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料理
虫が嫌いな方は🔙
お願いします。
「雄大くん、ご飯できたよ〜!」
「ありがと。」
そう言って私は席についた。
「今日は、雄大くんが好きな、ビーフシチューだよ!」
「やった!いただきます!」
そう言って雄大くんは食べた。
やっぱ、カッコいいな、そう思って見惚れていた。
ただ、あの性格だけは直して欲しいけど…。
なんて考えていたら、
「まずっ。」
って言われた。
「えっ?」
「いや、だからまずいって。」
そう言いながら苦笑いをした。
「なんでそんなこと言うの?」
「いや、まずいもんはまずいじゃん。」
私も食べてみる。
でも別に、不味くはない。
「全然不味くないじゃん?」
「いや、お母さんと違ってまずいじゃん。奏ってそんなに料理、下手なの?」
その言葉にカチンときた。
「なんでお義母さんと比べるの?わざわざ比べなくてよくない?」
「でも、味は大事だろ?」
「いい加減にして。わかった。味変えてくるから待ってて。」
「お母さんの味に似せてくれよ。」
はぁ〜。
やっぱりそうか。
雄大くんは、私の料理にいちいち文句をつけてくる。
『お母さんの味に似てない』
って言う理由で。
どんだけマザコンなんだよ。
そう心の中で毒づきながら隠し味のチョコレートを入れた。
その時だった。
ぽちゃん
そう音を立てて、虫が飛び込んだ。
一瞬のことすぎて何の虫かはわからなかったけど、5cmはあるであろう虫だった。
それでも私は構わず混ぜ続けた。
いい加減にしてほしくて。
日頃の恨みが溜まってて。
料理がまずいと言ってきて。
ことあるごとにお義母さんと比べてきて。
マザコンすぎてウザくて。
少しの間、無心になってかき混ぜた。
それから私はお皿に盛った。
「雄大くん、味変えてみたんだけどどう?」
そう言ってお皿を渡した。
これで雄大くんがどうなるかは分からない。
それをわかった上で渡した。
すると、
「そう、これだよ。お母さんの味と同じだ!」
って言ってきた。
私はその時驚いた。
まさか・・・
「本当?」
「ああ、本当だよ。何を入れたんだ?」
「秘密。」