づいたんだ?あの子は生きることができたのに、こっちはここに閉じ込められっぱなし。私はあの子を恨んでない、お前を恨んでるんだ!』
怒りにまみれた口調。生きたい。動きたい。この止まった時の中を脱出したい。だから、わたしはこんなコメントを送る。生きるため。死なないため。
--- * ---
『あなたの気持ち、十二分に伝わってきました。
あの子と同じように、あなたを生かせます。絶対に、です。約束です。
だから安心してください、真紀さん』
熟考したのか、更新は比較的遅かった。
ああ、と思う。
そうだ、わたしの名前は真紀。真紀だ。ちゃんと名前を呼んでもらえた。今、わたしはここで生きることができるんだ。
今度こそ。梅野三姉妹も、ちゃんと生かせてもらえないと。
わたしはそう思う。今度こそ生きる。時を動かす。それが、むらさきざくらができること。