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第一部2
第一部の第2話完成しました!
洗礼式で、突然連れ去られてしまったオルタンス。
一体何があるのでしょうか・・・?
「お待たせいたしました。こちらでございます。」
「え・・・?」
洗礼式で、神官に連れさられること5分。着いたのは、とても大きな建物だった。
驚いている私を抱き抱えたまま、神官はつかつかと建物に入っていく。
「ユールにございます。」
そう神官が名乗りを告げると、スッと内扉が開いた。
建物の中も豪華なものばかりで、ここの主人が、とてもお金持ちなことは理解した。
目を見張っているうちに、一室の扉の前に着き、今度は何も言わなくても開いた。
「どうぞお入り。」
女の人の声がした。
部屋に入ると、神官がすっと母がよくやる動きをしたので、私も慌ててそれをやる。
「失礼いたします・・・お久しぶりです、ユゲット女伯爵殿下。本日は|かのもの《・・・・》を連れてまいりました。」
「春の夫婦神の光輝くよき日、よくまいりました。そのものにも挨拶させて頂戴。」
早く挨拶しろと、神官に小声で言われる。
私は、神官と貴族であろう女性の挨拶を参考に、それっぽいことを喋る。これでどうだろう。
「お初にお目にかかります、ユゲット様。オルタンスと申します。春の夫婦神の光輝くよき日、新たな出会いがあることに感謝します。」
ちなみに、ここの世界の庶民には苗字がない。なので、名前を名乗るしかないのだ。
すると女性が驚いたような表情をして、
「あら・・・ずいぶんしっかりしてるのね・・・初めまして。私は、ユゲット・アンジェリーヌです。これからよろしくお願いしますね。」
と挨拶を返してくれた。
顔をよく見るとかなり美しい人で、まだかなり若そうにも見えた。
ふと、隣の神官を見ると、真剣な表情をして、
「では、ユゲット様。お願いしてもよろしいでしょうか?」
と何かを頼んでいた。
「はい。準備させますから、ユールお茶でも飲んでいてください。」
「かしこまりました。」
「ではオルタンス。こちらへ来てください。」
「・・・?かしこまりました。」
私は何が起こるのか不思議に思いながら、ユゲット様の後ろをついて行った・・・
また別の一室に案内された私は、
「ここで待っていて頂戴。」
と言われ待つこと数分。
「待たせてしまってごめんなさいね。」
とユゲット様とユゲット様の侍女が戻ってきた。侍女は、洗礼式で見たものより何倍もある水晶玉と金属板を持っていた。
「では、こちらに触れていただけるかしら?」
「はい。」
どうやら私の結果を再確認するようだ。
私はさっきと同じように水晶に触れた。
またあの強い光が当たりを包み、結果が出た。
「まぁ!・・・なるほど・・・全部に適性があって、その中でも聖魔法が・・・」
ユゲット様は一瞬驚いたあと、何かぶつぶつ言い始める。ちなみに、本人である私には見えなかった。
「はい、よくわかりました。オルタンス。大事な話があるから、こちらに座ってちょうだい?」
ユゲット様がいつになく真剣な表情をする。
「・・・かしこまりました。」
私は背中に冷や汗をかくのを感じながらユゲット様の話を聞いた・・・
「オルタンス。あなたは、全魔法と全スキルに適性があることまでは知っているわよね?」
「はい。」
「神父が連れてこさせた理由はそれだわ。一応決まりみたいなものなの。」
「なるほど。」
どうやら理由はそれらしい。強い子をここに連れてくるのは決まりのようだ。
「それで、あなたが1番強かったのが聖魔法なのよ・・・この国で最上級の・・・」
「!」
どうやら私は、かなり強いらしい。
-チートってやばい・・・
「あの水晶はね、より細かいところまでわかるの。それであなた・・・転生者よね?」
「!・・・はい。そうです。」
どうやらそこまでバレてしまったらしい。
「まぁこの国ではそこまで珍しいことじゃないですけどね・・・ここまで強いのは初めてですけど・・・」
強いのは否めないが、他にも転生者がいることに安堵した。
「それで、ここからが大事なんだけど・・・あなた、私の|養女《むすめ》にならない?」
「はい!?」
思わず声を荒げてしまった。庶民である私が、上級貴族の|養女《むすめ》だなんて・・・
「ちゃんと理由はあるのよ。まず、魔法を使う機会の少ない庶民では、あなたの体が壊れてしまうかもしれない。もう一つは、あなた経営のスキルが特に強いのよ。私、息子がいるんだけどね、あの子経営なんてからっきしだから・・・あなたに任せたいなって・・・」
「私なんかに任せて良いんですか?」
いくらスキルがあるといっても、一応他人だ。なんでなのだろう・・・
「もちろん。だって、お店を経営したいって、あなたの前世の夢じゃないの?」
「!」
そう。前世の私の夢は、お店を経営することだった。まさかそこまで見られてたとは・・・
「・・・少々考える時間をください。」
いくら夢が叶うといっても、大好きな家族と別れる決断ができない。
それに、相談しなきゃいけない。
「えぇ。また来週呼びますから、その時に答えを聞かせてちょうだい。」
「かしこまりました。では、失礼させていただきます。」
「えぇ。またよろしくね。」
こうして私は、新たな世界に片足を突っ込むことになった・・・
「「オルタンス!」」
建物から出ると、アイリスとエアニーがいた。
「2人とも・・・私を探しにきてくれたの?」
「あったり前だろ!友達の一大事なんだから!」
「それで、何があったの?」
2人が心配そうに私を見つめる。本当に頼もしい友達だ。
「上級貴族のユゲット様に養女になることを勧められた・・・私、魔力が多いから、庶民のままだと体壊しちゃうんだって・・・」
私は2人にざっくり説明した。
「はあ!?それほんとかよ!?」
「どうするのオルタンス・・・貴族になっちゃうの・・・?」
案の定2人は驚いていた。
「まだ決めてない。やっぱお母さんと相談しないと・・・」
「まぁ、そうだよね。」
「あっ!いけない。おばさん、すごいお前のこと心配してたぜ。早く帰ってあげたほうがいいかも。」
「そうだね。2人ともありがとう。帰ろっか。」
「ああ!帰ろうぜ!」
「ふふ。そうね。」
そういって私たちは、夕暮れの道を歩いた・・・
「ただいま。」
「オルタンス!・・・よかった・・・」
「お姉ちゃん帰ってきた!」
家に着くと、母とセシルが待っていてくれた。
私は2人にギュッと抱きつく。
「ごめんね。遅くなっちゃって。」
「いいのよ・・・それにしても何があったの?」
「実は・・・」
私は今日あった一切の事情を話す。
2人は驚いたような悲しんだような表情をして、
「そんなことがあったの・・・」
「お姉ちゃん・・・」
と言葉も出ないという感じだった。
「それで、1週間後答えを言いにいかなきゃいけないんだけど・・・どうすればいいんだろう・・・」
私は悩んでいることも伝えた。すると、
「オルタンス。ユゲット様のところに行きなさい。」
「え?お母さん!?」
「そうだよお姉ちゃん。そのほうがお姉ちゃんのためになるよ。」
「セシルまで・・・」
なんと2人から即答をくらった。なんでなんでなんだろう・・・
「そりゃ一緒にこのまま暮らしたいけど・・・私は覚悟してたのよ。だって、風邪の原因が大体魔力だったもの・・・」
「そうだったんだ・・・」
どうやら母はもう覚悟を決めていたらしい。
「きっと、あなたの世界を広げてくれるわよ。私はあなたがより幸せな道を歩んでくれたほうがいいわ。」
母の言葉にさらに後押しされ、私もやっと覚悟を決めた。
「お母さん・・・わかった。私、ユゲット様のところに行く。1週間後一緒にきてくれる?」
「えぇもちろん!」
頼もしい言葉に思わず笑顔になる。
「じゃあ一週間後、よろしくね。」
「わかったわ。さて、ご飯にしましょう。お腹空いちゃったでしょ。リナも起こしてこなきゃね。」
「うん!セシル、一緒にリナ起こしに行く?」
「うん!」
私はセシルと一緒に部屋へと向かっていく。
こうして私は、家族と別れることになったのだった・・・
第一部2終わり。
第一部の第2話終了です。それと同時に、第一部も終了します。これからもこのシリーズは、2〜3話ごとにステージを変えていきます!よろしくお願いします!
さて、家族と別れ、ユゲットの元へ向かうことになったオルタンス。貴族となった彼女には一体どんなことが待ち受けているのでしょうか・・・?次回もお楽しみに!