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生理男子ろきくんと、助けたいA組女子達
女子達っていい。優しい。可愛い。
ろきくんはそんな女子達に振り回されてて欲しい。可愛い。
と、いうことでー自己紹介遅れました俺です。
題名でわかりますよね、せいりだんしぱろです。
もうすぐ生理がきそうで怖いので、推し達で気を紛らわせようと思います。
「はぁ……」
俺は一人、自室のトイレでため息をつく。
明日は1、3、5時間目演習の演習三昧なのに。
運が悪くも、俺の目には赤く染まった下着が映っていた。
慣れてるから大丈夫だとは思う。
ナプキンを付けながら、演習三昧とか行けるのか…?と眉を顰める。
…うん、多分…というか、絶対無理だ。
今まで1時間の演習は、若干無理して参加してきた。
俺の生理のことは誰も知らないから、下手に見学なんてしたら怪しまれる。
誰にも迷惑をかけずに、そしてバレずに行くには…無理するしかなかった。
鎮痛剤とか、色々服用はしていたのだ。
でも、毎回効いてる様子はない。
今この瞬間も、無駄だとはわかっているけど、鎮痛剤を口に放った。
寝る前は薬を何個か使う。じゃないと寝れたもんじゃない…
まだ風呂も入ってないのに、俺の体は勝手に布団に崩れ落ちる。
せめてシャワーだけでも…したかったけど。
そういえば、今はみんなが入っているのだった。
今日は我慢だな…というか、動けそうにもないし。
腹を摩りながら、俺は眠りについた。
---
ずき、と腹に感じる鈍痛。
「ん"ん…」
最悪の目覚めだ。
重い体を無理やり動かして、おぼつかない足取りで薬を探す。
歩いている間にも、下からはどばっと嫌な感覚が主張を続けていた。
今日は2日目。いつも重さはほぼ変わらないけど、一応薬を二種類放り込む。
少し口に広がった苦味も、水と一緒に流し込んだ。
「…はぁ、っ」
さぁ、このため息…今日だけで何回吐くことになるのやら。
そのままトイレへ向かって、夜のうちに真っ赤に染まったナプキンを取り替える。
…毎回思う。なんで敵の血は慣れてるのに。この血だけは気分を害すんだろう。
まぁ、そもそも出る場所が場所だもんな…。とりあえずそんなことは置いておく。
みんなの目を盗んでまで毎時間取り替えるのも面倒。
ということで、寝る前にも付けた夜用をもう一度付けた。
「はぁ…」
この間で、だんだん意識もはっきりしてきた。
そのおかげで、ぼんやりしていた痛みも一緒にはっきりしてくる。
「……いっ、てぇ…」
どうにもならない呟きは、冷房で冷やされた冷たい空気に溶けていく。
今は真夏…生理中に熱中症になるわけにもいかない。
ただでさえ寒気がするけど、クーラーを消すわけにはいかないのだ。
のろのろと着替えを始めて、早十分。
さみぃ…
服も全部クーラーで冷やされていて、着ても脱いでもあまり変わらなかった。
少しでも腹を冷やさないための上着(ブレザー)も手に取る。
いつもありがとな、上着…お前のおかげで、俺は授業を受けられる…
感謝しつつ、それまたクーラーで冷やされた袖に手を通した。
ちなみに、今はみんなブレザーは着てないから、俺だけ結構浮いてんだよな…
---
いつも通りを保っているつもりだけど、やっぱり2日目はきつい。
エレベーターまでの道のりがもの凄く長く感じて、思わずため息が漏れる。
やっと着いたエレベーター、一瞬だけの一人の時間を求めて、閉じるボタンに
指を伸ばす。
だけど、走ってきた上鳴と瀬呂によって、俺の野望は打ち砕かれた。
それだけで?って思うかもしれない。でも、今から周りには人しかいなくなるのだ。
腹を思い切り摩ることも、堂々と薬を飲むこともできない。
そんな鬼畜なスケジュールにとって、こんな一瞬の時間が本当にありがたい。
「お、轟!おっはよー!!」
「あぁ…おはよ、」
肩に手を回してくる上鳴。
その衝撃で、頭、腹、腰、そしてナプキン…色んなところに被害が…
「はぁ、上鳴…やめろって、 ごめんな轟、朝からうるさくて」
あぁ…救世主、ありがとなぁ…
眉を顰めたせいで、俺が怒っているとでも思ったらしい。
「…あぁ、俺こそ…」
「いやいや、なんで轟が謝んの!?ほーら、上鳴離れろー」
「えぇっ、ひっでぇー!!」
そう上鳴が離れていったと同時に、ぴこーん、と動いていたエレベーターが止まった。
先に駆け降りていった二人とは対照的に、俺はよろよろと階段を降りる。
共有スペースには、見事にみんな大集合していた。
うわ…座るとこねぇ。
あわよくば座りたい…と思っていたが、全員集合は流石に聞いてない。
「あっ、轟だー!!」
「おはよぉ!」
真っ先に声をかけてきたのは、何故か女子達。
なんでだ…いつもは緑谷とかが来てくれるのに。
いや、別に女子が嫌なわけでは…
「轟くん!今日は遅かったね!」
「あぁ…寝坊して、」
「えぇっ珍しい!」
適当な嘘を並べて、同時にポーカーフェイスを作る。
何故かソファが一箇所空いていて、誘惑に負けて座ってしまった。
「よし、そろそろ教室に向かおうか!」
座ったところなのに、飯田の声が響く。
まぁ、まだ座っていたい、なんて俺のわがままなんだし…
よっ、と立ち上がって、みんなより一足遅く教室へ向かった。
---
「えー、一時間目の演習だが…」
先生が説明を始める。
だが、俺の耳にはもちろん届いていなかった。
朝の薬達は正直…一ミリも効いていない。
ずきずきと痛む腹に、今にも舌打ちが溢れそうだった。
昨日はぎりぎり耐えれる痛みだったから、態度には出していなかったけど…
流石にむり、
腹に手を当てて、小さく摩る。誰にも注目されないくらいに。
「…というわけだ。わかったか?」
「「「「はい!」」」」
全く聞いておらず、返事すらできない俺とは違い、周りからは一致した
返事が聞こえる。
やばい…どこでどうするんだ…?
とりあえず緑谷に聞けばいいか、と、そんな策しか出てこなくて。
内心緑谷に謝りながら、俺は立ち上がったみんなに紛れて、緑谷のところへ
急いだ。
---
演習場所はUSJ。
一対一のバトルをするらしく、先生が前でくじを引いている。
「えー、次。爆豪と轟。」
「はァ!?んでこいつなんだよ!?」
離れているはずなのに、爆豪の怒声が近くで大きく聞こえる。
「爆豪、よろしくな」
「あぁ!?誰に口聞いてんだ舐めプ野郎!!絶対勝ってやる!!!」
頭に響く大きな声。いてぇ…腹も頭も、
でも、ここまできて諦めるわけにはいかない。
ここは…がんばらねぇと、
「では、よーい…スタート」
パァン!!と銃声が響く。
もちろんすぐに飛んできた爆豪を、氷で抑える。
まぁそんな気休めはすぐに壊されて、どかーん!!と爆破をもろに受ける。
「はぁ!?これだけなわけねぇよなぁ!?」
「っ…」
もう一度もろに食らったところで、爆豪が攻撃を止めた。
それと同時に、俺は地面に片膝をつく。
ゆるゆると口に手を当てて、相澤先生の声だけが耳に入った。
「爆豪の勝ちだ。次」
はぁ…やっと終わった。
もろに攻撃を受けて、わざと負けたと同類。
でも、今の俺は終わったことしか考えられなくて、みんなが待つ広場まで
帰って来て、そのまま授業を抜けた。トイレへ行ってくる、という理由を添えて。
先生からはすぐ、「行ってこい」と返される。
態度は冷たいけど、今は深く言及されない性格がありがたかった。
みんなからは完全に見えない、階段の影にたどり着く。
俺の歩みはそこで力尽き、その場にしゃがみ込んだ。
廊下はクーラーもないし暑いはずなのに、なんだか涼しい。
ふぅふぅと忙しない呼吸を整えながら、腹へ手を持っていく。
朝から何も変わっていない痛みに、本日何度目かのため息を吐く。
やっぱり薬は効いていない。というか、逆に悪化しつつあった。
まぁ、そりゃ戦ったらこうなるか…だって2日目だし。
この起きてから2時間くらいの時間で、ずいぶん体力が削られた気がする。
このまま壁にもたれていると寝てしまいそうで、慌てて立ち上がった。
くらっ、と目の前が暗くなって、思わずさっきの壁に手をつく。
涼しいと思っていたけど、ぽたぽたと滴るのは自身の汗で。
体温感覚すらおかしくなってる。
またまたため息をつきながら、無駄な捜索が入る前に広場へ戻った。
---
なんとか1時間目を耐え抜いて、2時間目は救いの手、座学。
…まぁ、座ったところで痛みが治るわけでもなかった。
左手で口を押さえながら、右手で腹を摩る。
ここまで何も言われていないのは、奇跡とも思えた。
緑谷が心配そうに見てきてたけど、それ以外には何もされてない気がする。
黒板は、俺が書き写した時よりずいぶん進んでいる。
慌てて右手を離すけど、すぐに痛みが襲ってきて逆戻り。
それを繰り返して、いつのまにかチャイムが鳴り響いていた。
やべぇ、なんも書けてねぇ…
ため息をつきながら、緑谷にまたもや助けてもらった。
その後の演習、座学、そして演習もなんとかやり遂げて、やっと学校が終わった。
階段を降りる気にもなれなくて、共有スペースのソファに座り込んでいた時。
芦戸が駆け寄ってきて、こそっと耳打ち。
「轟、ズボンに血ついてるよ?着替えに行こ」
「ぇ、」
芦戸の後ろにいた麗日と耳郎が、俺の背中に周る。
見事にズボンは隠されて、困惑する男子達の目を誤魔化せた。
女子ってすげぇ…
「よし、二人とももういいよ!」
エレベーターに乗り込んだ、というか乗らされてから、芦戸がいった。
「ふぅ、見られんくてよかった…」
「ほんと。轟新しい服ある?ジャージでもいいよ」
「ぁ、あぁ……」
そう力なく呟くことしかできなくて、申し訳なさが募る。
今思えば、なんで血ついてること気づいてから驚かなかったんだ、?
まさか、ばれて…いやまさか。そんなわけ、
いやいや、ありえねぇ。
そう自分に言い聞かせて、連れられるがまま自分の部屋へ。
着替えて、ついでにトイレでナプキンを変えた。
なぜか着替えたら出てこいって言われている。なんだ…このまま寝たい。
ふらふらしながらドアを開けると、スタンバイ済みの3人。
「よしっ、じゃあお姫様達が攫いますねーっ☆」
「は、」
「大人しく着いてきなってぇ〜」
「はぁ…」
そのまま引っ張られて着いたのは…芦戸の部屋だった。は?
「あっ、轟さん!いらしたんですね!」
「ってことはー…"誘拐"成功っ?」
「そうそう!連れ出したぜっ☆」
「やったわねっ、ケロ」
どんどん進んでいく会話に、流石に理解が追いつかない。
誘拐、?どういう…
「…なんだこれ、なんでおれ…」
「えー今から、ガールズトーク!しまーす!!」
「俺男、」
そんな主張はかき消されて、かと思えばみんなの顔が真剣になる。
「轟ってさ…もしかして、」
---
---
【芦戸ちゃんside、怒涛のお話たいむ☆】
轟が普通の男子と違うって気づいたのは、結構最近だった。
いつもは強くて冷静な轟がプールを見学していたり、
みんなから見えにくいところで薬を飲んでたり。
授業中にはお腹を摩ってて、経験者の私達はすぐに勘づいた。
それに気づいてからは、みんなでどうにかして轟と話をしようと試みた。
でも、常にみんなに囲まれてるイケメン人気者には、話しかけにくく…そして
呼び出しにくい。
むりだなぁ…
そんな調子だった私たちにとって、今回のプチ事件はありがたかった。
「まぁ、隠したい気持ちももちろんわかる」
「特に轟みたいな口数少ないやつは」
そう口々にいった瞬間、轟の顔色がすっと変わった。
「ぇ………っ、なん、で」
「轟くん、授業中めっちゃお腹摩ってたやろ?」
「えぇ、なんだか顔色も優れないようでしたし…」
「それに、見えなさそうなとこで薬飲んでたし」
「……はぁぁ、、」
盛大なため息と共に、轟の手がお腹へ当てられる。
「…いつから、」
「えぇっ、でも、結構最近だよね?」
「最初に気づいたんって…」
「芦戸さん?」
「いや、響香ちゃんじゃなかったかしら」
「え、そうだっけ?うちあんま覚えてない…」
うん、最初は耳郎だった気がする。
耳郎が「なんか、轟の様子が…」って、みんなに知らせてくれた。
で、うちらも言われてみれば…ってなったような、気がする。
「とりあえず、結構最近!先月の時かな?」
「…そうか、」
「というか、お腹痛い?布団いる?」
「ぁ、いや…」
「ほら、遠慮しないで」
「…じゃあ、もらう」
渋々といった様子で受け取った轟は、お腹を全包囲するみたいな形で布団に
包まった。
ついでに、と枕を抱かせて、ヤオモモが造った湯たんぽ(お湯入り)も持たせて、
完全にお腹あっためモードに。
「ちょっとまって、お菓子とか持ってくる!」
「それでは私はルイボスティーをお淹れいたしますわ」
「やったー!ヤオモモのやつ美味しいんよねぇ!」
みんなの声を遠くで聞きながら、自作のお菓子BOXを手に取る。
選ぶどころかそのまま持っていって…はい、女子会部屋完成!
「よーし、じゃあさっそくお話しはじめよぉー!!」
「轟くんも、ね!」
「…おぉ、」
「まずさ、轟いっつもしんどそうだよね、薬とかは?」
「いつも飲んでんだけど…」
効かねぇ、と続けた轟に、みんなの視線がヤオモモに向く。
「えぇ、効かないところを教えてくだされば、造れるかもしれませんわ」
「「「「「おぉー!!」」」」」
さっすがヤオモモ、頼りになるー!!
「…いやでも、効かねぇけど、耐えれるから…だいじょうぶ、」
…かと思えば、そんなことを言い出した轟。さっきとは逆に、轟に視線がいく。
「いや、知っとる?人間って不調を耐えるのが1番の毒なんよ!?」
麗日の言葉にみんなが頷く。
「そうだよっ、それに薬が全てじゃないし!」
「保健室行くとか、」
「ちょっと治まる方法とかも結構あるよ!」
「そう、なのか」
それすらも知らなかったようで、私は思わずため息をついた。
「というか、しんどい時は私たちに言って!?」
「そうそう、うちらにしかわからんし!」
「…わかった、言うようにする」
「ほんとにぃ?」
「あぁ…たぶん、」
「多分かーい!!!」
そう思わずつっこむと、周りから笑いが溢れた。
それに乗って、轟も笑顔に。
みんなの笑いがすっ、と止んで、轟の方に視線が。
当の本人は「ぇ、何…」とわかっていない様子。
君、自分の笑顔にどれだけ破壊力があるのか知らないのか…
いや、知ってるはずないか。ただでさえ鈍感クールイケメンなのだ。
知っているはずがない。
「…まぁとにかく、」
「しんどい時くらいは甘えてねってこと!」
「せーりしんどいよねぇ…」
「今日の演習とか大丈夫だったの?お腹いたいよね〜…」
「…うん、」
「轟は何が1番しんどい?やっぱお腹?」
「ん〜…腹もいてぇけど、1番は…くらくらするやつ、?」
「うわぁわかるーっ!!貧血!歩いてる時とか急に目の前真っ暗になる…」
「あれきついよねー…頭も痛くなるし、」
「わかる、」
「ふは、轟くんなんか素直やね〜!」
きっと轟も、今までずっと一人で悩んできた。
こうやって軽く話せるのが、新鮮でいいのだろう。
なんだか少し嬉しくなった時、不意に轟が息を詰まらせた。
「あら、轟さん?」
「っ、ごめ…きもちわる、」
「えっまじ!?吐く、?」
「んぅ、いや…っ、がまん、す…」
「それはだめーっ!!!」
「さっきのこと忘れたん!?」
「これ、袋よ」
「吐いちゃっていいよ〜…」
「っ…__ごく、__」
「飲み込むなぁーっ!!!!」
「だめですわ、」
女子の猛アタックが効いたのか、渋々袋に顔を沈めた轟。
「っ…ぉえ"、」
「そーそー、上手」
「うち、水取ってくる!冷蔵庫にある?」
「あ、うん!」
「っ、はぁ、っぇ…」
「しんどいね、ちゃんと息してね!?」
「そそ、息しなきゃだめだよぉ〜」
しばらくして袋から顔を上げた轟。顔色はもちろん最悪だ。
「はぁっ、ふー…っ、けほ、ごめ、きたねーとこ…」
「大丈夫だって!こーゆーときこそ頼ってね!!」
「うん!一人で吐くとか許さないから!」
「ん…きをつける、」
小さく頷いたと同時に、横からは水、そして袋は取り上げた。
「どうする?今日は帰ってねる?」
「ぇ…」
あからさまにテンションが下がる。そんなに楽しかったか…
「いや、轟がいけるなら続けたいよそりゃ!!」
「けど、無理矢理いさせるのもなんだし!?」
慌ててみんなでそう付け足すと、
「いける…から、もうちょっと…話したい、」
と呟いた轟。
うぅっ、いつからこんなに可愛くなってしまったんだこのイケメンは…
「そっか、じゃあうがいだけしてお話ししよ!」
「それがいいですわね、私が一緒に行きましょうか」
「あっ、じゃあヤオモモお願い!」
「う…すまねぇ、」
---
---
俺が戻ってから、たくさん話した。
楽しくて、新鮮で、気遣ってくれるみんなが優しくて、居心地がよかった。
気づけば時計は12時を指していて、やばっ!という葉隠の声でみんなが我に
帰る。
「そろそろ…流石に帰るか、」
「うちらはともかく、轟くんは体調悪いんやし…」
「…そうだな、」
流石の俺もそのくらいはわかっていて、名残惜しくも今日の女子会は終わりを
告げた。
「みんな…誘ってくれてありがとな、で、その…」
「ん?」
「どしたぁ?」
「また…誘ってくれ、」
少し小っ恥ずかしい気もするけど、そう呟いた。
「おぉぉ!!!」
「いいよいいよ!またいっぱいしゃべろーね!!」
「…!あぁ、」
優しい…正直、俺と話しても楽しくはないと思うんだが。
でも、そんな俺を快く受け入れてくれるのが、素直に嬉しかった。
「あ、最後に…今日した約束!覚えてる?」
「…うん、?」
「覚えてないじゃぁぁぁん!!!!」
「しんどかったらうちらに言うこと!」
「あぁ…わぁってる、」
眠いせいなのか、はたまた素なのか…どちらでもいいけど、舌が回らない。
「んーまぁ、ほんとにわかってんのか…?これは。」
「まぁいいや、これ以上いっても同じだしね」
「じゃあ轟ちょっと待ってて!」
「ん…??」
怪訝そうな目で見つめられたかと思えば、すぐに向き直って、今度は…
何故かじゃんけんを始めたみんな。
「最初はぐー!」
「じゃんけん…ぽんっ!!!」
「やったぁ!うち勝ったぁぁ!!」
「あたしもー!!」
「うちも…」
どうやら勝ったのは、最初の3人。
これは俺を部屋まで送るじゃんけんだったらしい。
「まぁ、誘拐してきたこの3人なら安心だね」
「えぇ、轟さんもこの3人の方が安心でしょう」
「…あぁ、、?」
正直、エレベーター乗って一個上がるだけだから、一人でも…
…なんて言ったら、怒られそうだな。やめておこう。
「じゃー、しゅっぱーつ!!!」
「「おー!!」」
「おー…」
そのまま部屋を出て、エレベーターに連れられる。
3人が話してる中、今日の女子会を思い出す。
そういえば、話してる時…生理痛とか忘れてた。
というか、あまり痛くなかった。
………なんで?
まぁ、この中の全員が同じ体験をしてるって思えば、多少気は楽になった
だろう。
女子ってすごいよなぁ。あの痛みに毎月耐えてるなんて…
そりゃ女子も生理がくる。というか、女子"に"くる。
だけど、少なくとも俺は女子が腹を摩ったりしているところなんて見たことない。
…すげぇなぁ、
そんな感想しか出てこなかった。
「…轟!大丈夫、?」
…しかめっ面でもしていたのか、芦戸が顔を覗き込んでくる。
「…っ、?あぁ、だいじょうぶ…」
「もしかして、布団離したからお腹痛くなった…?」
「いや…んなことねぇ、ちょっと考え事…」
「あ、そうなん?それならええんやけど…」
すごい心配してくれる、優しい…
なんだか、今日は女子達の優しさに癒されてばっかりだ。
ぴこーん、とエレベーターの扉が開いて、3人にまた連れられる。
そこからは一瞬で…というか、エレベーターから部屋が近くて、3人に軽く手を振ってから、俺は自室へ戻った。
しん…と静まり返っている部屋。
そりゃあ俺一人しかいないから当たり前だけど、さっきのわちゃわちゃした
女子部屋を思い出すと、なんだか無性に寂しくなる。
「……っ、」
だめだ、今日はもう寝よう。
忘れた頃にやってくる痛み。その痛みで薬を思い出して、ぼーっとする頭で
薬を一錠口に入れた。
ごく、と喉に通る冷たい水が気持ちよくて、そういえば俺吐いたんだったな…と
またまた思い出す。
次の女子会も…少し、楽しみであった。
というか、きっと…少しじゃない。
今日のは普通に、楽しかった。
ふふ、と笑みを溢したところで、俺の意識は夢の中へ落ちた。
---
あれから一ヶ月。
先月はあんなに暑かったのに、今は有り得ないくらいに寒い。
最近の日本って、気温がおかしい…
そんなことを思いつつ、2日目用の薬達を口に入れる。
相変わらず効く様子はないけど、次の女子会で八百万に言ってみようかなと思っている。
この間造ってくれるって言ってたのに、言うの忘れてたな…と思い出したのだった。
学校のシャツの上に、もう一枚服を着る。どうせブレザーで隠れるんだし…
授業中に死にそうになるよりマシだ。
学校のバッグに、忘れていた教科書達を入れる。
机に置いていた筆箱も入れて、俺は部屋を出た。
…ら、目の前にはいつもの3人。
「とどろきっ!おはよ!」
「…あぁ、おはよ…なんで、」
「轟今日2日目じゃないの?」
「………なんで知ってんだ、」
なんでわかるんだ…怖い。
女子って、もしかしてエスパーだったりするのか…?
「ふふ、当ったりー!」
「一昨日は何もなかったのに、昨日めっちゃしんどそうだったでしょ?」
「轟くん、多分症状めっちゃ重いから、わかりやすいんよね…」
「はぁ……そうなのか、」
もうちょっと抑えた方がいいか…?
そう呟くと、すぐに3人が首を振る。
「いやっ!それが1番だめ、」
「辛かったら摩ってもいいんだけど、みんながちらちら見てるから…」
「緑谷達もちょっと心配してるみたい」
「…まじか、」
緑谷は1番心配性だから、そんな俺の素振りを見逃さない。
そこまで考えねぇとな…
エレベーターに乗って、いざドアを閉める瞬間。
この間と同じ光景。今日は上鳴しかいないけど、走ってくるのが見えた。
「……__はぁ、__」
小さくため息をついてしまった。別に上鳴が嫌いなわけじゃなくて…
内心謝っていると、いつのまにかドアは閉まっている。
けど、常に何か話してる上鳴の声は聞こえなくて…あれ、
「轟っ、大丈夫だよ、お腹摩ってて」
「あいつうるさいよねー、特に生理中は。」
「んー、わからなくもないけど…うちより重い轟くんはしんどいかぁ、」
あぁ…救世主すぎる。
いつの日かの瀬呂と同じ感想。
3人の言葉に甘えて、お腹を摩る。今すぐ蹲りたいけど、流石にそれは勘弁…
ドアが開いて、共有スペースの全員の視線が俺に向く。
「えぇぇぇ!?轟くん!?どうしたのその女子達…!」
「あっ、男子達ごめんねー?昨日の夜から"男子達の人気者轟"じゃなくて
"女子達のお姫様轟"になっちゃって☆」
「轟くんはうちらが攫っちゃったからね…」
「だから、これからも誘拐するから文句なしね!みんなの轟だから!」
「…俺、みんなのものなのか、」
いつからみんなのものになったかはわからないが、正直今は男子より静かな
女子組の方が居心地がよかった。
そこも見越しての判断なら、流石にすごすぎる。
俺は素直に引っ張られて、辿り着いたのは教室だった。
「誰もいなーい!!!」
「当たり前じゃん、まだ七時半だよ?」
「まぁ、誰もいない方がいいしねー!」
「…っ、」
やっと座れたことにありがたみを感じつつ、左腕に顔を埋めて、右手で腹を
摩る。
なんか…いつもより、薬の効きが悪い気が…いや、効いてないのはいつも通りか。
なら…悪化してねぇか、
「轟くん、?大丈夫?」
「轟〜?甘える約束は?」
「そーだよ、素直に!なんでも言っていいよ」
隣から聞こえる声達に、今は羞恥心よりも…甘えたかった。
「…っ、い"っ…てぇ…」
「よくできましたー!!じゃーんっカイロ」
「お腹摩ってもいい?」
「じゃあうち腰摩ろっか」
もう頷くことしか出来なくて、申し訳なさを感じつつ摩ってもらった。
みんなめちゃくちゃ心配してくれて、経験者ってすごいな…と改めて思う。
なんか昨日から「すごい」しか言ってない気がする…
けど、それしか感想が出てこないんだから仕方ない。
「轟くん、痛み耐えたいんはわかるけど、ちゃんと息しーよ」
「そうそう、息するのが大前提だからね!」
言われた通りに息をするけど、何故かうまく吸えない。
促されるまま深呼吸すると吸えるようになって、また女子ってすごいなと思う。
しばらくこうしていると、気のせいではなく腹の痛みが少し治まった。
「…わり、おさまった…」
「そぉ?よかったぁ!」
「他しんどいとこない?」
「あぁ…だいじょうぶ、」
「ほんまに〜…?」
「嘘だけはだめ、だからね?((圧」
芦戸に圧をかけられて、渋々呟く。
「………ちょっと、きもちわりぃ…」
「え、吐く?ヤオモモー!!」
「いや…さすがに、はきは…しねぇ、大丈夫」
学校で吐くとか、流石の俺でもむり…
想像するだけでも寒気がして、思わずため息を吐いた。
「それならいいんだけど…いやよくない!!」
「水筒ある?お茶飲むとマシになるよ!」
「そうなのか…」
言われた通りにお茶を口に含む。
温かいのを入れてきたから、冷えた体に染み渡る。
「…ふぁ、__あったかぁ…__」
「うっ…」
「かわいいいいいいい…」
「隠れた姫やね…」
「…?」
3人は顔を隠してて、俺には意味がわからなかった。
やっと一息ついたところで、遠くから忙しない足音が聞こえてきた。
「みんな来た…相変わらずうるさ、」
「轟くんは席でゆっくりしとき〜」
「あぁ、」
「おっはよー!!って、お前ら早くね!?てかさっきエレベーターの扉閉めただろ!
ひでぇよー!!!」
1番最初に入ってきたのは上鳴。相変わらずすげぇ元気だ…
「あーもう上鳴、うるさいって…轟ごめんねー、」
と思ったら、後ろから出てきた瀬呂に連れて行かれた。
こっちは相変わらず救世主だな…
ふぅ、と息を吐きつつ、腹に右手を添える。
今日は…演習は2時間目。それ以外は座学で、少し安心した。
「あっ、轟くん!さっき女子達に連れて行かれてたけど、なんで…」
「で、デクくんっっ!!!ちょっとこっちきて!!」
なんて答えようか迷っていると、麗日の声が聞こえる。
緑谷はそっちに行ってくれて、後でお礼言わねぇとな…と思った。
俺の秘密を知ってから、女子達はなにかと俺のことを助けてくれている。
今みたいに、何かしら聞いてくるやつを離してくれたり、
さっきみたいに、腹を摩ってくれたり。
ほんと、助けられっぱなしだなぁ…
---
座学、演習が終わって、休み時間。
そういえば朝、夜用をつけてくるのを忘れてしまった。
ということで、変えに行こうと思ったのだが…ここで大事件。
ポーチ忘れた…
ナプキンと薬が入ってるやつ。あれがねぇと…
いつもの俺なら、往復十分で寮まで行ける。
けど、今の俺は…走ることすらできない。
つまり、こう言う時こそ…
「ぁ、麗日……ちょっと、」
「え?どうしたん〜っ!」
麗日を廊下の先まで連れ出して呟く。
「わり…ナプキンと、あと薬…ねぇか、」
「忘れたん?そりゃ持っとるけど…取ってくるね!」
麗日が慌てて教室に走って行って、俺はその場に蹲る。
廊下を通る人たちの視線はわからないけど、今の俺はそれどころじゃない。
くすり…はやくのまねぇと、
効くわけではないし、そんなのわかってる。
でも、気休め程度にはなるのだ。
「っ、はぁっ…ぅ"、」
いたい、いたいいたい…
目の前が真っ暗で、くらくらする。
あ、っやべ…倒れる、
受け身を取ろうとした時、誰かの手が倒れるのを止めてくれた。
「うぉっ、あっぶな…」
…どうやら、麗日が俺のことを話したらしい。
手の主は耳郎だったらしく、後ろには芦戸もいる。お馴染みのいつもの3人だ。
「大丈夫、?これ、薬とナプキン入っとるから!好きに使って!」
「ん"…わり、」
「謝らんでええから!こう言う時はお互い様!」
「それに、麗日に言えただけですごいからねー…」
「そうそう!一人で倒れでもしたら…うわぁぁぁ」
そう言って励ましてくれる3人に、「ありがとな、」と辛うじて呟く。
こんな時に助けてもらえたのって、始めてかもしれない。
なんてったって、誰にも言ってなかったから。当たり前…
「ちょ、といれ…いってくる、」
「ん、いってらっしゃーい!」
「気をつけてねー!」
「きをつける…、?って、何を…」
「色々!」
---
助けてもらったおかげで、それからの座学も乗り越えられた。
今から帰るところ…だったけど、今日は耳郎が話しかけてくる。
「ねね、今日の女子会…くる?」
「……行っても、いいのか」
「え、いいよ全然!なんなら来て欲しいし!」
「なら…行きたい、」
そう返事をして、俺はこの前と同様に連れて行かれた。
「おーっ!今日の主役登場!?」
「うん、連れてこれたよー!」
「…すまねぇ、女子達の邪魔して…あとこれ、今日のお礼」
そう言いながら、俺は持ってきた紙袋を机に置く。
「わぁーっ、これは…」
「肉球まんじゅうだぁぁぁああ!!!!!!!!」
「えぇっ美味しそう…」
「なら私は、これに合う紅茶をお淹れいたしますわね」
「やったぁー!!」
「じゃあ、轟はいつもの布団と枕ね」
「おぉ…ありがとう、」
渡された布団を腹にかけて、枕を抱きしめる。
「どう?お腹いたい?」
「…いてぇ、」
「素直ね」
「うそつく必要も、ねぇし…」
そう、いちいち嘘をついたとしても、芦戸や耳郎に見抜かれる。
だから結局は意味がないのだ。
「ちょっと暖房の温度上げる?」
「そうね、ちょっと上げるわ」
ぴっ、ぴっ、という機械音が耳に入って、暖かい風が頬に当たる。
「これで大丈夫かな!」
「よーし、女子会はじめまーす!!」
「「「「いぇーーい!!!」」」」
この光景…先月ぶりだ、
でも、一つ気になるのが…
「あ、あの…」
「おぉっ、主役から何が!?」
「…なんで誘われるのって、いっつも2日目だけなの」
ずっと気になっていた、今日誘われた時から。
「うーん、それは…」
「轟がなんか可愛いから。」
「…えぇ、」
こちらは可愛さなんて微塵も気にしていないのに。
女子の考えてることって、やっぱりわからない…
「ほんとは、みんなで轟を助けたいの!」
「しんどそうだし、一人で部屋で苦しまれても…ね?」
「それに、こないだの女子会結構楽しんでくれたみたいじゃん?」
「それは…そうだけど、」
「生理中って、なんか寂しくない?」
「それも…わかる、」
「お腹痛いしね…」
「…わかる、」
「気持ち悪いし、でも吐きたくないし」
「わかる、…って、それこないだ吐いたやつに言うことか?」
「ふはっ、ごめんって〜!」
…あぁ、やっぱ楽しい、
なんだかんだ俺は、これを楽しみに過ごしていたのかもしれない。
「そういえばさ、轟って中身もイケメンだよね。」
「えっ、それな?こないだ掃除代わってくれた」
「私も!あと薬くれた!」
「…いや、あれは」
「やっぱ同じ経験しとるからかな?よりイケメンに見えるんよね…」
「まじでわかる。」
「私も、この間ルイボスティーを淹れてもらいましたわ」
「えぇっすご、なんで淹れれんの??」
「ちょ、あの」
「うち、こないだお腹摩ってるだけで「大丈夫か、」って言ってくれたっっ」
「え、優し。他のやつとは大違い」
「ちょっ、…やめろ、」
思わず止めに入る。
俺のちょっとのことがそんな風に思われてるのも知らなかったし、
あまり褒められるのも慣れてないから、普通に恥ずかしかった。
「…え、顔赤くない?」
「ぐっ…ぅぅぅ、かわいいよぉぉ…(´;ω;`)」
「え、っおい芦戸、なんで泣いてんだ…」
「女の子すぎる。」
「俺は男だぞ」
もう意味がわからなくて、困惑することしかできない。
なんで泣いてんだ、?俺男だしっ、
「…ふぅ、そろそろ本題入る〜…?」
「あ、入ろっか」
「ほんだい…?」
なんだ、話すのが本題じゃないのか。
「じゃあ…本題っ!カードゲーム大会〜!!」
「いぇーい!」
「最下位の人は、自分の秘密を大暴露しまーす!」
「は…」
秘密…??もう暴露したんだが…おかしいなぁ、
「よーしとにかく始めますっ」
「じゃーまず神経衰弱!」
芦戸の声と同時に、カードが机に広げられる。
神経衰弱…あんまやったことねぇんだよな…
負けたらどうしよう、と思いながら、じゃんけんが始まる。
「じゃんけん…ぽん!!」
「あ、轟一人勝ち…すご」
「え…俺最初、」
「そだねー!」
やってしまった、1番運が悪い場所だ。
一応負けた時の秘密を…なんだ秘密って、俺にこれ以上秘密なんて…
なんて考えていると、いつのまにか順番は決まったらしい。
みんなの座る順が変わっていた。
「それじゃ轟!どうぞ」
「あぁ…」
とりあえず一枚めくって、出たのはハートの7。
まぁ、まだ最初だし…心当たりなんてない。適当に…
そうもう一枚めくると、出たのは…ハートの7!?
「は…」
「「「えぇぇぇ!?!?」」」
「轟さん、すごいですわ…!」
「えぇ、これもなにかの才能かしら、ケロッ」
え、そんな才能いらねぇんだけど…
まぁ偶然引き当ててもう一回。次は流石に…
二枚めくると、…なんでだよ、
またまた奇跡のスペード3が二枚。
流石の女子も驚いているみたいで、驚いてんのはこっちだよ…!と脳内で呟く。
流石に次は外れて、逆に安心した。
「すごいね轟…!」
「あぁ…怖いけどな、」
【主:ゲームタイムずっとやってたら拉致があかねぇ!!!!てことで飛ばし】
「じゃ、また明日ねー!!」
「ばいばーい!」
「あぁ…じゃあな」
ゲームが終わって、俺は部屋に戻ってきた。
相変わらず静かな和室に、思わずため息が漏れる。
このまま寝ようと、布団に膝をつく。
あぁ、くすり…
ゲームの途中、申し訳ないけど八百万に言ってみた。
そしたらすぐ造ってくれて、もらった錠剤。
一日三錠まで、腹の痛みに効くらしい。
それを口に入れて流し込み、そのまま布団に寝転んだ。
「はぁぁ…」
色々あったな、としみじみ思う。
本当に、女子達には感謝しかない。
助け合えるってだけで、こんなに身も心も楽になるとは思わなかった。
日頃から感謝、もうちょっと伝えなきゃだな…
手紙でも書くか、と、そんな考えが浮かぶ。
明日、帰ってきたら書こう…と決めて、俺は眠りについた。
その夜は、ありえないくらいに寝心地がよかった。
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次の日。
3日目でも体調は変わらず、いつもの薬ともらった薬を飲んでから学校へ。
…と思ったら、何故か女子達。最近はこの光景見慣れたけど…
「なんでいるんだ」
「いや?ただ一緒に行きたかったの!」
「…そうか、」
俺と行っても楽しくないと思うが…まぁ、話すのも普通に楽しいしいいか、
そう結論づけて、いつも通り学校へ向かった。
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やばい。
今は休み時間なのだが、いつも生理中使っている遠くのトイレから帰ろうとして、
力尽きてしまった。
というか、そもそも力どころか…痛すぎる。
なんだ、これっ…
「っ、い"っ…」
息も思う存分できなくて、目の前は涙でぼやけ始める。
壁だけを頼りに蹲って、側から見たら情けなさすぎるだろう。
やべ、普通に死にそう…
なんか悟ったところで、後ろから聞き慣れた声が聞こえた。
「ちょ、轟っ!?」
思わずびくっ、と反応してしまう。
でも、芦戸ならまだ…安心、かも、?
「どしたのっ、痛い…?」
「っ、だいじょうぶ…っ」
「大丈夫じゃないでしょ、顔色めっちゃ悪いし…」
そう言いながら、背中を摩ってくれる。
「保健室、!いこ?ね!」
「ん"…だい、じょうぶっ…」
「それがだめなのっ!轟はいっつも我慢ばっか…行くから!!」
「っ、でも…っ、せんせ、いってない…から、」
「それもあたしがうまく言っとく!!」
…あぁ、めっちゃ心強い。すげぇな女子って。
相澤先生にはもちろん、リカバリーガールにも言っていない。
迷惑もかけたくないし…
「っ…あしど、」
「ん?なにっ」
「もどっ、てて…いいから、ひとりで…大丈夫、」
荒い息をなんとか治めて、そう吐き出す。
「はぁ…もういいや、はーい連れて行きますねー?」
そういって芦戸は…俺を軽々と持ち上げた。
「…は、」
「かっる!!もぉ、いっつもそばばっか食べてるからでしょー!!」
「そばのことはがにすんな…っ」
「ははっ、ごめんって〜」
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保健室。独特の薬の匂いが漂う部屋で、俺はベッドに寝かされている。
「……いてぇ、」
二人の声は聞こえなくて、もう今すぐにでも寝てしまいたかった。
でも、これ以上迷惑をかける訳には…
「あっ、轟〜?寝ててね??」
芦戸が戻ってきて、そう圧をかけてくる。
「……うん、」
もう、そう答えるしかなかった。
そのまま目を瞑れば、すぐに眠りに落ちてしまった。
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「…ぅ、」
重い瞼を持ち上げると、目に写るのは真っ白な天井。
そして隣では…
「あっ、轟くん起きたぁ!」
「よかったぁー、芦戸に話聞いた時心臓止まるかと思った…」
女子組が全員大集合していた。
「ぇ"…なんで、」
「もう学校終わったよ〜?しんどくなかったら帰ろ!」
やば…俺、そんなに寝てたのか。
そこまで色んな人に世話を焼いてもらっていたのか。
本当に情けない…
「りかばりー、がーるは」
「あ、さっき出張行った!」
「……」
お礼をしたかったんだが、それなら仕方ない…また今度にしよう。
「…みんな、心配かけてごめん」
「ほんとだよ〜!見つけた時どれだけ心配したか…」
「あと芦戸…ありがとな、」
「…(なんだこいつイケメンだっっ)あぁーうん…」
芦戸の返事を聞いたところで、麗日にもらったバッグをもって立ち上がった。
…まぁ、ずっと寝ていてすぐ立てるわけもない。
ふらついたところを、またまた芦戸に助けられてしまった。
「…っ、わり、」
「もー、いいからっ!部屋まで送るよ〜」
今日は全員で送ってくれるらしく、みんなでエレベーターに乗った。
「じゃ、ちゃんとあったかくしなよー!」
最後の最後まで優しいんだな、
そんな気持ちを込めて、俺は過去一の笑顔(多分できてる)で言った。
「おう、ありがとな」
女子達が、そんな笑顔をみてしばらく狼狽えていたことを、俺は知らない。
15769文字。
一つ言わせて欲しい
やばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!!!!!!!!!!!!
褒めてくれ
これで消えた8000文字の仇は打ったぜ!!!!!