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𝓮𝓹𝓲𝓼𝓸𝓭𝓮 𝓼𝓲𝔁 何処からか
新キャラが怒涛の勢いで登場してくる。
やっと投稿できたぜ☆
―|永遠《エンダー》視点―
一通り話し終えたお姉ちゃんは、深い溜息を吐いて視線を下に落とした。
てふてふ「···たまに、どういう選択をしたら正解だったのか、分からなくなるんだ。大切な人を失って、地位も、名誉も、元の世界も、全てを失って。どうすれば、平和に生活出来たのかな···って。」
寂しそうに呟きながら、ポケットから何かを取り出す。
―それは、お姉ちゃんの「妹」になった時にみんなで撮った、家族写真だった。
···ずっと、持ってたんだ。
それを見たクロウが呟く。
クロウ「···皆さん、幸せそう···ですね。···僕は···。」
何か言いたげだったが、途中で口を閉ざした。
お姉ちゃんが、何時も被っている鮫の帽子を脱いだのだ。
今まで隠していた部分···折られた角の部分が露わになる。
頭を触りながら悲しげに微笑むお姉ちゃん。
てふてふ「···僕、恐怖心が無くてさ。追放される時も、"怖い"とか、"痛い"って感情よりも、魔王様に対する怒りとか、|永遠《エンダー》に対する申し訳無さとか、そっちを考えてた。危険なコトにも突っ込んでくから迷惑ばっかかけてたし。」
何時も、表では明るく接してくれていたお姉ちゃんが、こんな事を考えていたなんて。
何て声をかけてあげたらいいか、考えていると···。
ドンドンドンッ!!
クロウ「うわぁ何!?」
てふてふ「誰ェ!?」
いきなりドアが叩かれ、クロウとお姉ちゃんは同時に飛び上がった。
···いや、驚き過ぎ。···僕もちょっとビビったけど···。
一方奏者さんは、不思議そうに首を傾げて言った。
奏者「ちょっと ビックリ した···。 だぁれ? 知ってるひと? いいひと? それとも··· わるいひと?」
一体誰なんだろう。
悪質プレイヤーとかだったら返り討ちにしてやろうかと考え、不審に思いながらドアを開ける。
その途端。
???「うわぁぁぁぁぁ!!助けてくれぇぇぇっ!!」
|永遠《エンダー》「え!?何!?誰!?」
転がる様にして入ってきたのは、右腕が根元から無い、白黒の···何だかシャチみたいな青年だった。
???「あぁ!!ごごごごめんなさ···って魔軍!?いやホントにそんなつもりじゃないですホントに申し訳ございません!!」
その青年は、物凄くビビり散らしている。
声をかけようと、一歩近づくと···。
???「うわぁホント許して下さい!!おお願いだから殺さないでくれ!!」
|永遠《エンダー》「···いや、殺すつもりは···。」
???「着いたよ〜!!ってえ?もしかして貴方達···魔軍!?」
僕の声を遮る様に話しながら、また別の誰かがやってきた。
振り向くと、そこにいたのは2人の少女。
1人は羽が生えた妖精。
もう1人は、角も羽や翼も、尻尾も何も無い···。
···まさか。
???「うわァァァァァッ!!ニ、ニンゲンッ!!」
シャチの青年が叫ぶ。
"ニンゲン"という単語を聞いた瞬間、パニックに陥った。
てふてふ「ニンゲン!?ニンゲンってあの!?」
|永遠《エンダー》「何でニンゲンがこの世界にいるの!?ニンゲンのプレイヤーなんて、いないと思っていたのに···。」
僕達が騒いでいると、外からまた別の···どこかで聞いた覚えのある声がした。
???「···ハァ···私を···置いていかないでください···。」
ニンゲンの後ろから、その姿を現す。
片側にだけ角が生えた、緑色のショートヘアの女性。
彼女は僕達を見るなり、目を丸くして言った。
???「え···!?皆様、何故···。」
次の瞬間、奏者さんの顔がパァッと明るくなり、その人に駆け寄った。
奏者「《《てれしあ》》さん!! 元気? よかったぁ···。 ひさしぶりだね♪ また会えて 私 うれしい!!」
ウソでしょ···。
本当に···本当にテレシアさんなの?
···《《自分ごと城を爆破した》》から、とっくに···もう、死んでしまっていたと思っていたのに。
クロウ「···あ···あのぅ···。」
今まで黙っていたクロウが、恐る恐る手を挙げる。
クロウ「何が何だか···サッパリ···。」
一瞬でその場が静かになる。
この気まずさに耐え兼ねたのか、奏者さんが口を開いた。
奏者「とりあえず "ジコショーカイ" やろ!! あ、 えと··· 私の 名前は "奏者ボカロファン"って いいます。 えっと··· よ、よろしく お願い します!」
その挨拶を始めに、お互いに名前が分からないと何も進まないと考えたのか、次々に自己紹介をやりだした。
てふてふ「てふてふだ。んで、こっちが僕の妹の|永遠《エンダー》。改めて、よろしくね♪」
|永遠《エンダー》「僕は|永遠《エンダー》。"永遠"と書いて"エンダー"さ。よろしく。」
クロウ「僕のユーザー名はクロウ。烏と人のハーフ?みたいな種族だよ。よろしく···。」
挨拶をした後、クロウはチラリとシャチの青年の方を見る。
???「お、俺!?」
クロウと目が合った彼は、ビクッと肩を震わせた。
オルフィー「お、俺は、ユーザー名"オルフィー"。え、S3の···タン···ク···。だけど···ビ、ビビりだし弱いし···。」
へー···。S3タンクねぇ···。
逆になんでこんなビビりなのにS3までいけたんだろ(コラ)。
???「じゃあ、次は私かな。」
ニンゲンの女の人が手を挙げる。
よつじ¡?「私はよつじ¡?っていいます。本名は教えてあげないけどね、個人情報は隠すのが常識でしょ?···まぁ···見ての通り、種族はニンゲン。よろしくね。」
ニンゲン···。
この世界には、「今は別だけど、昔はニンゲンだった」というプレイヤーや、クロウの様に、「何かと人のハーフ」というプレイヤーは多数存在する。
しかし、「純粋なニンゲンだ」という人は、今まで見た事も聞いた事も無かった。
ニンゲンは、他の種族と比較しても圧倒的に弱い。
基本、能力や魔力は持たないし(ここに来た時にもしかしたら宿っているかも)、回復速度も遅く、「再生」というモノが出来ない。
加えて「名前は知ってて凄く有名だけど、見た人は殆どいない」という、人間界で言う"宇宙人"みたいな感じの種族なモンだから、もしニンゲンだとバレたら、捕まって色々されそうである。
ニンゲンは、他の種族に比べ、力も非常に弱い。
ランクで強弱が分かる様なこの世界で生活するのに苦労しないか、と思ったが、胸元についてるバッチを見ると、僕達と同じAランクだったから、そこそこ実力がある人なんだな、と思った。
???「へぇ〜···!!貴方ニンゲンなんだ···!初めて見た···。···あ、次は私かな。」
妖精の少女が、よつじ¡?に目を輝かせながら言う。
リア「私はリア。"ネモフィラ"っていう花から生まれた妖精だよ!よろしくね!」
そして最後は···。
シュオン「私は"シュオン"といいます。本名は···先程奏者様に言われてしまったので、隠す必要も無くなってしまいましたね···。私の本名は"テレシア"。"テレシア・フィルフェート"といいます。元々、王族の秘書として働いていました。」
テレシア―いや、シュオンさんのフルネームを聞いた瞬間、体が強張った。
彼女が王族である事、秘書である事は《《あの時》》から知っていた。
でも、今まで苗字なんて聞いた事が無かった。
シュオンさんの苗字である"フィルフェート"というのは、3家系あった王族のうち、魔王様とその親族の"ネ―トフィトラル家"の次に位が高い家系を示す。
そんなに権力の強い人だったなんて···。
てふてふ「···よし、全員終わったな。さて、ここからだけど···。」
全員の自己紹介が終わった事を確認し、お姉ちゃんは口を開く。
てふてふ「今ここで"帰って"と言われても、夜だしここからいら森だし、迷子になるよね。」
そこまで言い、奏者さんの方をチラリと見た。
お姉ちゃんと目が合った彼女は、小さく頷いてから話し出した。
奏者「えと··· 私達 魔軍の 家 すっごく広いし 部屋も いっぱい あるから ここで 休んで いって♪」
お姉ちゃんが続けて言う。
てふてふ「そういう事だ。今夜はウチに泊まっていってくれ。えっと···。オルフィー、リア、よつじ¡?は先に休んでて。···シュオンは···残ってくれ。あと、クロウも。奏者、3人の事、部屋に案内してくれるか?」
奏者さんは元気に「わかった!」と頷くと、3人に向かって言った。
奏者「て事で あ、えと··· お、おる···おるふぃー、さん よつじさん りあさん ついてきて! 部屋に "アンナイ" してあげる!」
奏者さんを先頭に、4人は階段を上っていった。
5分程して、彼女はパタパタと走りながら戻って来た。
シュオン「あ、あの···。」
そのタイミングを待っていたのか、奏者さんがソファに座った所でシュオンさんは口を開いた。
シュオン「···私も、魔軍に入る事は···可能でしょうか···。」
一瞬、沈黙が訪れる。
しかし直ぐに、奏者さんは明るい表情になって言った。
奏者「てれ···いや ちがう···。 えと··· しゅおんさんも 魔軍に 入って くれるの? いいよ! やったあ♪」
何時もの様に、手をパタパタ振って喜ぶ。
シュオンさんは、一瞬驚きの表情を浮かべ、そして、直ぐに笑顔になった。
シュオン「いいんですか···?ありがとうございます···!!」
てふてふ「これからよろしくね。···あぁ、あと、僕達の事は普通に呼び捨てでいいし、敬語使わなくていいよ。」
こうして魔軍に新たなメンバーが加わり、僕達は大喜びで歓迎をしたのだった。
―迫り来る「あらし」に誰一人、気付く事無く。