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物は大事にしてね。
名家の娘「母上!私ね、今度の誕生日はお人形が欲しい!」
母親「わかったわ、当日買いに行きましょう。」
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当日
名家の娘「これがいい!」
母親「名前はどうするの?」
名家の娘「うーん…|恵良快《えいかい》!」
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一年後
母親「はい、誕生日おめでとう」
名家の娘「わぁ!綺麗なお着物!」
その日から、恵良快は箱に仕舞われ、遊ばれなくなった。
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数十年後。
名家の娘「あれ?まだこの人形あったんだ」
娘は大人になり、子供の頃の物などを整理していた。
名家の娘「名前、`恵忌傀`だっけ?...不気味だなぁ...捨てよう...」
恵忌傀は箱に入れられ、外に捨てられた。
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当夜
--- 『何で捨てたの?』 ---
--- 『なんで?』 ---
--- 『酷い。』 ---
--- 『許さない。』 ---
--- 『**`許サナイ!`**』 ---
--- 『**`呪ッテヤル!`**』 ---
--- 『**`呪イ殺シテヤル!`**』 ---
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翌朝
町の人1「なぁ、あそこの名家の方々、亡くなったらしいぞ。」
町の人2「なんだって!?」
町の人1「全員、原因不明の死だ。」
町の人2「全員!?なんてこった...疫病でも流行るのか?」
町の人1「大変だ、くわばらくわばら...」
天神「...原因不明の死、か...確かめねば...」
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『`あの子、助けないと、捨てられる、助けないと`』
恵忌傀は人形を抱えた少女とその一家に呪いをかけようとした。
____その時。
天神「待たぬか、其処のお人形さん。」
『誰?人間?...人間じゃないね...敵?』
天神「...童は紫妖苑 天神と申す者。敵か如何かは君次第じゃ。」
『...なんで、邪魔する?』
天神「...何故、今人の子に呪いをかけようとした?」
『...|あの子《お人形》を助ける為』
天神「...人の子は、其の子に酷いことをしたか?」
『これからきっとする』
天神「...折角選ばれたのに離れ離れになる辛さは、君がよく分かっているじゃろう?」
『!それ...は...』
天神「誰しもが、物を大事にしない訳ではない。もう一度、考え直さぬか?」
『...わたしは、捨てられた、憎い、許せない!』
天神「...ならば、童の許に来ないか?」
突然の提案に、恵忌傀は驚いた。
『.......わたし、復讐する、だから...』
魅怪「もう、其方を捨てた者はいない。其方は|彼の子《お人形》を助けると言ったな?
考えてみよ。独り善がりの思考を押し付けられ、大切な者を失う。
否、奪われる。其の人形は助けられていない。其れが其方の望みなのか?」
『!...違う...』
天神「.......然らば問おう。君の願いを。」
『...捨てられたくない。...幸せになりたい。...動けるようになりたい』
天神「...その願い、聞き入れよう。」
天神は恵忌傀に手を差し伸べた。
恵忌傀は、手を伸ばせた。動けるようになったのだ。
天神「さて、一緒に《《帰ろう》》。」
恵忌傀「...うん。」
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恵忌傀「...紫妖苑様、わたし、お名前、ほしい。」
天神「ん、名前か?そうじゃのう...」
紙を取り出し、名前の候補を天神が書いていく。
恵忌傀「...!これがいい」
|幸花《さちか》、それが恵忌傀の選んだ新しい名前だった。
天神「ふむ、幸花か。改めて、よろしく頼む!」
幸花「...紫妖苑様は、何の神様なの?」
天神「童は願いの神、心の神。まぁ、他の神々と比べてちっぽけな神じゃがな。」
幸花「...わたし、紫妖苑様を、お手伝いする!」
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天神「幸花、ちょいと来てくれぬか?」
幸花「?」
天神「目を瞑ってごらん。」
幸花「?...」
天神「参、弐、壱...目を開けて良いぞ!」
幸花が目を開けると、服が綺麗な赤色のお着物に変わっていた。
幸花「...!きれい...」
天神「気に入ってくれたかの?」
幸花「うん。有難う」
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数十年後
天神「はて?幸花?何処じゃ?」
ある日突然、幸花の姿が見えなくなった。
ただ、鈴の音がどこからともなく聞こえてくるのだ。
天神「...嗚呼、其処か。」
幸花が姿を現した。
幸花「...なんで、わかったの?」
天神「鈴の音が聞こえたからのう。もしや、座敷童子になったか?」
幸花「...うん。」
天神「成程。其れで童に見えなくなってたのか...」
幸花「...ごめんなさい。」
天神「?善い善い。幸を与える妖怪になった、喜ばしい出来事じゃ!存分に誇れ!」
幸花「!...うん。」
天神「座敷童子か...此れからは如何するんじゃ?」
幸花「?これからも、紫妖苑様に仕える。」
天神「...そうか。然らば、此れからも一緒じゃな!」
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こうして、今も幸花は天神の傍で手伝っているのでした。
私も捨てた縫いぐるみに呪われて殺されないか怖くなってきた...(主コメ)