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カタスミ
小さな家から、スープの良い香りが漂う。ナツキ・スバルは、薪割りの手を止めて腰を伸ばした。背中を流れる汗を、冷たい風が心地よく拭い去る。かつて死に戻りの恐怖に怯えていた心は、今は穏やかな静寂に包まれていた。「スバルくん、ご飯ですよ」エプロン姿のレムが、木製の扉から顔を出す。青い髪が夕日に揺れて、柔らかく光る。その顔には、かつてのような悲壮感はなく、ただ愛おしい人に向ける温かい笑顔があった。「おう、今行く」スバルは斧を置いた。自分の手は、もう魔女の臭いも、血の匂いもまとっていない。ただの、一人の男の手に戻っていた。「今日のスープ、上手にできましたよ」「レムの作る飯なら、なんだって世界一だ」「もう、すぐそういう冗談を言います」食卓を囲む二人の影が、夕暮れの光に長く伸びる。決して許されない道を選んだかもしれない。たくさんの人々キズつけ、置いてきてしまったかもしれない。それでも、スバルの隣にはレムがいる。レムの隣には、スバルがいる。「ねえ、スバルくん」「ん?」「……愛しています」その言葉に、スバルは少しだけ照れくさそうに笑い、レムの手をぎゅっと握り返した。二度と戻らない選択の果てで、二人は小さく、確かな幸せを噛み締めていた。