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Chapter 5:夢解星羅の哀惜
なんで死んじゃったのかな。
まだ高校生の|養女《むすめ》を残して死んじゃうなんてさー。まだ|養親《おや》孝行すらできてないのに。
ぼぉっとしながらそこら辺をぶらつく僕──|夢解 星羅《むかい せいら》は、今すごく困っている。
東京の郊外から都会に出て、また郊外に戻ってはを繰り返しているうちに埼玉まで来てしまった。
ちなみに、所持金は132円。
さっきまでは332円あったが、目の前に現れたアイスショップのクーポンに釣られ200円も使ってしまったのだ。
星羅「はぁ…どうしよー。」
危機感の感じられない間延びした自分の口調を慰めるようにチョコミントアイスを食べる。
ひんやりしたアイスに上乗せされるようにミントの涼しい香りが口の中に広がる。後からくるチョコの甘みも最高だ。
星羅「はぁ、本当にどうしよー。」
路頭に迷ったと言っても過言ではない状況である。
本当に野垂れ死そう。まぁ、それでもいいんだけどさー。
向こうのほうで悲鳴が聞こえる。あぁ、サティロスでも出たかなー。
いっそのことサティロスが始末してくんないかな、この死に損ないのことを。
餓死は辛いだろうし自分で死ぬ勇気もないからなー。できれば心臓を一突きで殺してくれるタイプのサティロスに殺してもらいたいなー。
通り魔でも来ないかなー、と空を仰ぐ。
向こうのほうから悲鳴が聞こえる。
サティロスが出たのかなー。まぁ、行こうとも思わないけどー。
サティロスの方に僕が行っちゃうと自殺と一緒になっちゃう。自殺は重罪でもれなく地獄っておばあちゃんが言ってたからなー。
星羅「いっそのこと、空が落ちてくればいいのになー」
雲ひとつない快晴を恨めしく思いながら、アイスコーンを頬張り巻いてある紙を捨てた。
一瞬でパリパリと胃に吸収されたそれを体の中で落ち着かせながら、どうにかしようと大通りに出た。