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公開中

水の星の端くれで 【2】

1日でひとり来ればいい方だよ。 過去にそう語るのはひとりのおくりびとの男である。 おくりびとはその仕事柄ゆえ、仕事が舞い降りることは少ない。 それでもおくりびとは落ちた星々を空におくり返し、その時、星から感謝の証として星の光の素であるスターリングを授かることがある。 それは実に美しい輝きを放つので、宝石商に非常に高値で売れる。 それゆえにおくりびとはおくりつづけることをやめないのだ。
サジタリウス町の1番北に位置する場所には、アエクラー教会がある。 教会には街全体に音を響かせるほどの大きな鐘が備わっており、いつも12時には信者たちが礼拝をしている。 ゴミ拾いなどのボランティア活動を行い、街全体の治安維持に努めているらしい… 星もいななく深い夜のこと。 「点呼を始める。」 リーダーが点呼を始める。 ランティア。「はい。」 セダム。「はぁい。」 ルリト。「…あっはいぃっ!」 ハナニラ。「はーいっ!」 「よし、全員いるな。」 リーダーらしき男は全員の声を確認すると、うんといったようにうなづいた。 「りぃだぁ。あとどのくらいで核は満タンになるんですかぁ?」 ハナニラが甘い声でリーダーの男に尋ねる。 「…これで、ちょうど半分だ。」 そうなんだぁ、とハナニラは相槌を打つ。 「…し、死者の人たちも、きっと嬉しいですよ…ね!神の一部になれるのですから…!」 ルリトは嬉しそうに話した。 「キミさぁ。全然集められないくせにさぁ、よく言えるよね。」 セダムはルリトを指さして言った。 「全然ダメですね。まさか私より集めている人がひとりもいないなんて…」 ランティアはやれやれと言ったように言った。 リーダーらしき男はそんな全員の声も気にしないようで、話を続けた。 「今夜も落ちた星を集めよ。ノルマは最低でもひとり10個。達成できなかった者は明日の朝まで教会の警備だ。」 リーダーのその言葉を聞いて、ルリトは焦りを感じたようだった。 「うぅ…もう警備は嫌だなぁ。」 「ふっ、お前がグズなだけだろ。」 ランティアがそういうと、さっと教会から出ていってしまった。 「…神よ、貴方がこの地に再び蘇る時が今、近づいております…貴方様の為に、私たちは最善を尽くして参ります…」 教会の中には大きな黒星のようなものがゆらりと浮いて佇んでいる。 「りぃだぁ。はやくいこー?ハナニラとってもさびしぃよぉ。」 「今行く。…ちょっと待ってくれよ。」 リーダーの男は痛む腰を抑えながら、這いずるようにゆっくりとハナニラの方へと寄っていった。 「痛みに耐えるリーダー…男前でステキ!」 ハナニラがそういうと、リーダーの男はははっと乾いた笑いを浮かべた。 サジタリウス町の夜空は、また星々が降り注ぎ始めた。