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どうしてこんなことに
本編のルタールはこんな子ではありません。
バドエンです。殺人描写あります。
変わってしまうのが怖い。
それはずっと昔から抱えてきた思い。きっと物心つく前から、俺のなかにはあったのだと思う。
生きていれば環境は変わっていく、そんなことは言われなくてもわかっている。わかってるからこそ、怖いんだ。今ある平和が、平穏が、いつか壊れてしまうこと。それがとっても、恐ろしく思えた。
ああ、星が、また何かを告げているよ。今度はなあに?…また何かが起きようとしているのか。
これ以上、俺の中の平穏を奪うのは止めてくれ。そんな願いも届かず、世界の歯車は動き続ける。
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「ルタ」
愛しい弟、クラークステラの声が聞こえてきた。
「どうしたの、クラ」
「あ、小腹がすいちゃって。ルタのパーケーキ食べたいなって」
「ふふ、もちろんいいよ。今すぐ作るね」
「ほんと?やったあ」
瞳をキラキラさせて喜ぶ姿が可愛くて、ずっと見ていたいと思った。
俺はキッチンに立ち、手際よくパンケーキを作っていった。星形のパンケーキにするのが好きだから、ちょっと難しくてもいつもそうしてる。そのほうが、クラも喜んでくれるし。あ、ハート型とか作ったらどんな顔するかな。すごく驚きそう。想像しただけでちょっと笑ってしまった。
綺麗なキツネ色に焼けた星形パンケーキを3枚重ねて皿に盛り、バターを乗せ、クラの前に置いた。
「うわあ、美味しそう、いただきます」
「召し上がれ」
メープルシロップもかけて美味しそうに、幸せそうに頬張る君を、ずっと見ていたい。そう思った。
可愛い、愛しい、離れたくない、離れて欲しくない。ずっと俺の傍にいて欲しい。それだけでいい。それ以外はいらないはずなんだ。
国と主|《ロード》を守らなくちゃいけないのはわかっている。それが俺たちフラガリアの仕事なのだから。それでも、数年前から現れ始めたシーズという存在のせいで俺たちの平穏は崩れ落ち、国民も皆不安に煽られ、少し前までの活気も輝きもなくしてしまった。こんなことになるのであれば、最初から何も起きなければよかったのに。
何も変わらなければいいのに、止めてしまえたらいいのに。もう、何も変わることがないようにしてしまえたら。この手で、それができるならば…。
ふと、とある考えが浮かんだ。でもそれは、とても許されるものではなくて、あとから考えてみたらあまりにもおかしいことだと誰にでもわかるようなことだった。
しかし、この時の俺はそんなことを思わず、ただ自分のためだけに、実行してしまったのでした。
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俺は今とても気分がいい。クラが変わらないでいてくれるようにするための、あることを実行するからだ。
そう、全て止めてしまえば、それ以上は変わることなんてない。どうして、もっと早くに気が付かなかったのか。
今日の星はあまり楽しそうではない。窓の外から見える城下町には、ほとんど人はいないようだ。曇天はより一層国の雰囲気を暗くしているように思われた。
「クラ、起きてる?」
真っ暗な部屋に俺の声が響き渡る。これほど暗いと中のものがほとんど見えない。
俺たちは2人で一つ、とても大きな、本当に大きなベッドで寝ている。そこにクラの姿はあった。
返事はない。寝ているのだろう。とても気持ちよさそうだ。
どうして寝顔までもこんなに可愛いのだろう。守りたい、と思う。しかし、守らなくてもいいような世界にするのだってありだろう。
俺は持っていた包丁を思い切りクラに突き刺した。
「っ!!誰、なに?!」
クラが目を覚ましそう叫ぶ。
俺はお構いなしに包丁を刺した。何度も、何度も。だってこれでクラが俺の前からいなくなるなんてことはありえないのだから。クラはもう動けなくなるのだから!
これ以外に方法なんていくらでもあっただろうに、俺は包丁で殺すことを選んだ。これが一番単純なんだもの。わかりやすくて、いい。
苦しみ足掻いていたのも束の間、弱っていくクラも、それはそれでまた可愛さがあった。
ちょうど雲で隠れていたお月さまが出てきて、部屋に淡い、薄い光を注いだ。
俺の視界に映ったのは、力なく横たわっている愛しい弟と、その下にできた大きな血溜まりだった。
あれ?俺は、こんなことがしたかったんだっけ。クラはもう変わらない、変わらないけど、傍にはいられない?いや、俺がクラの隣にいればいいだけ?あれ、?どうして、さっきまではこれでいいはずだと思っていたのに。本当に、こんな結末でよかったの?あれ?俺、クラに死んでほしかったんだっけ?いいや、そんなことないよ、そんなことないはずなのに…
やってしまったことはもう変わらない。
俺は、自分の心臓に包丁を深く深く、突き刺した。
自業自得のくせに、こんなことまで思ってしまった。
…とうして、こんなことに…?、と。
本編ではこんな子ではありません!片鱗が見えるだけです。
リクエストにバドエンをとあったので、私の好きなキャラクターで書かせていただきました。
リクエストありがとうございます!